やわらかなタッチと色彩で、社会に潜む問題を鋭く突く

『月世界旅行』1981年、フォロン財団  (C)Fondation Folon, ADAGP/PARIS, 2024-2025。
『月世界旅行』1981年、フォロン財団 (C)Fondation Folon, ADAGP/PARIS, 2024-2025。

1955年にパリに移住し、ドローイングを描く日々を送っていたアーティスト、ジャン=ミッシェル・フォロン。フランスではなかなか芽が出なかったものの、1960年代初頭にはアメリカの『ザ・ニューヨーカー』や『タイム』などの表紙を飾るようになり、その後、各国で高く評価され、世界中の美術館で個展が開催されるなど活躍した。

一見すると色彩豊かで詩情あふれる作品には、環境破壊や人権問題など厳しい現実への告発が隠されているのも特徴だ。

本展は初期のドローイングから水彩画、版画、ポスター、晩年の立体作品まで約230点を紹介する、日本で30年ぶりの大回顧展となる。

デジタル化やパンデミック、戦争など、社会が大きな転換期にある現代において、環境や自由への高い意識をもち、静かな抗議を続けてきたフォロンの芸術が訴えるものを改めて感じたい。

無題 1983年頃 フォロン財団   (C)Fondation Folon, ADAGP/PARIS, 2024-2025。
無題 1983年頃 フォロン財団 (C)Fondation Folon, ADAGP/PARIS, 2024-2025。
『世界人権宣言』表紙 原画 1988年 フォロン財団   (C)Fondation Folon, ADAGP/PARIS, 2024-2025。
『世界人権宣言』表紙 原画 1988年 フォロン財団 (C)Fondation Folon, ADAGP/PARIS, 2024-2025。
無題 1968年頃 フォロン財団  (C)Fondation Folon, ADAGP/PARIS, 2024-2025。
無題 1968年頃 フォロン財団 (C)Fondation Folon, ADAGP/PARIS, 2024-2025。

東京駅という特別な空間で作品と向き合う

1988年から東京駅丸の内駅舎内に生まれた『東京ステーションギャラリー』は、開館以来、駅舎の構造を露わにしたレンガ壁の展示室とユニークな展覧会で親しまれている。

丸の内駅舎は創建当時の大正3年(1914)は鉄骨レンガ造りの3階建てだったが、空襲で一部を焼失、戦後の修復工事で2階建てとなったが、2007年から2012年にかけての駅舎保存・復原工事によって3階部分が復原された。

駅舎創建当時の構造を可能な限り露わにしている美術館は、構造レンガやむき出しとなった鉄骨などが、当時の面影を色濃く残している。

フォロン作品を味わい、東京駅の空間に浸る、一度で二度楽しめるのもいい。

作品を展示しているギャラリーの壁は、構造レンガだ。
作品を展示しているギャラリーの壁は、構造レンガだ。
2階の回廊では、東京駅丸の内駅舎の歴史を紹介する模型や写真資料を常時展示している。
2階の回廊では、東京駅丸の内駅舎の歴史を紹介する模型や写真資料を常時展示している。

開催概要

「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」

開催期間:2024年7月13日(土)~9月23日(月・休)
開催時間:10:00~18:00(入館は~17:30)・金曜10:00~20:00(入館は~19:30)
休館日:月(ただし7月15日・8月12日・9月16・23日は開館)、7月16日
会場:東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1-9-1  JR東京駅 の内北口改札前)
アクセス:JR東京駅直結
入場料:一般1500円、高校・大学生1300円、中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの人は200円引き(その介護者1名は無料)。

【問い合わせ先】
東京ステーションギャラリー☏03-3212-2485
公式HP  https://www.ejrcf.or.jp/gallery/

 

取材・文=前田真紀 ※画像は主催者提供