先代から引き継いだ老舗中華店。店名の由来とは?

店の入り口にある看板。大きな木板に店名が繰り抜かれており、重厚感がある。
店の入り口にある看板。大きな木板に店名が繰り抜かれており、重厚感がある。

この店を営むのは、先代から数年前に引き継いだばかりの若い夫婦である。奥さんの木下さんは産まれからずっと墨田区という生粋の墨田っ子ということもあり、もともと知っていた『桂林』というお店を継承でき、とても嬉しいと話す。

ちなみに『桂林』という店名は、創業者である先代のオーナーが名付けたもので、中国・桂林市の風景が美しいことを由来にしているのだそう。

木下さんが引き継いで以降、先代が築き上げた『桂林』の良さはそのままに、お店のInstagramを始めたり、新しいメニューを考案したりと、少しづつ新しい風も取り入れている。

強い火力で炒めるチャーハンは時間勝負。
強い火力で炒めるチャーハンは時間勝負。

SNSで話題のフォトジェニックな新メニューとは?

チャーハンの炒り卵とは別に、海老とネギが混ざった卵が乗っている。
チャーハンの炒り卵とは別に、海老とネギが混ざった卵が乗っている。

木下さんが考案した新メニューは、なんとInstagramでも人気を博しているという。それが、海老チャーハン1100円だ。

なると、チャーシュー、炒り卵など、たくさんの具が入ったチャーハンの上には、フチはカリッと焼かれ、中央は半熟状態の卵が乗っている。薄ピンクがとても鮮やかな大ぶりのエビも乗っており、その見た目はあまり中華らしくない。まるで新種のオムライスのようだ。

思わず写真に撮りたくなるような見た目だけでなく、味の方も絶品である。チャーハンは意外にも薄味に抑えられていて、そこまで塩っぱさは感じない。上に乗っている卵と一緒に食べると、卵の味わいを掻き消さない、絶妙なバランスになっている。

各テーブルには紅生姜が置かれており、常連客は紅生姜を添えて食べることが多いという。「中華は量が多いから、味変かな?」と木下さん。

何十年も通う常連客に愛されて

具沢山のチャーハンは、様々な食材の食感が楽しめる。
具沢山のチャーハンは、様々な食材の食感が楽しめる。

そんな『桂林』には、何十年も通う常連客が非常に多い。そのため、お店を継ぐことが決まった際には積極的に店に立ち、先代にたくさんの常連客を紹介してもらい、顔を覚えてもらえるよう努力したという。

熱心に通う常連客の中には、中学生の頃から店に通っているという年配客や、毎日必ずランチを食べに通う客など、もはや『桂林』が日常の一部と化しているような常連客が数多くいる。

また、先代の女将さんは、接客の手伝いのために、今も毎日ランチタイムに店に来てくれたり、旦那さんも体調が良い日には店にやってきて、厨房にあれこれ指示を出すという。

そんな様子を受け、「先代が今も店に来てくれることで、きっと常連さんは安心するんだと思います」と木下さんは話す。「私たち夫婦だけのものではなく、先代の店でもあり、お客さんたちの店でもあると思って、これからも大切に経営していきたい」

『地元に愛される』この言葉がこんなにピッタリな店は他にあるだろうか。そう思ってしまうほど地元の人たちに支えられている老舗店と、そこで生まれた新メニュー。このコントラストをぜひ楽しみに、一度足を運んでみてはいかがだろうか。

ランチからディナーまで通しで営業。客足は常に絶えない。
ランチからディナーまで通しで営業。客足は常に絶えない。
住所:東京都墨田区太平4-2-1/営業時間:11:00~翌3:00/定休日:火/アクセス:JR・地下鉄錦糸町駅から徒歩6分

取材・撮影・文=須田仁美