棚にずらりと並ぶのは白いコーヒー豆
北千住駅から日光街道へ向かう途中にある千住本町商店街。昔ながらのお店と新しいお店が共存して人通りも多く、活気あふれる通りだ。
商店街をてくてく歩いていると、だんだん感じてくるコーヒーの香り。「コーヒー豆屋」の看板が見えてくるころには、辺りいっぱいにコーヒーの香りが漂っている。木のぬくもりを感じるかわいらしい店構えの『マメココロ』に到着。
お店に入るとまず、ぎっしりと並ぶコーヒー豆に圧倒される。そして、イメージしているコーヒー豆とは違って、豆が白い! 白いコーヒー豆がこんなに並んでいる光景は今まで見たことがない。50種類以上ものなかから好きなコーヒー豆を選ぶと、その場で焙煎してくれるそう。
店の奥にはカフェスペースがあって、コーヒーをゆっくり楽しむことができる。焙煎したてのオリジナルブレンドのドリップコーヒーが260円と、かなりリーズナブルなお値段だ。近所にあったら間違いなく毎日来てしまうだろうな。では、奥でコーヒーをいただきながら、コーヒーについて色々教えてもらおう。
まず、『マメココロ』のオリジナルブレンド、スタンダードコーヒーをいただく。店内で焙煎しているのですでに周りはコーヒーの匂いでいっぱいなのだが、カップで運ばれてくると顔の前にふわっといい香りが。
ひと口飲むと、すごくまろやかでやさしい苦み。ブラックのまま味わいたい気もするけど、ミルクを入れても合いそう。実際、お店で出しているカフェオレのベースもこのブレンドなんだそう。
オリジナルブレンドのメインはインドネシアの高級銘柄・ガヨマウンテン。あまり個性を出しすぎず誰もが飲みやすいコーヒーを目指して作られた、オープン当初から変わらない味だ。
コーヒーの酸味はフルーツの酸味
コーヒーについて教えてくれたのは店長の松崎奈緒さん。松崎さんはこれまでイベント関係やカメラマンのアシスタント、接客など、さまざまな職種を経験してきたそう。
「やりたいことをやりたいときに、やりたいようにやってただけ」と笑う松崎さん。某大手コーヒーチェーンでアルバイトを始めたことがきっかけで、コーヒーに興味を持つようになったという。
「産地によって味が違うとか、淹れ方によって変わるとかをアルバイト時代の研修で学んで、面白いなって。コーヒーの基礎的なことはそこで覚えました」。その後、さまざまな職を経て、2019年から『マメココロ』で働き始め、店長になって1年になる。
新しい豆が入ってきたときは必ず焙煎をして、スタッフみんなでテイスティングするという。何十種類ではきかないほどコーヒーを飲んでいる松崎さんに味の好みを聞くと「もともと酸味が嫌いだったんですけど、酸味がおいしく感じられる豆っていうのがあるのをここにきて学んだ」という。
“コーヒーの酸味”が苦手という人は多いが、コーヒーを飲んだ時に感じる嫌な酸味は焙煎後に時間がたって酸化することによって出てくるんだそう。もともとコーヒーは、コーヒーチェリーという実の種を収穫したものなので、コーヒーが本来持っている酸味は「フルーツの酸味」と松崎さん。
「最近は品質の良い豆が流通するようになり、新鮮な豆をその場で焙煎してすぐに提供できるところが増えたので、浅煎りで、フルーツを食べることで感じるようなジューシーでフレッシュな酸味がおいしく感じるコーヒーを飲むことができるようになったんです」。
ふむ、このお話を聞いたら“コーヒーの酸味”に対するこちらの姿勢が変わった。これは浅煎りコーヒーを試さずにはいられない。店内でいただけるメニューにはブレンド以外に3~4種類のおすすめのストレートコーヒーがある。その中から浅煎りのドミニカ シングルオリジンをいただこう。
これまた香りがふわっと。さっきよりも香りが爽やかなような……。口に入れると、ブレンドとはまったく違う個性的な味。これは刺激的! たしかに嫌な酸味ではなくフルーティ! コーヒーってフルーツだったんだ……。コーヒーの酸味に対するイメージ、変わりました。
「香りを楽しんだりとか、お茶に近い楽しみ方ができるんですよ」と松崎さん。新しい楽しみ、教えてくれてありがとうございます!
ブレンドの割合で好きな味を見つける
さっきいただいたスタンダードコーヒー以外にも、お店には『マメココロ』自家製ブレンドがたくさん並ぶ。
好きな豆、苦手な味などいろいろあるけどそれをブレンドするとまた違った味わいが楽しめる。ミックスジュースにたとえるとわかりやすいと、松崎さんが教えてくれた。
「ニンジンが多めだと飲みにくいけど、リンゴが多めのミックスジュースは飲みやすいとか。そういう感覚でブレンドコーヒーも選んでもらえれば」。なるほど。
コーヒーの知識がまったくなくても、ここに来ればなんでも教えてもらえる。「スーパーに買い物に行くのと同じような感覚でフラッと入ってきてもらいたい」と松崎さんは話す。
「自家焙煎してるからって敷居が高いなんてことはない。かしこまらずに気軽に来てなんでも相談してください。そのためにスタッフもカジュアルな服装でお待ちしています(笑)」
取材・文・撮影=丸山美紀(アート・サプライ)