スタート地点の京島駅からどこへ行くかは自分次第
街なか芸術祭や街歩きと聞くと、おすすめルート・コースに頼りたくなるのだが、この芸術祭には決められたコースがない。受付のある元米屋、通称「京島駅」をスタートしたら、テーマプロジェクトを中心に作品を見て巡るもよし、2〜3日に分けてひとつひとつの作品をじっくり鑑賞するのもよし、地図にも頼らずふらふらと時間を過ごすのもよし。街全体が体験エリアだからこその楽しみ方ができる。
東京というより“江戸”な街、向島
2021年のテーマは「隣人と粋でいなせな日」。このテーマは長屋文化が多く残るこの向島エリアだからこそ生まれた、江戸っ子気質な部分をインスピレーションに、芸術監督であるヒロセガイさんが設定したそう。
長屋文化をただ保存・展示するだけではない、観光地のようなフォトスポットがあるわけでもない、日常の街の匂い、景色、温度、人とのふれあいなど、自分の住む街とは異なる“粋でいなせな街”を体感できる。
「映画作家としてこの街と関わったことをきっかけに、この街に残る古い建物や長屋を改修し活用する活動を始めました。昨今の向島では開発が進み、昔からの建物が壊され近代的な建物へ変わるまさに転換期。そんな街を味わいながら、アートに触れ、この街の関係住人になってもらえれば嬉しいです」(実行委員長・後藤大輝さん)
「昨年は参加アーティストのひとりでした。今年は運営側として、僕の家族といってもいいアーティスト仲間と共に、粋でいなせなこの向島でお祭りを楽しみたい! そんな思いで制作してきました。このEXPOが10年続くような、今後もこの街、アーティストたちと発信していきたいですね」(芸術監督・ヒロセガイさん)
訪れるほどに好きになる
『すみだ向島EXPO 2021』の期間中は、参加アーティストたちによる作品だけでなく、「隣人プロジェクト」「隣人プラットホーム」「軒下プロジェクト」などたくさんのイベントが同時開催されている。しかし、何か特別な展示方法がされているわけではない。いつものように商店街は賑やかで、銭湯にも常連客がやってくるし、すれ違う人々はいつもと変わらぬ日常生活を送っているのだ。
▼「テーマプロジェクト」参加アーティスト
さわひらき/SIDE CORE/タノタイガ/居間 theater/市川平/飯川雄大/北野謙/クサムラマッドラット/田原唯之/増山士郎/村尾かずこ
私も4年間ほどスカイツリーのお膝元・押上に住んでいたことがあるが、改めて向島エリアを歩いてみて、まだまだ知らないことがたくさんあった。まさに灯台下暗し!
それに『すみだ向島EXPO 2021』には、もう一度行きたくなる仕掛けが満載。街の魅力が溢れすぎているので、2〜3時間歩いただけでは時間が足りないのだ。一度で全てを巡ろうとするよりも、このEXPOをきっかけに好きな場所を見つける、「また来るぞ」という強い思いとともに参加するのがおすすめ。
イベントチケットは、peatixにて販売中。チケットを1枚購入することで最大3日、作品を鑑賞することが可能(混雑時には入場制限あり)なので、一度だけでは味わえない向島の魅力を五感で感じながら、二度、三度と楽しんでもらいたい。
イベント情報
「街なか芸術祭 すみだ向島EXPO2021」
開催期間:2021年10月1日〜10月31日
営業時間:10:00〜18:00(最終受付17:30)
参加費:一般:3,000円 / 小中学生:500円 / 学生応援価格:1,000円
定休日:なし
住所:東京都墨田区京島3-50-12(京島駅)
アクセス:東武鉄道「曳舟」駅から徒歩12分
ウェブサイト:https://sumidaexpo.com/
予約サイト:https://sumidaexpo.peatix.com/view
取材・文・撮影=つるたちかこ