【第37回江戸流しびな】雛祭りの原点といわれる伝統行事

2月27日 <台東区・隅田公園 吾妻橋親水テラス>

流しびなとは、子どもの災厄を紙や草木で作った人形(ひとがた)に託し、川や海に流して祓い清め、無病息災を願う日本古来の行事。雛祭りの原点ともいわれ、起源は約1000年前の平安時代中期までさかのぼるといわれる。そんな古き良き伝統行事を体感できる「江戸流しびな」が3年ぶりに開催。

当日は、事前公募の参加者が紙製の流しびなに子どもの名前と願い事を書き、テラス前の特製スロープ台から隅田川の川面に向けて流す。流しびなは近くの今戸神社でお祓いを受けたもので、ご利益も十分だ。当日参加もできる(流しびなは有料、800円)。「都内で流しびなを体験できるのは珍しい。家族に見守られる中、子どもたちが夢や希望を流しびなに書いて、会場はとても温かい雰囲気に包まれるんです」と江戸流し雛振興会の浅野さんは話す。後世に残したい日本情緒あふれる美しい風習だ。

◎地下鉄・私鉄浅草駅徒歩3分。江戸流しびな振興会事務局☎03-3861-3950。

【初午大祭(はつうまたいさい)】食べる御守りで健康祈願

3月6日 <東松山市・箭弓(やきゅう)稲荷神社>

火伏神事の様子。
火伏神事の様子。

稲荷神社総本宮である京都の伏見稲荷大社の稲荷大神が、かつて2月初午の日に稲荷山の三ヶ峰の杉の木に鎮座されたという縁起から、全国の稲荷神社で「初午祭」として五穀豊穣や商売繁昌などを願う祭典が行われる。奈良時代の創建と伝わる、ここ箭弓稲荷神社では旧暦2月(現在の3月)に初午大祭が執り行われ、境内で植木市や里神楽などの奉納行事が催される。

当日は初午御幣束の「験(しるし)の杉」や食べる御守り「揚護符(あげごふ)」が授与される(共に500円)。揚護符は稲荷神の使いとされる狐と神社名の焼き印が押された特製の油揚げのこと。おいしくいただいて健康を祈願しよう。

また、本祭前日の3月5日には「火伏神事」も(13時~)。午の日が月に3回あると火事が起きやすいという古くからの言い伝えから、火の災禍が起こらないように願うもの。白狐に扮した4名が「エイ、エイ」という掛け声を上げ、炉の火を鎮める所作を行う。一般の参拝者も火伏具(青菜)を買い求めれば神事に参加できるので、ぜひ。

◎東武東上線東松山駅徒歩3分。箭弓稲荷神社☎0493-22-2104。

験の杉。
験の杉。
揚護符(あげごふ)。
揚護符(あげごふ)。

【長瀞火祭り】炎に飛び込む姿は迫力満点!

3月6日 <埼玉県長瀞町・宝登山麓火祭り広場>

秩父路に春を告げる祭りのひとつが「長瀞火祭り」。もともと秩父地方で信仰されていた火祭祈願を再興したもので、護摩の浄火によって煩悩や汚れを焼き払い、不動明王に慈悲と加護をいただくことができるとされている。本来であれば、秩父屋台ばやしや獅子舞、長瀞駅前から火祭り会場への練行などの行事もあるのだが、残念ながら今年はコロナウイルスの影響で中止。メインの「柴燈大護摩・火渡荒行(さいとうおおごま・ひわたりあらぎょう)」のみが行われる(13:00~、一般参拝者の火渡りも中止)。

宝登山ロープウェイ山麓駅下の駐車場に設けられた火祭り会場では、薪やヒノキの枝を山のように積み上げた護摩壇に点火され、炎が激しく立ち上り熱気に包まれる。火の勢いが少し落ち着くと、修験者たちが次から次へと炎の中に飛び込んでいく。燃え盛る炎の中を裸足で駆け抜ける様子は圧巻の一言だ。ぜひ現地で見て、手に汗握る迫力を味わおう。

◎秩父鉄道長瀞駅徒歩20分。長瀞火祭り奉賛会☎0494-66-3424。

取材・文=香取麻衣子 ※写真は各主催者より提供。
『散歩の達人』2022年3月号より