木造平家に上がり込むと、そこは本の園。物色していると「非売品もあるんですけど、貸し出しもしてますからね」と、店番スタッフから朗らかに声が掛かった。ふと見れば、レジ脇には席が。「本を読んだりゲームしたり、おしゃべりしていく方もいますよ」。なんだろう、この書店とは思えぬサロン感は。

営むのは、R65不動産代表の山本遼さんだ。高齢者向け賃貸を扱う異色の経歴なうえ、「コロナ前は松陰神社でスナックを開いていました。空き家や入居者情報を得るための、ビジネスの一環ですけどね」と、淡々と話す。コロナ禍で店を畳むことになったが、北千住で期間限定の空き家を見つけると、今度は本を媒介にした、人とゆるやかにつながる場を思いついた。

山本さん(中央)と本日の店番のセブンさん、おひたまさん。
山本さん(中央)と本日の店番のセブンさん、おひたまさん。

棚主たちの交代店番で、いろんな人が集う場へ

座布団席が用意され、ゲームしていく人も。
座布団席が用意され、ゲームしていく人も。

「単なる本屋じゃつまらない。と言ってコミュニティーに振りすぎると参加しづらい」と、共同書店として2022年に開店。

「目印も何もない辺境地」で始めたが、2025年に駅から5分の路地に移転。すでに30名いた棚主は、移転後さらに数を増やし、今や約60名にものぼる。純文学、画集、妖怪など、人の数だけジャンルは多岐で、「僕もですが、読み終えた本をどんどん回している人が多いです」と、山本さん。中には石ころや自由帳を置く人もいて、気張らない棚は眺めて回るだけでも楽しい。

ZINEコーナーは「編境の中の編境みたいなもの」と山本さん。
ZINEコーナーは「編境の中の編境みたいなもの」と山本さん。
棚主さんの裁量で置かれるものには、自由帳やカニ帳なんてのも。
棚主さんの裁量で置かれるものには、自由帳やカニ帳なんてのも。

営業時間もまちまち。交代で店番する棚主たちは人好きが多く、店は簡易リビングと化して、知り合いたちが顔を出してアットホーム感を漂わす。しかも、月1定例の棚主会を通してお互い気心が知れた仲になり、フリマなど、地域イベントにも一緒に参加。「北千住はとにかく人が面白い。一緒に面白がれるし、歓迎してくれる懐の深さもあります」と、山本さん。

『BUoY』の前後に寄ったり、『ことこと、』の席が空くのを待ったり。街を回遊しながら過ごす時間が愛おしい。

写真家がセレクトするアート・建築の写真集が並ぶ奥の一角はさながらギャラリーの様相だ。
写真家がセレクトするアート・建築の写真集が並ぶ奥の一角はさながらギャラリーの様相だ。
住所:東京都足立区千住仲町44-11/営業時間:日による/定休日:不定/アクセス:JR・私鉄・地下鉄・つくばエクスプレス北千住駅から徒歩5分

取材・文=林 さゆり 撮影=逢坂 聡
『散歩の達人』2026年9月号より

最近、街で見かけるようになったシェア型の本屋。そもそも何なの? どんな人がやっているの? 正直儲かるの?元・散歩の達人編集部員としてさまざまな本屋を取材してきた記録、新たに聞いた話、そして自身でも2026年春にシェア型書店『えにしの本屋』の開業した実体験を交え、その実態を大解剖!2回目は、埼玉県は大宮の『本と喫茶 夢中飛行』に伺いました。
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