仏教美学を表す多彩な作物から“美”を見出す

私版本『美の法門』『無有好醜の願』『美の浄土』『法と美』日本民藝館蔵。
私版本『美の法門』『無有好醜の願』『美の浄土』『法と美』日本民藝館蔵。

1949年には主著作『美の法門』を上梓し、仏教美学の基礎を標した『日本民藝館』創設者の柳宗悦(1889-1961)。

柳は、浄土門の諸宗が根本経典とした『大無量寿経』の中にある第四願に着目し、その願文から、人間が生み出す造形が本来「美醜なき美」の性を約束されていることに気付く。そこから無銘の作り手がなぜ美しいものを生み出せるのか、という問いの答えを導きだす。そして自身がそれまで『日本民藝館』に集めた所蔵品を証しとし、その気付きを広く説いていった。

「人は恐らく、在銘の作を作る時より、無銘の作を作る時の方が心が自由であろう」と考えた柳は、美醜の彼岸における「自在の美」「他力の美」を、具体的な「物」に即して多様に語ってきた。本展では仏教美学に関わる原稿や書籍などの資料展示とともに、柳が 1955年10月18日におこなった「東洋思想講座 第五回」(於・『日本民藝館』)の音源を基に制作した映像も初上映。柳が直観で見届けた「美醜なき美」の具体的な作物を提示し、「仏教美学」を顕彰する。

「身辺の品々が宿している美を契機としても、浄土相を確認し得る」とする柳の言葉とともに、彼の目を通して仏教美学のなんたるかに触れられる。

聖人文裂 エジプト コプト時代 4世紀 縦76.0cm 個人蔵。
聖人文裂 エジプト コプト時代 4世紀 縦76.0cm 個人蔵。
種子阿弥陀三尊図 絹地刺繍 鎌倉-南北朝時代 14世紀 日本民藝館蔵。
種子阿弥陀三尊図 絹地刺繍 鎌倉-南北朝時代 14世紀 日本民藝館蔵。
自刻像 木喰明満 江戸時代 1801年 日本民藝館蔵。
自刻像 木喰明満 江戸時代 1801年 日本民藝館蔵。
白掛鉄絵蓋物 磁州窯 明時代 16世紀 日本民藝館蔵。
白掛鉄絵蓋物 磁州窯 明時代 16世紀 日本民藝館蔵。

開催概要

「仏教美学 柳宗悦が見届けたもの」

開催期間:2025年1月12日(日)~3月20日(木・祝)
開催時間:10:00~17:00(西館〈旧柳宗悦邸〉公開日および会期中の第2水・土・第3水・土は~16:30。入館は閉館30分前)
休館日:月(祝の場合は翌)
会場:日本民藝館(東京都目黒区駒場4-3-33)
アクセス:京王電鉄井の頭線駒場東大前駅から徒歩7分
入場料:一般1200円、大学・高校生700円、中・小学生200円

【問い合わせ先】
日本民藝館☏ 03-3467-4527
公式HP  https://mingeikan.or.jp/exhibition/special/?lang=ja

 

取材・文=前田真紀 画像提供=日本民藝館