お話を聞いたのは……園長・當山民人(とうやまたみと)さん
①日本一安いといわれてる?
入園料無料で、乗り物代は1回10円か50円。11枚つづりの回数券は500円だ。前橋市による市民のための公園なので、利益は求められず金額は条例で決まっている。でも運営会社が売店や立体迷路の自主事業、イベント企画などで企業努力もしているよ。
②歴史を感じられるものがたくさん!
園と同じ70歳の「もくば館」は現存最古級の動く木馬。高さ4.9mの常夜灯のような旧ラジオ塔(写真下)はラジオ放送の公衆用聴取施設として昭和8年(1933)に建造。ともに国登録有形文化財だ。
貴重なすべり台や、石碑ファン必見の大正11年(1922)の「安井与左衛門効績碑」も。
③シニア世代のスタッフも大活躍
約40名いるスタッフの年齢層は、下は大学生、上はなんと70代後半で、特にシニア世代が目立つ。前職は教員、自動車関係、飲食店と多様で、子供の接し方から遊具のトラブルまで豊富な経験を生かして対応してるよ。
「みなさんタフで頼もしい!」と當山さん。
④意外と侮れない、迫力ある乗り物も
8つある大型遊具は大人でも楽しめる。「ひこうとう」は4階建てほどの高さでドキドキ。「ウェーブスターライド」はゆっくりなのに急発進、急落下で刺激的。「くるくるサーキット」はカーブを曲がる勢いが激しい!
後者2つは「2大絶叫マシンです(笑)」と當山さん。
⑤食事もこだわりが!
『おむすびのマム』のおむすび100円~は、前橋の米店でお米マイスターが厳選した米、前橋の海苔店で手焼きした海苔など、地元調達の食材にこだわって手作り。売り切れ必至のからあげ400円は群馬で有名な料理屋で板長だったスタッフによる直伝。おいしいはずだよ。
⑥オリジナルグッズは手作り?
『るなぱあく』限定商品があるガチャガチャコーナー。オリジナルの缶バッジ100円は、イラストもスタッフが手描きし、バッジづくりも雨天などで開園できなくなった時間を使ってスタッフがせっせと手掛けているんだって! ほかにアクリルキーホルダーも面白いよ。
⑦謎のキャラ発見!?
園内にこそっと置かれているのが、こびとに兵隊、キノコなどのキャラクター。出自は不明だけど密かにファンも多く、冬になるとこびとにマフラーを巻いてあげるスタッフもいるとか。
時々現れる群馬県出身の人間紙芝居パフォーマー・せきあっしさんも人気者だよ。
⑧スペースの有効活用
前橋城の空堀という特殊な場所にあるので、限られたスペースを無駄なく使う工夫がそこここに。
『おむすびのマム』があるのはまめきしゃとまめじどうしゃの走路の真ん中。花壇だった島地を活用した。「ウェーブスターライド」は石段の段差も使って設置されているよ。
にっぽんいちなつかしいゆうえんち
道路から目指しても、子供の声や遊具の音は聞こえるのに一見、視界には何もない。それもそのはず、その遊園地は地上より下の窪(くぼ)地にこぢんまりとある。
『前橋市中央児童遊園』、愛称は『るなぱあく』。今風のアトラクションは一切ない素朴な遊園地。「にっぽんいちなつかしいゆうえんち」なるフレーズがピッタリだ。
「1954年の開園当初は、クマやクジャクなどの動物もいたそうです。今の『ウェーブスターライド』を導入する時は来園者投票で選ばれたという話も聞きます。公募で決まったこの愛称も『遊園地』に“るなぱあく”とルビを振った萩原朔太郎の詩が由来だったなんて話も。昔のことはみんなお客さんが教えてくれるんです」と園長の當山民人さん(以下同)。
昔からある「もくば館」、乗り物自体は3代目でも同じ位置にある「ひこうとう」と、園内レイアウトはほぼずっと同じ。変わらない良さがここにはある。新品に見える新幹線などの小型遊具は、ボロボロだったのを3年かけて少しずつ修繕して使い続ける。
「新調するより、お金や時間をかけても修理して大事にするのが前橋市の考え方のようで。だから親子で同じ乗り物に乗ることもできる、3世代で楽しめる遊園地なんですよ」
また、入園無料で自由に立ち寄れるのもいいところ。朝はジョギング、犬の散歩、昼は近所の会社で働く人がからあげや焼きそば、おむすびを買いに来ることもあるとか。もはや市民には生活の一部、大切な場所なのだなあ。
「そうですね。実は何度か閉園の危機があったそうですが、そのたびに市民が立ち上がると聞きました。みんな潰(つぶ)されちゃ困るから遊びに来てそのときは売り上げが上がるって(笑)。私も絶対守っていかなきゃと思っています」
2024年で、愛されて70年。誕生月の11月は、記念グッズの販売や懐かしい園の写真を募集して写真展を開くなど企画が目白押し。一段と楽しそうな、『るなぱあく』のお祝いをしに行こう!
『前橋市中央児童遊園 るなぱあく』詳細
取材・文=下里康子 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2024年10月号より