社員のピーポくん愛が引き寄せた⁉
金町駅にほど近い一面ガラス張りのオフィスは、店かと思うほどぬいぐるみだらけ。そんな中に、あっ、ピーポくん! 大中小と3体いる。
「これは2回目の校了(最終)サンプル。舌のデザインとベルトを替えました。4月からの販売に向け、これから山形の協力工場で量産に入ります」と、「メディコプレス」社長の梅津由都さん。
1987年に警視庁で誕生したピーポくん。そのぬいぐるみを長年作り続けてきた工場が職人の高齢化のため2024年3月に閉鎖し、製造・販売がストップ。消失の危機が訪れたが、2024年末に新たな担い手が決定。それがこのぬいぐるみメーカーだった。ピーポくんの着ぐるみの制作を担当していた縁で声がかかり、コンペに参加。見本品にできるだけ近づけて作るという審査をクリアし、見事選ばれたのだ。
「目はプラスチックパーツなのですが、そのメーカーさんとは取り引きがあって従来と同じものを入手できました。生地やベルトの金具も同じものを調達してます。実はたまたまピーポくん好きな社員がいたので、これは取るしかない!と(笑)」
が、この会社、初めからぬいぐるみに特化したわけではない。
ぬいぐるみは会社の救世主だった
広告代理店から独立した梅津さんは医療系出版物の制作を行うため2002年に会社を立ち上げるも、なんと早々に頓挫。見かねた前職の先輩が紹介してくれた仕事の1つがぬいぐるみだった。
「ゼロから工場を探すのが大変で。でも、1つ作れたらそれを機に同様の依頼が増え、開業2年でぬいぐるみが主軸に。着ぐるみの注文も受けるようになって、ゆるキャラブームの到来で需要が増えました」
完全受注生産で、生地の裁断も着ぐるみの型作りも工程はほぼ手作業。依頼は、官公庁のマスコットや大手企業のノベルティ、動画配信用のパペット、大学や研究所の小型ロボットのカバーなどもあるという。着ぐるみでは、空気で膨らませる画期的な「エア着ぐるみ」の注文が今や7割も。これは2020年に葛飾ブランド「町工場物語」に認定されている。
では、今後の目標は?
「自社工場を作りたいですね。着ぐるみの工房はここの上階にあるのですが、ぬいぐるみは山形、青森、中国の協力工場に頼っています。将来を見据えて自分のもとでも量産体制を整えられたら」
いつかmade in金町のぬいぐるみを手にできるかも⁉
メディコプレス
ぬいぐるみ・着ぐるみ制作の問い合わせは、メール(info@medicopress.com)もしくは電話(☎03-3608-3015)まで。
小売り不可、オーダーメイド販売のみ。
取材・文=下里康子 撮影=泉田真人
『散歩の達人』2025年3月号より