今回治療を受けるのは……ぺんちゃん
中学生の時にお迎えしてからしばらく行方不明になっていたが、ベッドの下で発見して以降はどこに行くのも一緒。甘えん坊で人見知りな性格。
付き添い……ぎんさん
高校生の時にお迎えしたぺんちゃんの親友。入院の不安を軽減してあげようと付き添いに来た。
保護者に寄り添う治療
これまで1万7000体以上のぬいぐるみを治療してきた『杜の都なつみクリニック』。
10年来の付き合いであるゆえ毛並みがへたっている上に、お風呂に入れてもコーヒーのシミが落ちない……。そんな悩みを解消する治療は、お風呂タイムの入浴剤の成分を汚れの種類によって替える徹底ぶり。さらに「お湯の温度は40℃ぐらい。ぬるすぎると油分が落ちないし、熱すぎると毛が縮んじゃいます」となつみ院長。優しい手つきは職人技の域で、思わず見とれてしまう。
さらに同院では「こころハート」として愛着のある古い中綿を体内に詰め込むオプションも。治療前と変わらない姿になるよう心がけてくれるから、安心して預けられる。
退院の準備ができたとの連絡を受けて引き取りに行った中島。「うわー、こんなにきれいになるなんて! 触り心地も昔のぺんちゃんを思い出します」と興奮気味。
生地がほとんど残っていないぬいぐるみが持ち込まれることもあるが、そんな時は昔の写真を借りて型紙を復元するなどの大手術を行う。
「ぬいぐるみは家族の一員。だから、私たちは保護者の方に寄り添う治療を心がけています」というなつみ先生の言葉が印象的だった。
取材・文=石原たきび 撮影=原 幹和
『散歩の達人』2025年5月号より