カメクロのあゆみ 「第二精工舎 東京工場」から「サンストリート亀戸」へ
ものづくりの街として言わずと知れた亀戸・錦糸町エリアは、かつて名だたる時計メーカー「SEIKO」の工場が存在していた、「時計の街」でもある。
四つ目通りと蔵前橋通りの交差点付近には明治26年(1893)から「精工舎」が、そして昭和14年(1939)からは亀戸に精工舎の腕時計部門である「第二精工舎」があったのだ。
本社移転にともなって90年代に二つの大工場は解体され、前者は錦糸町ショッピングモール『オリナス』に、亀戸の土地はそのまま精工舎が経営を引き継ぎ、商業施設「サンストリート亀戸」として20年近くにわたり地元に親しまれた。
1939~1993 第二精工舎 東京工場
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1997〜2016 サンストリート亀戸
そして『カメイドクロック』へ 変わらず継承し続ける、地域と一緒に歩む気持ち
「サンストリートで一番の名物は、地元ダンスクラブの発表会からアイドルのライブまで、年間500~600本以上も行われていたイベントです。地域参加型の商業施設として、全国から視察が来るほど業界では有名なロールモデルでした。その昔は、精工舎の社員さんも一緒になってチラシ配りをしていたそうですよ」
下積み時代、サンストリートのステージで活動を重ねた現役アーティストも少なくないそう。お話を聞いたのは、カメイドクロックの運営を手がける野村不動産コマースの丸田祐輝さん。要するにこの20年間、この場所では“毎日何かが起こっていた”のだ。ただテナントが軒を連ねる、消費に特化した商業施設ではなく「コトづくり」も十分に意識してきたDNAは、『カメイドクロック』にも息づいている。
2022〜 カメイドクロック (KAMEIDO CLOCK)
館内には地域住民から企業まで自由に使えるコミュニティスペースや地域情報発信の拠点など、地元との連携を第一に考えたゆとりや遊び心を随所に配した。近隣商店街とも良好な関係を築きあげてきた。オープンから3カ月余りが経った現在は、まずは年間300本のイベントの実現を目指しているそう。
「『カメイドクロック』という施設の名前を発表した際は、『街の名前を入れてくれてうれしい』というお声を多くいただきましたね」と丸田さんは顔をほころばせる。
『カメイドクロック』を、「よそもの」ではなく真に地域になじんだ存在にしていきたいと丸田さん。時を刻んでいく中で、まだピカピカの外観がこの街に溶け込む日も、そう遠くないのかもしれない。
「カメ」がたくさん! 館内を探検してみると…
1. カメクロコート
1時間ごとにサイネージで時報が流れる広場は、イベント時はステージに早変わり。
2. カメテレ 撮影・編集スタジオ
カメクロ公式YouTubeチャンネルの拠点。制作現場が生で見られる。
3. カメスポ eスポーツスタジオ
フードコートの奥には公式チーム「カメイドタートルズ」が所属するeスポーツスタジオも。
4. アソビバ!
京葉道路を眼下にのんびり遊べる屋外広場。
5. カメクロステージ
芝生広場に抜ける風も気持ちいい!
6. カメクロマルシェ
生鮮三品が揃う、地域最大級の食市場。
7. カメクロ横丁
昼飲みもできるのがうれしい、モダンなネオ横丁。
『カメイドクロック (KAMEIDO CLOCK)』詳細
取材・文=吉岡百合子(編集部) 撮影=小野広幸
『散歩の達人』2022年8月号より