“ザ・商店街”な街並みを守る法令
「さんたつ連載のページで巣鴨って検索すると1番上に出てくる【巣鴨って、どんな街?】の中に出てくる『巣鴨なひと』そのまんまな人がたくさんいるね!」
「そうだね」
今日もエルボーは無邪気だ。
まずは全長約780mの巣鴨地蔵通り商店街を歩いてみよう。
いわずとしれた巣鴨地蔵通り商店街は、全国有数のにぎわいあふれる商店街となっている。
いわゆる“お参りが目的の遠方からの来訪者”のみならず、近隣住民のみなさんも利用する身近な商店が軒を連ね、主に低層階を商店とし、上層階を住宅や共同住宅としている建物が立ち並んでいる。
つまり“ザ・商店街”なわけだ。
ではここで、宅建知識をワンポイント。
かなり細かい地区計画
巣鴨地蔵通り商店街を“ザ・商店街”としてキープするためには、そりゃもちろん一般人(地権者や不動産業者)の好き勝手な建築を許してしまうわけにもいかない。
なので、このあたりの地区には都市計画として「地区計画」が策定されている。つまり、地権者といえども好きなように建物を建てることはできないのです。
ではどんな地区計画なのかというと……。
まず「土地利用の方針」として以下。
1.近隣住民や来街者が親しみやすい商店街の連続性の維持と向上を図る。
2.低層階の店舗や業務と住宅等の機能が調和した良好な中層の市街地の形成を図る。
「なるほどたしかに」という街並みになっています。
では具体的に、低層階、たとえば1階部分はどんな用途の建物でなければならないか。
抜粋してみますと。
1.店舗、飲食店など
2.病院、診療所、事務所など
3.学校、美術館など
4.劇場、演芸場、映画館、観覧場、集会場など
5.公衆浴場
逆に、1階部分に建築してはならない用途の建築物として下記があります。
1.共同住宅などの住宅
2.パチンコ屋、マージャン屋、勝馬投票券発売所、場外車券売場など
3.店舗型性風俗店
4.倉庫
にぎわいある商店街にしていこうということで、1階を住宅などにしてはならないわけですね。
とはいえ、なんでもかんでもとにかく「にぎわえばいい」ということでもなさそうで、パチンコ店や性風俗店、競馬の勝馬投票券発売所などの建築もNGだ。
ちなみに広告物の色彩とかも規制していて、
・外壁や屋根に取り付ける広告物は周辺の街並みと調和したものとする
・光源が点滅する広告物は使用しない
など。地区計画というだけあって、このように細かいことまで規定しています。
なんかコンビニだけちっちゃくね?
おじいちゃん、おばあちゃんの原宿的な話で出てくる巣鴨だが、ゆるい空気感がオレたちにも心地よい。
「たくさんのお店があるね」
「日本一の赤パンツだって! テレビとかで見たことある!」
「ここら辺歩いてるおじいちゃんおばあちゃん、いや若者もみんなはいてたりするのかな?」
「そう見えてくるからやめてよ〜」
笑いながら顔を上げたら気になる光景が。
なんかコンビニだけちっちゃい。
実力を出し切った。
こんな言葉がありますよね。スポーツの試合とかで、たとえ負けたとしても「実力を出し切って」のことだったら清々しくもあるでしょう。
不動産(特に土地)の世界でも「実力を出し切った」というようなことを表す用語があって、それが「最有効使用」です。
まぁ、これって読んで字のとおりで、その土地がもつポテンシャルをぎりぎり目一杯までちゃんと引き出して建築物を建てているかどうか。前に建ぺい率とか容積率とかやったよね?それのこと、おぼえてるかな?
コンビニの周囲は限度いっぱいでビルが建っているでしょ。なので周囲は「最有効使用」しているという感じだ。
これを小難しくいうと以下。
最有効使用とは、ある不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用方法をいう。この場合の最有効使用は、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものである。
ところがね。往々にして不動産が最有効使用されていない場合が多いです。
そりゃそうですよね。
だって、“ある程度の使い方”で十分だったりしますもんね。
土地を最有効使用をするとなると、法令で定められている上限まで建築物を建築しなきゃならないわけだから、コストもかかる。
コンビニ作るだけだったら、そんなに大きな建物はいらないよ、ということもあるしね。
……というような話を小難しくいうと以下。
現実には必ずしも最有効使用に基づくものではなく、不合理な又は個人的な事情による使用方法のために、当該不動産が十分な効用を発揮していない場合がある。
ふつうに書いてあれば誰でもわかることを、こうして小難しく表現している「不動産鑑定評価基準」という一種の鑑定評価マニュアルみたいなものです。国家資格である「不動産鑑定士」の合格をめざすのであれば、不動産鑑定評価基準の熟読・理解が必要となります。
「とげぬき地蔵は髙岩寺の通称なんだよね」
「そうそう。病気治癒の御利益があるってことで有名だよね」
とげぬき地蔵尊髙岩寺ホームページを拝見しますと「針を飲み込んでしまった女性に、ここの地蔵尊像を写し取った紙札を飲ませたところ、 針が紙札の地蔵尊を貫いて出てきたのが『とげぬき』のはじまり」とのこと。ほかにもいろいろな伝承があるみたいです。
とげぬき地蔵にお参りした後、ふと目に入ったカフェで一息。ここは『東京散歩地図』でも紹介されている『福島家』だ。
「一息ついたらどうしよっか?」
「せっかくだから端っこまで行ってみよう」
「そうだね」
まだまだ歩き足りないので少し散歩してみる。
「明治女学校だって」
「女子の『自覚と自立』の高等教育を目指して設立されたんだよね。明治18年(1885)のことだからずいぶん時代の先端いってるよね」
「私も『自覚と自立』もっとしなくちゃね」
まずい。本日もこの展開がやってきた。
……やってきたのだが、エルボーも、その先を何も言わない。
オレも聞けない。
かくして、オレは地蔵になった。
取材・文・撮影=宅建ダイナマイト執筆人