駅近の路地裏にある国産食材にこだわった体にやさしいラーメン
居酒屋やバーが並ぶ路地に『らぁめん 冠尾』がある。看板には「純白湯 鶏清湯 鶏辣湯」とあり、この3つを肝にメニューが展開されているようだ。おいしい酒をしこたま飲んだ後、アツアツのラーメンでシメるなんて最高だ。駅近だからよそで飲んできた人も帰宅前にフラフラと店に吸い込まれていそうだ。
さっそく店に入り、2022年4月に店舗責任者に着任した中藤輝之さんに話を聞いた。
「この店は2017年にオープンしました。国産食材にこだわった体にやさしいラーメンを提供しています。うちは目の前にある『居酒屋さとう』の系列店で、ほかにもこの近郊に洋食店などさまざま飲食店を運営しているんですよ」。
平日は働く人が、そして休日はファミリー客が多いという。ラーメン店には男性客が多いイメージがあるが、こうして見回してみると女性客が目立つ。
「野菜が多めでヘルシー感があるのかもしれませんね。ラーメンの見た目もオシャレで、さらに追加でオーダーできる野菜のトッピングメニューもありますから」と、スタッフの今野絹香さんが女性客の多い理由を教えてくれた。
ほほう、見た目もキレイなラーメンですか。そんな話を聞いていたら食欲が湧いてきた。さっそく一杯食べてみたい!
鶏と水、国産素材だけで取ったスープはまるでポタージュ。まったりと濃厚で1滴も残さずゴクリッ!
せっかくだから看板メニューをいただきたい。すると、「やっぱり純白湯が一番人気ですよ。ダントツです!」と中藤さんがオススメしてくれたので、特製鶏白湯1200円を注文した。
特別に厨房に入らせてもらうと、大きな寸胴鍋にたっぷりスープが入っている。「鶏と水、それから国産の素材だけで取ったスープなんです。作り方の詳細はナイショですが、飲み干しても胃もたれしにくいんですよ」。
ゆらゆらといい香りがする湯気を立てながら筆者の目の前にやってきた。今野さんが言っていた通り、カラフルなトッピングが施されていて見た目も鮮やかだ。
トッピングには茹でたキャベツ、ミニトマト、インゲン、紫タマネギ、マッシュルーム、そして鶏チャーシューが2種類。
白濁したスープはれんげの底の文字が隠れるほどで、高級店の水炊きのスープみたいに濃厚でこっくりとした味わい。この上質なスープが鶏と水、国産素材だけなの!? と疑ってしまうほど素晴らしい。お酒のチェイサーとして横に置いておきたいくらいだ。濃厚な鶏の旨味に対抗するように香ばしい全粒粉麺がいいバランスで、歯切れが良くて食べやすい。
鶏チャーシューはもも肉とむね肉の2種。比較的脂が多いもも肉は、炙ることで薫感もアップ。しっかり塩気が利いていて、濃厚だがやや単調になりがちなラーメンの味のアクセントになっている。淡白なむね肉は、コショウが利いていてパンチがあるぞ!
鶏の風味でいっぱいになった口の中に、丼の端についてくる柚子胡椒やトマトの酸味と甘み、スープの熱でちょっと甘みが増した紫タマネギなどがリフレッシュ効果を与えてくれる。卓上の昆布酢、自家製辣油を加えて味変しながら食べ進めるのも楽しい。今思えば、追ご飯をしておじや風に楽しんでもよかったかも。
ラーメンの材料のどれもが主役級の品質。国産素材へのこだわり
『らぁめん 冠尾』では全メニューに共通して鶏を使用しているが、それぞれのメニューの個性を際立たるのは鶏とタッグを組む食材たち。こうしたひとつひとつの食材も吟味して使用している。
実際にスープや麺もさることながら、付け合わせの野菜までおいしくて驚いた。「トッピングの野菜もこだわりなんですよ。ミニトマトは甘みが強くて人気の“アイコ“って品種なんですけど食べると鮮度がいいのがわかるでしょう? 鶏はもちろん、もやしやインゲンなどもいい素材を集めています。ホントにうちの野菜、うまいんですよ。それから柚子胡椒は生産者さんに受注生産してもらってるんです」と、中藤さん。
それもこれもオーナーがさまざまな飲食店を経営しているため、良質な食材を作る生産者や業者などともコネクションがあるからだ。ゆえに居酒屋だったらどれも一品料理として通用する主役級の食材たちが揃う。
テイストは違っても、鶏がベースの『らぁめん 冠尾』のラーメンたち。それぞれ個性的な味が表現できる、鶏という食材のポテンシャルの高さを実感できるだろう。今日は濃厚でアツアツの鶏スープを味わったから、次は辛和え麺に挑戦してみようかな。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢