麻布十番・六本木の基礎知識
麻布十番はすり鉢状の低地にある。江戸時代、坂上の台地には武家が屋敷を構え、坂下の麻布十番は300年以上前から善福寺の門前町として栄えていた。麻布といえば高級住宅地の印象が強いが、麻布十番商店街には江戸時代から続く老舗も多く、下町の風情をたたえている。
麻布界隈には大使館が多いが、これは広い敷地を有していた武家屋敷の跡地を転用したためという。こうして、新旧が混在する独特の街が形成されたのだ。六本木は、2003年の六本木ヒルズの誕生、さらに『国立新美術館』や東京ミッドタウンなどの誕生によって街の様相が一変した。それまでは夜の街の印象が強かったが、今では日本屈指の未来派タウンだ。
1 麻布十番商店街
老舗が点在するおしゃれ商店街
江戸時代には武家屋敷が点在していたところで、その頃から続く店もある。戦前のにぎわいは浅草にも負けず、新宿、神楽坂に次ぐ繁華街だった。現在、最も多いのは飲食店。次いでファッション、生活雑貨と続き、商店比率では食品関連が最も少ない。各国大使館があるため外国人の姿が多い。
浪花家総本店
香ばしくパリパリの皮が美味
明治42年(1909)創業。初代が、今川焼きをヒントに思いついたというたい焼き1匹180円の元祖。極薄の皮の頭からしっぽの中まで、8時間かけて煮たつぶ餡がびっしり。
2 きみちゃん像
赤い靴の女の子の悲話を伝える
童謡『赤い靴』のモデルとなった岩崎きみは、孤児院にいたときに3歳でアメリカ人宣教師の養女となったが、結核にかかり出国できず、麻布の孤児院で9歳の生涯を閉じた。
3 善福寺
ハリスが駐在し、福沢諭吉も通った
天長元年(824)、弘法大師の開山といわれ、親鸞が植えたと伝わる樹齢750年余の逆さイチョウは国の天然記念物。幕末にはアメリカ公使館となり、初代駐日大使タウンゼント・ハリスが駐在した。福沢諭吉の墓がある。
総本家更科堀井 麻布十番本店
目にもさわやかな純白のそば
寛政元年(1789)創業。名物のさらしなそばは、ソバの実の芯の部分だけを用いて打つ白いそば。もり、太打ちそば、季節の変わりそばなどもある。もり870円、さらしな970円。
4 毛利庭園
ヒルズとの新旧の対比が面白い
江戸時代に毛利家上屋敷の庭園として誕生。六本木ヒルズ再開発によって整備され、回遊式の日本庭園の歴史を感じられる庭園となった。シンボルツリーは高さ20mの大イチョウ。
5 六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー
眼下には東京の街の絶景
海抜250mにある展望回廊。高さ11mのガラス張りの吹き抜け空間から眺める東京の街が圧巻。海抜270mの屋上には360度オープンエアのスカイデッキがあり、風を感じながら眺望を楽しめる。夜には星空観望もできる。
6 国立新美術館
曲線を描くガラス張りの建物
コレクションを持たず、約1万4000㎡という国内最大級の展示スペースを生かした多彩な展覧会を開催する。レストランやカフェ、ミュージアムショップのみの利用もできる。
7 フジフイルム スクエア
写真の歴史を知る博物館
170年を超える写真やフィルム、カメラの歴史を紹介する写真博物館と、写真展を開催する富士フイルムフォトサロンがある。近年注目されているヘルスケア商品のショップを併設。
【街探検】2つの再開発で街が一変!
六本木ヒルズと東京ミッドタウン。2つのビルが街を変えた
六本木ヒルズが立つ一帯は、かつて木造住宅が密集し、約500世帯が暮らしていた。この地の再開発が計画されたのは1986年のこと。11haを超す広大な面積の再開発は過去最大の都市再生事業といわれ、開業まで17年の歳月を要した。
2003年4月にグランドオープンした六本木ヒルズは、オフィス・住宅・商業施設・美術館・ホテル・映画館・放送センターなどがある。
2007年3月に誕生した東京ミッドタウンは、旧防衛庁本庁檜町庁舎跡の再開発によって誕生した複合施設。オフィス、ホテル、住宅・商業施設・美術館と、ラインナップは六本木ヒルズと似ている。冬のイルミネーションが人気を集めるなど、六本木ヒルズに次ぐ集客がある。2つの複合施設が、六本木を楽しくさせていることは間違いない。
取材・⽂・撮影=アド・グリーン
『街がわかる 東京散歩地図』より