建物の解体現場から“発掘”された雑貨たち

『HYST』は、元繊維問屋の建物で営まれていた撮影スタジオが、オーナーの古物好きが高じて古物商にジョブチェンジ、2018年に誕生した。2階フロアのみだったが、翌年1階にも拡張、現在の形となる。

取材した週の品揃え。一期一会の一点物ばかり。開店すると見る間に売れていく。
取材した週の品揃え。一期一会の一点物ばかり。開店すると見る間に売れていく。

商品は関東圏を中心に公共施設、旅館、古民家などの解体現場から直に買い取る「発掘家具」「発掘雑貨」と店で称するアジな品々。ゆえにお手頃価格で提供できる。経年40〜70年位のどことなく見覚えある品が多く、時代とともに“レトロ”の幅も変わっていくのを実感させられる。出自はばらばらでもトーンが揃っているのは選択眼のなせるわざだ。

「発掘雑貨」の食器類も方々に陳列880円~。
「発掘雑貨」の食器類も方々に陳列880円~。
本物の図書カード収納棚7万7000円。
本物の図書カード収納棚7万7000円。

心電図用置き台とか、使い道は買い手に任せられたクセ物が、その時々で紛れ込んでいるのも楽しい。毎週土曜のみ営業なのも理由がある。保管スペースがない同店は、まず月曜に商品が“発掘”された状態のまま届く。それをスタッフが手分けして修復、インスタ等で紹介、設置とディスプレイを金曜までに行い、準備を完了するのだ。それゆえ週1日位しか開けようがない。毎週どんな品が届くか分からない真剣勝負の日々。まるで産地直送の鮮魚店である。

革製の小物類も“発掘”品1650円~。後方の台は心電図用置き台9900円。
革製の小物類も“発掘”品1650円~。後方の台は心電図用置き台9900円。

かなり大変そうだが「1から10まですべてに関わる確かな手応えがあります」と広報の齋藤莉愛さんは目を輝かせて言う。客層は幅広く、ビンテージをお試しで生活に取り込んでみたい初心者にもうってつけ。黒幕の向こうに思わぬ出合いが待っている。

開店時の様子。右手の隙間から幕をめくって入店せよ。
開店時の様子。右手の隙間から幕をめくって入店せよ。

『HYST』店舗詳細

取材・文= 奥谷道草 撮影= 井原淳一
『散歩の達人』2025年6月号より