どうしても旧ザクに見えてしまうボウズと呼ばれる監的所
はて……。看板はあるのに実物がない。看板脇には怪しい獣道が。明らかに人間によって踏み固められた道は、経験から遺構へ通ずる道。導かれるままに松林へ分け入っていきます。
「なんと……」思わず嘆息してしまいました。松林の先、左手の奥の方にチラッと見えるのは、腐海に埋れた巨神兵の如く、旧ザク(ZAKU1)の頭部が埋まった姿です。もとい、監的所の上部分が埋まった姿です。
監的所は上部が丸く、監視の小窓が3カ所連続していますが、角度によっては2カ所に見えます。丸い形状といい小窓の配列といい、小道から見えた姿は『機動戦士ガンダム』に登場する旧ザクことMS-05 ZAKU 1に酷似していますね。あの小窓にモノアイが光ればいかにもそれらしい。私はそこまでガンダムにのめりこんでいないけれども、直感でそうだと感じました。
これもまた戦跡遺構と知らなければ、あの一年戦争後の何かを表現しているのかと思うだろうなぁ。あまりにも旧ザクに似過ぎていますが、地元の人々からは「ボウズ」と呼ばれており、確かに言われてみれば坊主頭の物体ですよね。これが林の中にある姿は、なんとも忘れられないシュールな光景です。
監的所は小窓側が地中に埋まっていますが、中は大人が立つために背が高く、裏側に回ると両脇が階段状となった遮蔽物があり、一人分の幅の入り口が空いています。中に入ることも可能で、円形の空間は直径が2メートルくらいかと思いますが、大人4人が入ると窮屈かもしれません。
しかし上部が丸い理由はイマイチ分かりませんでした。監的所は敵の上陸を見据えてというより、射弾観測や危険防止の監視をしていたので、弾が跳ね返りそうな半円形にしたのかと想像していました。
いま自分が持つ知識と資料では、この監的所の構造について判明しなかったのですが、この記事が世に出たらそのうち分かるのではないかなと、他力本願ながら淡い期待をしています(笑)。
ということで、遺構散策はまだ続きます。一カ所をじっくり観察すると時間がかかりますね(汗)。もう少しお付き合いください。次号は射撃設備ともう一カ所の監的所を紹介します。
取材・撮影・文=吉永陽一