力強さと上品さを兼ね備えた豚骨醤油とコシのある麺が好印象
『こいけのいえけい』はJR巣鴨駅から徒歩6分、大通りから少し離れた住宅街にある。店舗の目の前には公園があり、店内から外を眺めるとラーメン屋とは思えないほどののどかな雰囲気になっている。
「小池系列」といえば、黄金色に輝くスープをはじめとしたクリアな味わいのラーメンに定評があるが、まさかの家系ラーメン。どんな仕上がりになっているか楽しみだ。
豚骨醤油ラーメン850円は、薄切りのスライスチャーシューやホウレン草、海苔が盛られ、玉ネギもトッピングされている。
見た目は王道の家系ラーメン。実際にスープをすすってみると、まず、豚骨醤油の濃厚さを感じる。しかし、どこか上品で豚骨特有の臭みを感じない。一般的な家系ラーメンとはちょっと違うのだ!
代表の水原裕満さんに伺うと「強火力で煮込み、あえて途中でアクを取りません。でき上がったときに編み目の細かいザルで漉してアクや骨粉を除去しています。このことによって深いコクとクリーミーさが生まれ、上品さを感じられます」と教えてくれた。
小池系列でも麺の旨さに定評がある『キング製麺』の中太麺を使用。しっかりとしたコシとモチモチ感があり、豚骨醤油スープがまとわりついて、スープの旨みがより引き立っている。
チャーシューは「小池系列」ならではの真空低温調理。タレに漬け込んだ後に直火で炙っているため香ばしさがあり、肉本来の旨みを感じさせる。スープに絡むようにあえてくたくたにしたホウレン草や、味と食感のアクセントになる玉ネギもいい脇役になり、非常にバランスのよい一杯になっている。
トッピングで追加した味玉110円も旨い。トロッとした黄身と柔らかな白身にしっかりと味が染み込んでいる。
卓上にはコショウ、豆板醤、ニンニクが置かれているので、パンチを効かせた一杯をカスタマイズできる。
ガス釜炊きのご飯は豚骨醤油スープによく合う
家系ラーメンならば、ライスを一緒に味わいたい。『こいけのいえけい』のライスは、ガス釜で炊いているので、ふっくらとした仕上がり。ご飯の甘みや香り、粘り気が最大限に引き出していて、そのままでも旨い。
スープに浸した海苔で巻いて食べれば、スープの旨さがさらにプラスされてたまらない。卓上にはマヨネーズや白米が進むタレ、白米専用のニンニク醤油漬などが用意されている。さまざまな楽しみ方でうまく調節をしながら食べ進めていこう。
なじみ深かった家系ラーメンを進化させた
なぜ新ブランドが家系ラーメンだったのか、水原さんに聞いてみた。「私は横浜で生まれ育ったため、ラーメンといえば家系ラーメンでした。『らぁめん小池』では、2018年から不定期限定メニューで提供していましたが、今回、新ブランドで出店にあたりいろいろと試行錯誤した末、今まで提供していた家系ラーメンが評判がよかったので微調整して提供することにしたんです」と教えてくれた。
小池系列の繊細なラーメンと家系ラーメン……。最初は繋がらなかったが、コッテリとした中にある洗練された味わいのスープ、モッチリ麺、細やかな仕込みのトッピングなど、明らかに「小池系列」の一品だと感じられた。
新しい家系ラーメンは大満足の一杯だった。
取材・文・撮影=速志 淳 構成=アド・グリーン