高い技術と教養が生み出した観山作品を大解剖

観山肖像写真 個人蔵(画像提供=『神奈川県立歴史博物館』)。
観山肖像写真 個人蔵(画像提供=『神奈川県立歴史博物館』)。

下村観山は東京藝術大学の前身である東京美術学校に第一期生として入学。卒業後は同校で教鞭を執るも、校長の岡倉天心とともに同校を辞職し、日本画の近代化と革新を目指して日本美術院の設立に参加した。

岡倉の指導をはじめ、明治36年(1903)から2年にわたるイギリス留学、欧州巡遊などを経て、卓越した技術力と深い教養に裏打ちされた発想力により、横山大観、菱田春草らとともに新時代にふさわしい日本美術の道を切り拓いた。

狩野派、やまと絵、琳派など伝統的な日本絵画の筆法から、西洋画的な色彩・陰影表現まで、“千年の美”の技術を巧みに我が物にし筆を振るった観山。その作品には、和洋折衷の不可思議な表現、ミステリアスなモチーフなど、気になる部分が数多くあることが分かる。そこには技法の他に、その作品を描くことになった経緯(作品の成り立ち)も関係しているという。本展ではそれらをひとつひとつ解きほぐし、作品の示す意図を明らかにしながら、観山芸術の意義を再検証する。

《獅子図屏風》右隻 1918年 『水野美術館』蔵。後期展示① 4月14日(火)~5月10日(日)。
《獅子図屏風》右隻 1918年 『水野美術館』蔵。後期展示① 4月14日(火)~5月10日(日)。
《獅子図屏風》左隻 1918年 『水野美術館』蔵。後期展示① 4月14日(火)~5月10日(日)。
《獅子図屏風》左隻 1918年 『水野美術館』蔵。後期展示① 4月14日(火)~5月10日(日)。

観山唯一の重要文化財『弱法師』も見どころ

《弱法師》右隻 1915年 重要文化財 『東京国立博物館』蔵。Image: TNM Image Archives。前期展示3月17日(火)~4月12日(日)。
《弱法師》右隻 1915年 重要文化財 『東京国立博物館』蔵。Image: TNM Image Archives。前期展示3月17日(火)~4月12日(日)。
《弱法師》左隻 1915年 重要文化財 『東京国立博物館』蔵。Image: TNM Image Archives。前期展示3月17日(火)~4月12日(日)。
《弱法師》左隻 1915年 重要文化財 『東京国立博物館』蔵。Image: TNM Image Archives。前期展示3月17日(火)~4月12日(日)。

観山唯一の重要文化財であり、謡曲《弱法師》(よろぼし)を題材に描いた作品『弱法師』には、盲目となった俊徳丸(しゅんとくまる)が心の目で見た景色が描かれている。交差した木の枝を表す線、人物の着衣の線にも金を使用するなど、日本の伝統絵画由来の装飾的表現を用いながらも、西洋画風の陰影をつけた人物、梅の幹の描写を合わせることで画面に現実感を与えている。

さらに、『不動尊』のような色合いの異なる金を用いた独特な世界観や、まるでレオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』を思わせる顔立ちの観音が描かれる『魚藍観音』など、謎めいた作品たちにも注目したい。

本展では、それらの作品の細部までを解説し、観山芸術の真骨頂ともいえる「卓越した技術×深い教養×高いアレンジ力による“仕掛け”」をあらわにすることを試みる。5月30日(土)~7月20日(月・祝)には『和歌山県立近代美術館』にて、西日本で45年ぶりとなる巡回展も開催される予定だ。

《魚籃観音》1928年 西中山 妙福寺蔵 通期展示。
《魚籃観音》1928年 西中山 妙福寺蔵 通期展示。
《不動尊》1925年 『大倉集古館』蔵。前期展示3月17日(火)~4月12日(日)。
《不動尊》1925年 『大倉集古館』蔵。前期展示3月17日(火)~4月12日(日)。

開催概要

「下村観山展」

開催期間:2026年3月17日(火)~5月10日(日)
開催時間:10:00~17:00(入館は~16:30)※金・土は10:00~20:00(入館は~19:30)
休館日:月(ただし3月30日、5月4 日は開館)
会場:東京国立近代美術館(東京都千代田区北の丸公園3-1)
アクセス:地下鉄東西線竹橋駅から徒歩3分
入場料: 一般2000円、大学生1200円、高校生700円 ※当日に限り所蔵作品展「MOMAT コレクション」も観覧可。

【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP https://art.nikkei.com/kanzan/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=東京国立近代美術館