神楽小路をぶらつけば、つい吸い寄せられる『あんみつ 紀の善』の看板。

東京メトロ飯田橋駅からすぐ、神楽小路の角に立つ『紀の善』は、あんみつや抹茶ババロアで有名な老舗甘味処。やなぎの新緑と涼し気な夏暖簾(のれん)に、早速期待感が高まる。

元は料理屋だったという『紀の善』の歴史は古く、創業は1860年までさかのぼるが、現在のように甘味を提供するようになったのは昭和23年のこと。戦後の焼け野原からスタートし、現在のおかみさんまで、女三代で暖簾を守ってきた。

入り口横には、昔ながらの食品サンプルがずらり。定番の甘味から、夏季限定のかき氷、お雑煮などの食事メニューもあって、一度覗いたら素通りできない引力がある。

店内は1階と2階があり、吹き抜けからの木漏れ日が爽やか。密集した感じが無く、入りやすい雰囲気だ。席間を広く取りアクリル板を設置するなど、感染対策にも力を入れている。

2階には和室の客席もあり、より老舗の雰囲気を味わえる。実はこの席、乃木坂46のPVにも登場したことがあるんだとか。

「以前は常連のお客様が多かったんですが、最近は、初めて甘味を食べるという若い方もいらっしゃるようになりました。そういうお客様が、あんみつやぜんざいを気に入ってまた来てくださるのは、とってもうれしいんですよ」とおかみさんがほほ笑む。

ふっくら大粒のあんずが6つ! こだわりの杏あんみつ

『紀の善』と言えば、やっぱりあんみつは欠かせない。フルーツと求肥の入ったノーマルなあんみつや、アイスが乗ったクリームあんみつも人気だが、おかみさんにおすすめを聞くと、こちらの杏あんみつ961円が常連さんに一番人気だと教えてくれた。

見るからにふっくらと大ぶりのあんずは、カリフォルニア産の高グレード品。自家製のあんこはメニューによってこしあんとつぶあんを使い分けていて、あんみつにはこしあんがたっぷり乗っている。もちろん、希望すればつぶあんへの変更や、追加のトッピングも可能だ。

一口食べれば、もっちりジューシーなあんずに感動すること間違いなし! 作りたてのこしあんはシルクのように滑らかで、小豆の美味しさを活かしたすっきりとした甘さ。国産の天草から手づくりした寒天も、風味豊かでトッピングに負けない美味しさだ。

プリッとした白玉が美味しい、夏の定番・冷やしじるこ

ガラスの器に氷が涼し気な冷やしじるこ902円。夏の名物として、こちらも常連に人気の一品だ。外からは見えないが、中には大粒の白玉が3粒も入っている。

『紀の善』の白玉は夏季限定。毎朝お店で手作りしているので、出来たての美味しさが味わえる。大粒の白玉は、白玉粉100%で作っているからこそのプリッとした歯触りの良さが魅力だ。さらりと滑らかなしるこは、冷やして食べるのにちょうどいいキリっとした甘さで、白玉との相性抜群! 小ぶりながら、満足感のある一皿となっている。

マスカットと白玉の奇跡の出会い! センスが光る、冷やし白玉

こちらも爽やかな夏限定メニュー、冷やし白玉961円。大粒の白玉が8つに、マスカットのシロップ漬けが入った贅沢な一皿だ。

マスカットのリキュールがほんのり効いたシロップは、香りも甘さもとっても上品。シンプルがゆえに、むっちりと密度の高い白玉の美味しさが引き立っている。白玉にこんなに美味しい食べ方があったなんて! ジューシーなマスカットの実も一緒に頂けば、すっきりと後味も爽やか。あんこや和菓子が苦手な人にもおすすめのデザートだ。

マスカット風味の白蜜が爽やかな『紀の善』の冷やし白玉
夏限定の冷やし白玉は、大粒の白玉だんごのコシのある食感と、マスカット風味のすっきりとした白蜜の組み合わせが絶品の、人気メニューだ。あの絶妙な食感の白玉はどうやったら作れるのか…

ドラマで人気に火が付いた、『紀の善』名物・抹茶ババロア。

『紀の善』に来たら、忘れちゃいけないのが抹茶ババロア961円。1990年頃、店舗の建て替えで1年休業した際に、『紀の善』の看板メニューとしておかみさん自らが考案した自信作だ。2001年に豊川悦司と中山美穂主演のTVドラマに登場したことから人気に火が付き、今ではお店の名物になっている。

甘さ控えめに仕上げた抹茶ババロアは、口に入れた瞬間に濃厚な抹茶の香りと旨味が広がる。隣に添えられたつぶあんは、出来たてのみずみずしさと、大粒の小豆の旨味がしっかりと感じられて、こちらも主役級の美味しさだ。ババロア、つぶあん、生クリームを一気に頬張れば、至福の瞬間が待っている。

手土産でおなじみの『紀の善』は、テイクアウトメニューも豊富。

『紀の善』では、店内で食べるのと同じくらい、テイクアウトを利用する人も多い。

テイクアウトできるメニューも豊富で、毎朝店内で丁寧に詰められている。差し入れやお土産に迷ったら、『紀の善』のあんみつを持っていけば喜ばれること請け合いだ。

今回は食べられなかったが、冬限定の粟ぜんざいや、春だけの苺あんみつなど、『紀の善』の名物はまだまだたくさんある。さて、次はどの季節に食べにいこうか。

取材・執筆=岡村朱万里 撮影=岡村武夫