ピエール瀧

1967年、静岡県出身。1989年に、石野卓球らと電気グルーヴを結成。音楽活動の他、俳優、声優、タレント、ゲームプロデュース、映像制作などマルチに活動を行う。近著は『ピエール瀧の23区23時 2020-2022』(産業編集センター)。

子どもの責任でやりたいことをやれる学びの場

ここ、NHKの「ドキュメント72時間」に出てたところだよね? あれ家で観てて爆笑したよ。子どもたちが泥んこになってて楽しそうだなーって。

—— そうですね。定義上では、公園ではなく青少年教育施設というくくりにはなるのですが、フリーでファンタスティックでファンキーだから行ってみたい!ということでお邪魔しました。こちら、今回ご案内してくださる所長の友兼大輔さんです。

友兼:初めまして、よろしくお願いします。

ピエール瀧です。今日はよろしくお願いします。こちらは、児童館的な施設だと思えばOKですか?

友兼:はい。そこに看板とかもあるんですけど、川崎市は子どもの権利条例を日本で最初に作ったんです。条例ができたのが2000年で、それを具現化する施設として2003年にここがオープンして、今年で22年目になります。

なるほど。別に川崎市民じゃなくても遊びに来て大丈夫なんですね。

友兼:そうですね。遠方から来る方もいらっしゃいます。だから今のこの明るい時間でも、こうやって乳幼児親子が遊びにいらっしゃって。学校外の学びの場ということで、不登校と言われる子たちの居場所があるんです。その子たちが今一緒にいてにぎわってる感じですね。

乳幼児親子と一緒にいろいろ活動できるっていうのが、変わってるって言い方も失礼かもしれないですけど、日本の中でも珍しい場所ですよね。

友兼:そう思います。ここの施設では0歳から18歳まで、実際は20歳超えても来る子たちもいるんですけど、子どもがやってみたいっていうことにチャレンジできる環境をどうやって作るか? それを担保しようっていう目的で作ってる施設なんで。

ここで育った子たちにとってはいつまでもホームグラウンドってことですね。さっきの子ども条例、いろんなとこに貼ってありますね。ここは元々どういう場所だったんですか?

友兼:工場跡地だったんですよ。それでここを作る際に、じゃあ何を作ろうか? ってなって、まず子どもたちとワークショップをやりました。何がやりたい? どんな形の建物がいい?というのを聞いて、ハード整備してソフト整理して……みたいな感じで出来上がったのがこの施設です。

ここにある遊具とかを親目線で見ると、結構高さがあって怖いなとか思っちゃいますけど、結局子どもってそういうのが好きですよね。

友兼:そうなんですよ。あとは中高生で無料で使えるスタジオがあるとありがたいって意見があったんで、音楽のスタジオもあります。

スタジオ⁉ バンドの練習ができるんですか?

友兼:はい。ご案内しますね、こちらです。

本当だ! 普通にドラムセットとかもあって。へえ、結構しっかりしてる。しかも2部屋あるんですね。

友兼:本当は録音までできるものを作りたかったんですけど、さすがにそこまではできなくて。中高生は無料で、大人も一応予約が空いてれば使えます。それで、スタジオの横にあるのが、雨が降ってる時でも遊べるスペースですね。サッカー、野球、バレーボール、クライミング、何しても大丈夫です。

すげえ。鏡もあるからダンスの練習もできるんですね。あ、シャワーもある。「72時間」でみた時、泥んこで遊ぶ子どもたち見ながらいいとこだなあって思ったんですけど、ちゃんと洗う場所もあるんですね。

けがをすることがむしろ自分のためになる

友兼:はい。そこはやっぱり親御さんも気にされるので。ここからその泥んこになるようなエリアになるんですけど、滑りやすいんで足元気をつけてくださいね。

一番高いアレは、バンジーというか飛ぶためだけのもんですか?

友兼:はい。一番高いところだと5mくらいの高さがあります。ウチは、やっちゃ駄目とはあんまり言わないようにしてるんですけど、ここから飛び降りる時は一声かけてねって言ってます。マットを下に敷きたいので。

なるほど。あ、「72時間」でよく出てたウォータースライダー! 今は1月なんでさすがにやってないけど。見ましたよ、ここからバチャーン! って下に滑っていくの。

友兼:12月くらいまでは遊ぶ子もいますね。それでこれ、全部井戸水を入れてるんですよ。水道で1回入れると、5万ぐらいかかるんですよね。でも水で遊んでもらうのをやめたくなくて、300万円ぐらいで井戸掘りました。もう10年以上経つので、本当に掘ってよかったと思います。

ナイス判断ってことっすね。あのトンネルは、中の通路がつながってるんですね? いやー、すごい。これはファンキーだわ。でも、自由にさせることと、安全を守らなきゃ! の線の引き方って難しくないっすか?

友兼:それはよく聞かれるんですけど。子ども自身が危ないって思うのが一番安全だと思っていて。安全な場所を作るってよりも、危険をどう管理するかっていうことに自分で気づくっていうのが一番大事だと思うんです。ですので、ここではチャレンジした結果、擦りむいちゃったとか骨が折れるぐらいはいいよって。「心が折れるぐらいなら骨が折れた方がまし」っていうイギリスの福祉活動家・アレン夫人の言葉もあるので。でも、命に関わる事故にだけはならないような点検は日々しています。子どもがチャレンジして起こるけがは、逆に応急処置でしっかり対応するっていう感じですね。

そうっすよね。見守ることと、管理&制御することは別の話ですもんね。やっぱりやりたいことをやるからこそ、けがしてもその結果自分に返ってくる失敗が、自分のものになりますもんね。なんかここ自体が、子どもたちの秘密基地って感じだね! いやあ、いいところを見学させていただいて、本当にありがとうございました。

友兼:こちらこそありがとうございました!

川崎市子ども夢パーク

子どもファンキー度 ★★★★★
巨大秘密基地度 ★★★★★
ハンドメイ度 ★★★★

水飲み場:あり  トイレ:あり
自販機:なし  灰皿:なし

構成=カルロス矢吹 撮影=横井明彦
『散歩の達人』2025年3月号より