なぜ春の空は霞むのか?
ベールがかかったような柔らかな青空の広がる春。この時季は晴れていても空が霞んだように見えることが増えます。冬の青空といえば、パキッっとはっきりした濃い青色が特徴的ですが、春の青空は優しい水色で菜の花や桜、チューリップなど色彩豊かな花々を引き立ててくれます。
春の空が霞みやすいのにはいくつかの気象条件が関わっています。まず、春になり暖かくなると花粉が一斉に飛び出します。これに加えて大陸からは上昇気流によって巻き上げられた黄砂も飛来します。そして、気温が高くなるとともに空気中には水蒸気も増えます。空気は温度が高くなるほどたくさんの水蒸気を含むことができるため、寒い季節よりも暖かい季節の方が水蒸気量は多くなるのです。水蒸気は上空に向かうと、やがて冷えて細かな水滴になります。
花粉に黄砂、水滴と空気中に漂うものが多くなると、太陽の光がこれらの物質にぶつかって散らばるため、空は白っぽく見えるのです。太陽の光には異なる波長のさまざまな色が混じっていますが、大きな粒に当たるとすべての色が散乱するため私たちの目に入る光は白く見えて空が霞むのです。この現象は「ミー散乱」といって、雲が白く見えるしくみと同じです。
さらに、春におだやかに晴れる日は移動性の高気圧に覆われますが、高気圧のもとでは下降気流が発生します。下降気流が強まると空気が圧縮されて、気温が上空ほど高くなる「逆転層」ができ、これが空気のフタのような役目をします。すると、地上付近でチリやホコリ、花粉などがとどまりやすくなるため、よりミー散乱が起こりやすく、空が霞むことになるのです。
「霧」や「靄」との違いとは?
霞と同じように空をぼんやりとさせる「霧」や「靄」といった現象もありますが、それぞれの違いは何なのでしょうか?
実は、霞は気象用語ではありませんが、霧と靄は気象庁の定義によって違いがはっきりとしています。霧も靄も空気中の水蒸気が小さな水滴となって浮かぶ状態をいいますが、水平方向に見通せる距離が1km未満だと霧、1km以上なら靄と呼ばれるのです。
春先に遠くの景色が霞んで見えることを「春霞(はるがすみ)」といい、春の季語としても知られています。一方、霧といえば秋の言葉として使われることが多いです。日本独自の季節の変化を表す七十二候でも、春の始まりの2月後半には「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」があるのに対し、秋の気配が漂い出す8月後半には「蒙霧升降(ふかききりまとう)」という深い霧が立ち込める季節が始まることを表す暦があります。よく似たような言葉でも、季節感を持って使い分けると日本語の美しさ、奥深さをより感じられますよね。
春に見たいおぼろ月
桜が満開となる春は夜風に当たりながら散歩をするという人も多いのではないでしょうか? ふと夜空を見上げると、ぼんやりと雲のかかったやわらかな印象の月が浮かぶ……なんて素敵なシーンもあるはず。薄い雲や霞などに包まれて、ぼんやりと見える月を「おぼろ月」といいます。
このふんわりとした雰囲気を生み出すのは「高層雲」という雲です。高層雲は地上から2~7km付近に現れる雲で、月や太陽をぼんやりと隠すように広がり「おぼろ雲」とも呼ばれます。夜桜散歩の際には、ぜひ春ならではの優しく穏やかに照らす月も見上げてみてください。
淡色の空は何だか気持ちを穏やかに落ち着かせてくれるような気がしませんか? 新年度が始まる春。緊張したり疲れたりすることも多くなる季節ですが、空を見上げて歩くとほんの少し気持ちが軽やかになるかもしれません。
文・画像=片山美紀
参考:
“はれるんライブラリー もや、霧(きり)、霞(かすみ)、雲のちがいは?”.気象庁,https://www.jma.go.jp/jma/kids/kids/faq/a2_12.html.(参照2026年4月8日).







