──立石での映画の撮影はいかがでしたか?
松本

東京にこういう場所があるんだってちょっと驚きました。

──あんまり東京にそういうイメージはなかったですか?
松本

そうですね。たぶん私がそんなに行動範囲が広いタイプじゃないということもあると思います(笑)。監督がこういう東京の風景はどんどんなくなっているというお話をずっとしてくれていたので、愛いとおしい気持ちで撮影に臨めました。

──立石は飲んべえの聖地として有名なんです。
松本

たしかに。さっき撮影した公園でも飲んでらっしゃる方いましたし(笑)、もつ焼き屋さんもすごく並んでた。

──松本さんは大阪ご出身だそうですが、ちょっと大阪っぽさもありますかね。
松本

そうですね(笑)。かけ離れてはいないかな。堺のほうとか、ちょっと昔の空気がまだまだ残ってるような。映画館とか、銭湯とか。

──『わたしは光をにぎっている』の舞台も銭湯ですね。銭湯で働く女性を演じてらっしゃいます。
松本

澪(役名)は銭湯にとても引かれて、私も何か新しいことに興味を持ってチャレンジしてみたいという気持ちは今まで何度もあったので、そういう点ではすんなりと役に入っていけたと思います。

──引っ込み思案だった澪が銭湯に出合って変わっていく。それこそ自分でも思いも寄らないような大きな声が出せたり。
松本

「変わる」というよりは、もともと持ってるものではあったんだろうなと思います。知らなかった自分がちょっとずつ見えてきた、みたいな。私も性格は澪に似ていて、人と話すのはあまり得意じゃないし、自分に自信がなくて。でもこの仕事を始めて、たくさん失敗して。ずっと「私なんか全然だめだけどがんばります!」みたいな姿勢だったんですけど、そんなことを考えても全然いい方向にはならないことがわかった。ちょっとずついろんな人に出会って、話聞いて、経験してを積み重ねていくしかないんだなぁって。

信号待ちしてたら「虹出てるわね」って

──映画の中でも立石の街、下町の魅力が端々にあって、「余ったコロッケ持ってきたよ」とか。そういう小さな触れ合いがものすごく心に残りました。
松本

よく「東京の人は冷たい」とか言われますけど、でも実際に自分が東京に住んだら、近所の人がおすそわけしてくれたり、信号待ちしてて虹が出てたら、おばあちゃんが「虹出てるわね」とか声かけてくれたり。「あれ、全然東京の人冷たくないな」って思ったことはたくさんあります。下町は特に密集してて、人と人の距離が近い。監督もたぶんそういう下町のよさを描きたかったと思うんですけど、一方で、場所は関係ないよっていうのも伝えてくれてるんじゃないかなと思います。

──散歩はよくされますか?
松本

します。特に映画を観に行くときとか。歩きながら役のことを考えたり、普通にプライベートで悩んでること考えたり……ほんとふつう、ふつうですね。観た映画に衝撃受けたりすると「ちょっと歩いて帰りたいな……」って思ったり。

──映画への興味はいつくらいから?
松本

高校のときかなぁ。演劇部に入っていたので。でも本格的に観るようになったのはやっぱりお仕事になってからですね。

──演劇部だったんですね!
松本

軽音か演劇で迷ってて。高校、青春、青春といえば文化祭みたいなイメージあって。とにかく「青春したい!」と思ってたんです。でも演劇部っていう選択が青春につながってたかどうかはわからない(笑)。

──でも今のお仕事にはつながってる。
松本

どこかしらつながってると思います。演劇部にライバルがいたんです。いつもその子ばっかりに主役をとられていて。私とは対照的な、自分に自信のある女の子で。この子に女優になられたら、私、劣等感で死ぬと思って(笑)。そのことが今の仕事へ背中を押したっていうのはあります。変なとこ負けず嫌いなんですよ。