和歌の世界観をモチーフにした庭園

駒込駅の南に位置し、閑静な住宅地の一角に広がる六義園。園内中央には「大泉水」と呼ばれる池があり、その周りをぐるりとめぐりながら四季折々の景色を楽しめる回遊式築山泉水庭園だ。元禄8年(1695)、江戸幕府5代将軍徳川綱吉の側用人であった柳澤吉保が、綱吉から与えられた駒込の地に下屋敷を造り、そこに7年の歳月をかけて自ら大名庭園を設計・造園した。

柳澤吉保は文学への造詣が深く、特に詩歌を好んでいたことから、『万葉集』や『古今和歌集』などの和歌に詠まれた景観を「八十八境」として園内にちりばめた。「和歌の浦」や「紀ノ川」といった和歌山市の地名や景観も数多く再現され、都内にありながらどことなく優美で、また趣ある景色が広がっている。

風光明媚な園内で紅葉狩り

そんな六義園で毎年秋に行われるライトアップイベントが「庭紅葉の六義園 夜間特別観賞」だ。園内にあるイチョウやドウダンツツジ、イロハモミジなど約560本の木々が朱色や黄色に色付き、11月下旬から12月上旬にかけて見頃を迎える。期間中は普段入園することができない夜間に特別開園し、紅葉で彩られた庭園のライトアップを実施。園内をゆっくりと散策しながら、夜ならではの絶景に出合うことができる。

「人気の観賞スポットはやはり中の島でしょうか。池の水が波立たなければ鏡面になって、島の形までくっきりと映し出されます」と教えてくれたのは六義園サービスセンターの野島さんだ。紅葉だけでなく石や松も引き立たせる照明により中の島の背景にも光をつなげ、広がりのある庭園の姿を浮かび上がらせる。またモミジの木が多くある水香江(すいこうのえ)では、かつて水が流れていたとされる場所に光で水の流れを再現し、幻想的な空間で紅葉狩りを楽しめる。

さらに、毎年好評だという「土蔵(くら)ジェクション」も実施。明治時代に建てられた土蔵の壁面にプロジェクターで映像作品を映し出し、和歌を基調とした六義園の世界を紹介する。そのほか、園内4カ所にはフォトジェニックな撮影スポットも設置。「ライトアップされた美しい景色をバックに、思い思いに記念撮影を楽しんでもらえれば」と野島さん。

「土蔵ジェクション」では映像を通して和歌の世界に浸れる。
「土蔵ジェクション」では映像を通して和歌の世界に浸れる。

期間中は文京区商店街連合会によるキッチンカーの出店や和歌山市の物販イベントも。さらに『心泉亭』では中の島を一望しながら抹茶(金箔入り)と上生菓子のセット(1300円)を味わえ、散策の休憩にぴったりだ。

和歌にちなんだ88カ所の景勝地が再現された六義園で、情緒ある和歌の世界に思いを馳せながら秋の夜長を楽しんでみては。

離宮傘や緋毛氈(ひもうせん)が設えられた風情ある撮影スポットで記念撮影を楽しもう。
離宮傘や緋毛氈(ひもうせん)が設えられた風情ある撮影スポットで記念撮影を楽しもう。

開催概要

「庭紅葉の六義園 夜間特別観賞」

開催日:2024年11月22日(金)~12月4日(水)
開催時間:18:00~20:30(最終入園は19:30)
会場:六義園(東京都文京区本駒込6-16-3)
アクセス:JR山手線・地下鉄南北線駒込駅から徒歩7分
入園料:オンライン前売券900円、窓口当日券1100円

【問い合わせ先】
六義園サービスセンター☎03ー3941ー2222
公式HP:https://www.tokyo-park.or.jp/special/rikugien_lighting2024/index.html

 

取材・文=香取麻衣子 ※画像は主催者提供