布や毛糸製品が充実の雑貨店
清澄通り沿い、清澄白河庭園の向かい側に、ひっそりと店舗を構える『onnellinen』。表に目立つ看板が出ていないため、気をつけていないと見逃してしまいそうになるが、大きなガラス窓と白壁の外観が目印になる。
店内には、日本では手に入らないヴィンテージ布を使った小物や毛糸など、店主の瀬良田(せらだ)さわこさんが、海外で買い付けてきた貴重なモノが並ぶ。
「海外へ買い付けに行くといってもフィンランドへ行くくらいです。現地は、毛糸や布地などを取り扱うショップは少なく、探すのもなかなか難しいんです。お客様から『こういう布地、よく手に入ったわね~』と言われると、その苦労も報われます」と話す。
大阪から静岡、そして清澄白河へ
瀬良田さんと話していると、時折、関西訛りのイントネーションがある。「私、出身は大阪なんです。結婚して静岡へ移住し、そこで2002年に雑貨店を始めました」と話す。
「私のように資格も何の経験もない人が、仕事を得ようと思っても難しい。それなのになぜか店を開こうと決めちゃったんですよね。始めた当時はまだ子供も小さく、試行錯誤の日々でした」3度目の転勤に伴い東京・清澄白河の地へ来ることになった瀬良田さん。店舗はやめようと思ったというが、「家族が、自分のペースでやる分にはいいじゃないの。続けたらと後押ししてくれました」と話す。自宅も近く、商売と家事を両立させながらこの地で12年目を迎える。
オリジナルキットで編み物に挑戦
作品は、瀬良田さん手作り。店をもつほどの腕前なので、専門の学校や先生の元で学んだのかと思ったが、そうではないとのこと。「編み物や布小物作りは独学です。店を始めるまでは編み物なんてやっていませんでした。でも、仕入れの時に、これ、かわいい!という毛糸に出合ったのがきっかけで編み物の魅力を知り、毛糸も取り扱うようになりました」と話す。
オリジナルの編み物キットも販売しており、購入後、そのキットの編み方でわからない点を瀬良田さんに質問できるというのも魅力の一つ。「私のキットは、シンプルでオーソドックスな編み方でできるので、難しいことは何もないんですよ」と瀬良田さん。商品説明をしながらも、こういう色の毛糸に、この色を合わせてと、好きな色を組み合わせる面白さを説明してくれる。
この店へ足を運んで編み物へ挑戦するというのも、新しい趣味を始めるいいきっかけになるかもしれない。
ご近所の貴重な材料屋さんとして
神奈川や埼玉と遠方からも足を運ぶお客さんも多いとか。「店のホームページを見て来られるお客様も多いですね。こんな色の毛糸ありますか?とよく聞かれます」と瀬良田さん。
なんでも、近年、材料屋さんが減ってきている背景があるようで、この店で取り扱う品について、問合せも増えてきているとのこと。「こうして細々と続けていられるのも、お店のホームページを見てこられるお客様のお陰もあります。それでも、まだまだ試行錯誤の日々です」と話す。
瀬良田さんの柔らかな印象と話しやすさもあって、つい長居してしまう。居心地の良い、ゆるりとした雰囲気がまた店へ足を運びたくなる要因の一つかもしれない。
『onnellinen』店舗詳細
取材・文・撮影=千葉香苗