光と影の鮮やかな対比で遊里の夜を描いた傑作

葛飾応為 「吉原格子先之図」(通期) 『太田記念美術館』蔵
葛飾応為 「吉原格子先之図」(通期) 『太田記念美術館』蔵

葛飾北斎の娘で絵師でもあった葛飾応為の「吉原格子先之図」は、応為の代表作にして、浮世絵における夜景の傑作としても高く評価されている。

『太田記念美術館』上席学芸員の赤木美智さんは、「近年、映画やアニメでも取り上げられ注目を集める葛飾応為の、代表作のひとつで夜景の名品『吉原格子先之図』を3年ぶりに展示いたします。あわせて鈴木春信や歌川広重、小林清親などの夜景の優品も紹介。江戸から明治、大正にいたる浮世絵の夜景表現の歴史をたどりながら『吉原格子先之図』の魅力を見直す展覧会です」と見どころを語る。

応為が描いたとする肉筆画は、世界に10数点しか確認されていない。なかでも「吉原格子先之図」は光と影、明と暗の対比を強調した、応為の創意工夫に満ちた代表作品である。唯一無二の魅力に触れる貴重な機会となるはずだ。

鳥居清長 「大川端楼上の月見」(後期) 『太田記念美術館』蔵
鳥居清長 「大川端楼上の月見」(後期) 『太田記念美術館』蔵

多彩な絵師たちによる味わい深い夜景が集結

歌川国貞「月の陰忍逢ふ夜  月みる美人」(後期) 『太田記念美術館』蔵
歌川国貞「月の陰忍逢ふ夜 月みる美人」(後期) 『太田記念美術館』蔵

絵師たちにとって、光と闇が織りなす夜の情景は魅惑的な題材だった。特にベロ藍(プルシアンブルー)による濃紺の夜空を得意とした歌川広重や、巧みな陰影表現によって文明開化期の都市の夜を詩情豊かに描いた小林清親は、夜景表現を代表する絵師として知られている。ほかにも鳥居清長や溪斎英泉、歌川国芳や月岡芳年、井上安治、小倉柳村など、多彩な絵師たちによる夜景作品が勢ぞろいする。

また、海を超えて愛された知られざる夜景版画にも注目。明治後期、国内では浮世絵版画が衰退期へ向かう一方、海外市場向けには数多くの版画が制作された。なかには広重や清親の作品をもとにした複製や、彼らをオマージュするような夜景版画も多く、江戸以来の夜景表現が海外で愛好されたことを物語っている。ここではこれまで研究や展覧会でもほとんど取り上げられてこなかった輸出向け夜景版画についても紹介。版元、長谷川武次郎や渡邊庄三郎にも注目しつつ、見過ごされてきた海外向け夜景版画を取り上げる。現在にいたる海外での浮世絵人気がどのように醸成されていったのか、その一端を見て取ることができる。

歌川広重「月に雁」(前期) 『太田記念美術館』蔵
歌川広重「月に雁」(前期) 『太田記念美術館』蔵

開催概要

「葛飾応為『吉原格子先之図』夜景の系譜」

開催期間:2026年10月6日(火)~12月6日(日)
前期:10月6日(火)~11月3日(火・祝)
後期:11月7日(土)~12月6日(日)※「吉原格子先之図」は通期展示、前後期で全点展示替え
開催時間:10:30~17:30(入館は~17:00)
休館日:10月13日(火)・19日(月)・26日(月)・11月2日(月)・4日(水)~6日(金)・9日(月)・16日(月)・24日(火)・30日(月)
会場:太田記念美術館(東京都渋谷区神宮前1-10-10)
アクセス:JR山手線原宿駅から徒歩5分、地下鉄千代田線・副都心線明治神宮前駅から徒歩3分
入場料:一般1200円、高校・大学生800円、中学生以下無料
※障害者手帳を持参で本人と付き添い1名100円引き。

【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP:https://www.ukiyoe-ota-muse.jp/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=太田記念美術館