ピエール瀧
1967年、静岡県出身。1989年に、石野卓球らと電気グルーヴを結成。音楽活動の他、俳優、声優、タレント、ゲームプロデュース、映像制作などマルチに活動を行う。近著は「ピエール瀧の23区23時 2020-2022」（産業編集センター）。
結構高いわ！ そして何か天下獲った感がすごい（笑）
住宅地の真ん中に、突如現れた巨大な滑り台オブジェ。今日の公園はここでいいんだよね？
—— はい、1963年に作られた古い公園なんですが、東京スカイツリーが出来た影響で、近年はフォトジェニックスポットとして知られるようになりました。地元の人には「マンモス公園」という愛称で呼ばれているそうです。
マンモス公園？ ああ、この滑り台がマンモスに見えるってことか。
しかしすげえなこの滑り台、マジでなかなかの滑走距離じゃない？ あと今日みたいな灼熱の天気だと絶対ヤバいよね。短パンだったら絶対滑れないよ。下手すりゃ熱くて火傷すんじゃない？ スピードも出るだろうし。
—— さっき試しに滑ってみたんですけど、実はそんなに熱くなかったし、スピードも全然出ませんでした（笑）。
あ、マジで？（笑） じゃあ後でやってみようかな。
しかし、公園の入り口にイチジクの木が植えてあるって珍しいよね。そろそろ旬だから実がなってるけど、この実を誰が食べてるのかっていうのはすごく気になるな。子供たちであってほしい。
公園の入り口に魚屋さんがあるけど、あそこで聞いたら教えてくれるかな。この辺って、見た感じ元はお店だった雰囲気の建物多いよね。
—— 多分、向こうのお宅も元はおそば屋さんだったでしょうし、その向こうは駄菓子屋さんなんですよ。
昔は割と人が集まるミーティングポイントだったんだろうね。買い物がてら情報交換する感じの。
そんで公園遊具は、ブランコ6基、雲梯（うんてい）付きジャングルジムか。なんかあんま見かけないハードめなデザインだけど、これはこれでありだね！ 上級生じゃないとなかなかチャレンジできない高さ。角度が結構急だもん。小学校低学年が、これを軽々やってる兄貴たちを見ながら、「俺もいつかはあそこに！」っていうね。たまに身の程をわきまえずにぶら下がったお調子者の子が、落ちて怪我したりするんだろうね。
昔の子供がいっぱいいた頃、そして長屋感覚っていうか……
—— 大田区のタイヤ公園もそうでしたけど、安全を重視するよりも、とにかくいっぱい集まって来る子供をさばくことを優先してる感じしますよね。
そうね。子供がいっぱいいた頃の考え方で作られてるよね。
そしてやっぱ墨田区だけあって、防火用の水のタンクがいっぱいある。道が狭いからこの辺は火事になったら大変だろうしな。
そして公園に隣接するお宅の窓がいっぱいあるから、割と監視の目も行き届いております、と。言い方は悪いかもしれないけど、昔の長屋感覚っていうかさ、その感覚が凄いする。墨田区の人にはごくごく当たり前の街角風景かもしれないけど、この感じなじみがないもんね。そんでこっちにあるのも全部防災器具か。本当に昔から火事が一番の敵なんだろうな。
—— まだ昼間なので開いてなかったですけど、向こうの通りに駄菓子屋さんがあるんですよ。そこで買ったおもちゃで遊ぶ子供も多かったでしょうね。
分かる分かる。あのよく飛ぶプラスチック飛行機みたいなやつとか滑り台の上から飛ばしたいもんね。そしてこの公園には炭酸飲料のメッツが似合いそう。なんかメッツ飲みたくなる（笑）。
そして、ここにも登場のコンクリ遊具か。キリンとゾウね、これはもうおなじみのヤツだ。
そんじゃ、滑り台の一番上行って、スカイツリーと写真撮ろうか。どうだい！って感じのやつ。じゃあ登ってみるから下でカメラ構えといてね。
—— 了解です。
この遊具、コンクリート上の階層がぐるっと回る円形ステージになっているのか。城っぽい。みんながいる遊具が置いてある地面が城下町で、今俺がいるところが三の丸って感じ。もう一つ上がって二の丸、見上げた一番上が天守閣だわ。
では、いよいよ本丸天守へ到達します。ていうか、本当に天守閣に上るみたいな階段の角度だな（笑）。
—— 実際の天守閣も、入り口は結構狭くて急ですもんね。
そうそう。城の階段って意外と角度キツいんだよね。しかし、これは高いとこ駄目な子は無理だろうな。さて着いた。
うわ～、ここなんかすげえよ！ 結構高い！ そして何か天下取った感がすごい（笑）。ここに来るとわかるけど、風が結構通るのよ。今君たちがいる城下町はさ、周りを建物で囲まれてるから風感じないじゃん。でも上は意外と涼しいのよ。この気温だけど気持ちいいもん。
—— じゃあスカイツリーと写真撮りましょう。瀧さん、もうちょいと右ですね！
こんな感じ？ 隣にスカイツリーがドンとある感じでよろしく！
OK ？ ここに来ると分かるけど、周りに高い建物があんまりないんだよ。大体周りの家屋の屋根と同じ目線になんの。見える範囲には建物がぎっしり詰まってて、なんとも言えない見晴らしだわ。火の見櫓やぐらの代わりになるよ。
じゃあ滑り台滑って終わろう。
……ダメだ、意外と摩擦がすごくて全然滑れない（笑）。
—— 僕もさっきそうだったんです（笑）。全然スピード出なくて……。
分かった。これはさ、靴の裏で滑るのがいいんだと思う。ちょっとやってみる。あ～、ほら結構スピード出る！ うん、こっちの方がずっと良かった。
さっき天守閣からこの周辺を見て改めて思ったけど、ここって災害が起きた時の避難場所としても凄い大事な場所なんだろうな。
—— この辺は消防車が入って来られないから、この公園にあるものをフル活用して消防団が消火に当たるんでしょうね。
そうね。昭和のコンクリ遊具っていうだけじゃなく、屋根張ればいざというときのベースキャンプにもなるだろうから、ずっとこの状態で遺しておいてほしいね！
『京島南公園』詳細
ちびっこ隅田城度 ★★★★★
公園遺産度 ★★★★
火の見櫓度 ★★★★
水飲み場：あり トイレ：あり
自販機：なし 灰皿：なし
／アクセス：東武鉄道東武スカイツリーライン・亀戸線曳舟駅から徒歩10分
構成＝カルロス矢吹 撮影＝横井明彦
『散歩の達人』2025年9月号より
