居酒屋店主が作りあげた独自の二郎系
『ハナイロモ麺』が立つのは、居酒屋や大衆食堂、スナックなどが軒を連ねる昭和レトロな雰囲気のベルロード沿いにある。黄色の看板がひときわ目を引き、店頭に並んでいる人の姿もある。それもそのはず、店内はカウンター7席しかなく、もうすぐ昼の閉店という時間にもかかわらず満席だった。
2021年にオープンしたこの店は、近くで居酒屋『でき心』を営む柳井友博さんが立ち上げた。居酒屋では元々、昼営業で醬油ラーメンを提供しており、その流れから、吉祥寺近辺にはあまりない二郎系の店をオープンさせるに至ったという。
「この店のラーメンは、いちからオリジナルで作りました。居酒屋では鶏スープのあっさりな醬油ラーメンでしたが、この辺りは飲み屋街ということもあり、あまり同じ系統がない二郎系を目指し、独自に作りあげたんです」と柳井さん。
店は、店長の下釜健輔(しもがまけんすけ)さんに任せているが、昼の忙しい時間帯は柳井さんも厨房に入る。
オリジナルで一から作ったこってり豚骨スープ
スープは、シンプルに豚骨、ゲンコツ、背ガラをじっくり煮込んだもので、継ぎ足しで作っている。大鍋でじっくり食材の旨味を抽出することで、臭みのない、豚骨の旨味だけが抽出されたスープができあがる。
このスープを作る際、豚バラ肉を煮込んで出汁として使い、その後カエシに漬け込んで自家製チャーシューも作っている。
小といって侮るなかれ!圧巻のボリューム
麺は普通の小で240g、ミニで150g、大盛りは400gと通常のラーメン店よりもかなり多い。券売機には、初めての方や女性客にはミニがおすすめとわざわざ書いてあるのも納得だ。
メニューはいたってシンプルで、ラーメン、汁なし、つけ麺の3種類。これに麺の量やトッピングで違いを出して楽しむようになっている。今回は小ラーメン・豚1枚900円+豚マシ1枚120円に、無料のトッピングを全部入れて楽しむことにした。
「一体、どこから崩して食べればいいんだろう……」。どーんと目の前に提供された丼としばらくにらめっこ。ニンニクが鼻をかすめ、食欲も刺激される。
まずはトッピングをあまり崩さず、スープから味わった。背脂は普通の量なのだそうだが、あまりしつこさは感じない。クリーミーながらも意外にもサラッとしている。
麺は丼の底からグッと持ち上げて味わう。スープにひたひたになった麺は、スープの旨味を含んで、モッチリとしておいしい。
続いてチャーシューを味わってみる。1㎝ぐらいはあるだろうか厚みのある2枚のチャーシューも、スープのエキスをしっかり吸い上げて、これだけでもお腹いっぱいになりそうだ。
少しづつ崩しながら食べるがなかなか減らない。スープはトッピングのトウガラシがピリッと刺激を与える味に変わっていき、食べ進めるうちに口の中に辛さが充満していく。麺や茹で野菜、チャーシューを交互に食べることで、最後まで飽きずにおいしく食べられた。
卓上には味変用の調味料も置いてあるので、さっぱり感を求める人にはお酢がおすすめだ。並ぶポン酢は、トッピングの生卵用なので、卵と絡めればあっさりと味わうことができる。
食べ終わるころには、口の中がトウガラシの辛さとニンニクの香りですっかり支配されていた。二郎系のラーメンは少し苦手なイメージがあったけれど、豚骨スープはおいしいし、茹で野菜が多いので思ったよりくどくない。お腹もしっかり満たされて、店を後にした。
取材・文・撮影=千葉香苗、構成=アド・グリーン