クラシカルなフランスの雰囲気を感じられる
“フランスの大衆食文化を伝える”がコンセプトの『オーバカナル』。都内ではこのお店以外に5店舗ほどあり、『オーバカナル』と言えば、外にテーブルやイスを置いたテラス席がある外観をイメージする方も多いのでは?
この『オーバカナル 東山』にはテラス席はないが、店舗外観のスタイリッシュなデザインや店内のライト、優雅なフォルムの丸テーブルやイス、壁に貼られたフランス語のポスターなどが、どことなくフランスのカフェのようなゆったり落ち着きを感じさせる空間を作り上げている。
実は『オーバカナル 東山』は、入居するビルの建て替えに伴い一度クローズし、2019年にリニューアルオープンした。
「路面側の壁面をガラス張りにして、外からの見通しも良くして以前より入りやすい雰囲気になりました。店内のスペースも広くなって席数も増えたので、イートインのお客さまも増加したんですよ」。
パンがメインだが、食事メニューも充実
『オーバカナル』は店舗それぞれに個性があり、ほかの店舗はカフェやレストランを併設する店が多いが、この東山店はパンが主体。近隣に住む方や働く方に重宝がられ地元のブランジュリーとして愛されている。
店内には女性客が多い。女性に人気のボリュームたっぷりのサラダにパン、ドリンクがセットになったサラダセットなど、ランチにもぴったりのメニューが充実していて、ランチタイムは近隣で働く女性客が多く訪れる。
筆者も店内で撮影していたら隣の女性客に話しかけられたりと、リラックスしたフレンドリーな距離感も、まさに海外のカフェにいるかのよう。
「常連さんも多いので、よく会話はしますね。『あのパンどこにあるの?』や『こんなパンを作ってほしいわ』と言ったことなど…。やっぱり1番うれしいのは、『この間買ったあのパンおいしかったわよ』という言葉ですね」。
厳選素材を惜しみなく使い、リッチな味わいのパンに
バゲットやクロワッサン、サンドイッチなどの食事系、デニッシュなどのスイーツ系まで、店内には所狭しとパンが並ぶ。ブランジュリーのシェフは、厳選素材をたっぷり使って、素材が引き立つような味わいに仕上げているという。
「ブランジュリーのシェフおすすめの商品は、枕カンパーニュです。ホールだと直径30㎝以上もの大きさがあるのでカットして販売しているほか、クロックムッシュなどカフェメニューにも取り入れています。2種類の自家製酵母を使って低温で熟成させることにより、酸味を抑えて日本人でも食べやすい味わいに仕上げているのが特徴です」。
『オーバカナル』のパンと言えば、看板メニューのフィセルオブール345円。バゲット生地にたっぷりバターを染み込ませて焼き上げた、ジューシーな味わいが特徴。
「多い日は1日80本近く焼き上げることもありますね。それでも売り切れてしまうこともあるんです」。
サンドイッチもお店に入ってすぐの平台に置かれ、よく目につくからか、近隣の方がテイクアウトしたりするなどすぐに売り切れてしまうことも。「バゲット生地にハムとチーズを挟んだカスクルート・ジャンボンフロマージュ450円とサラミが入ったヴィエノワ サンド410円は定番人気で、これは1日に50本程度販売しています」。
数種あるチャバタサンドのうち、季節によって具材が変わる限定商品も。これは今の時期限定の秋のチャバタサンド450円。ふんわりしたチャバタに、スライスしたベーコンとサツマイモ、マッシュルーム、エリンギがサンドされ、バルサミコのマヨソースが後引く逸品だ。
レーズンとくるみをたっぷり生地に練りこんだ、ハード系のセーグル ノア カランツ280円。シェフオリジナルの甘酒が使われているという生地は、噛みしめると優しい甘みを感じられる。くるみのザクザクとした食感や噛み応えのある生地の組み合わせも楽しい。
ヨーロッパにはなかなか行けないが、ちょっとフランスの雰囲気を味わいたくなったら、『オーバカナル 東山』がおすすめだ。
構成=フリート 取材・文・撮影=西尾悠希