栄養価が高く、おでんにも相性が良いほうれん草
ほうれん草は通年を通して手に入る野菜だが、旬は秋から冬にかけて、11月から3月が旬だ。
寒い季節は甘みをたくさん蓄えており、ビタミンCも豊富だ。ほうれん草は栄養価が高い野菜といわれており、ビタミンCだけでなくカリウムや鉄分、ビタミンAなどが含まれる。栄養が偏りがちなおでんに加えるとバランスが取れる。
冬のほうれん草はほかの季節のものより甘く、ビタミンCも豊富だが、もともと栄養豊富な野菜なので時季を問わず食べるようにしたい。冷凍物は新鮮でない印象があるが、旬の時季のほうれん草を使用するため栄養価は高いという。
食べると尿路結石になる? ほうれん草とシュウ酸の関係
最近SNSで話題になったほうれん草のシュウ酸。投稿者は下茹でせずに食べ続けていたら、尿路結石になってしまったという。
ほうれん草にはシュウ酸が多く含まれ、尿内でカルシウムと結合すると尿路結石(尿管結石)の原因になりえる。ただし、シュウ酸は水溶性のため、SNSのとおり下茹ですれば減らすことができる。一般的にほうれん草のえぐみを取るため下茹でをしてアク抜きをするが、そのアクにはシュウ酸が含まれる。昔ながらの調理法は理にかなっているといえるだろう。
前述のとおり、シュウ酸は尿中でカルシウムが結びつくことで尿路結石の原因となるが、先にカルシウムを摂取することで消化管中で結合し、シュウ酸は吸収されにくくなるという。このため、ほうれん草と一緒にかつお節やちりめんじゃこなどカルシウムが豊富な食材と一緒に味わうと良いといわれている。ただし、少量のカルシウムがどれだけ効果をもたらしてくれるかはわからない。
シュウ酸が少ない品種のものも多く出回っている。サラダ用のほうれん草や赤軸ほうれん草はシュウ酸が少なく、下茹でせずに生で食べることができる。
尿路結石はシュウ酸の摂取だけでなくさまざまな要因で発症するようなので、ひとつの知識に踊らされることなくバランスの良い食事を心がけるようにしよう。
おでんのほうれん草の調理方法
さて、ここからはほうれん草の下茹でとおでん種としての調理方法を解説していこう。
まず、ほうれん草の根元を包丁で切る。次に根元を十字もしくは格子状に1〜2cmの深さに切り込みを入れる。ほうれん草がばらばらにならないように刃の入れる箇所を見定めよう。
このひと手間で土が落としやすくなり、火も通りやすくなる。ちなみに根の部分はミネラルやポリフェノールが豊富なので、細かく刻んで別の料理に使ってもいい。
水を張ったボウルにほうれん草を入れ、軽く揉んだり、ゆすったりして土を落とす。根や茎が折り重なった箇所は念入りに、葉も丁寧に洗っていく。
鍋で湯を沸かし、小さじ2杯ほど塩を入れる。ほうれん草は根の部分を最初に入れ、30秒ほどしたら葉も投入しよう。ほうれん草は切らないまま茹でたほうが栄養素の流出を防ぐことができる。
下茹でする時間だが、おおよそ1分くらいが一般的だ。茹でる時間が長いほどビタミンCなどの栄養素は減っていき、食感も柔らかくなってしまう。シュウ酸の減少に注目してみると、日本家政学会誌の実験では「ほうれん草中のシュウ酸残存率は沸騰水開始後約3分間で54.1%」だという。病院で食事制限の注意がなく、過剰に摂取しなければ、それほど神経質にならなくてもいいだろう。
火を止めたら、ほうれん草を冷水にさらして冷ます。手で軽く絞り、食べやすい大きさに切れば下ごしらえは完了だ。
おでんにする場合は食べる直前に鍋に入れて温め、器に盛り付けてからおでん汁をさっとかけるといい。味染みを楽しむというよりは、ほうれん草の豊かな風味を満喫する食べ方となる。かつお節やちりめんじゃこをかけると見た目も美しく、尿路結石対策も期待できる。
ほうれん草を干瓢で巻いてもいいだろう。6、7cm程度にほうれん草を切りまとめ、干瓢でくるりと巻く。干瓢は下茹でして柔らかい状態にしておくといい。
すこし工夫して巾着をつくってみるのもいいだろう。今回はほうれん草のほかにチーズを加えてみた。
チーズはカルシウムを豊富に含んでおり、尿路結石の対策にはもってこいの食材だ。ほうれん草ともよく合い、おでんとも相性がいい。ただし、塩分の取りすぎには気をつけよう。
おでんにほうれん草を加えると、見た目も華やかになり栄養バランスも良くなる。おでん種としてはなじみが薄いが、おいしいのでぜひ試していただきたい。
参考文献
日本家政学会誌「ほうれんそうのゆで調理におけるシュウ酸含量の変化と中学校家庭科教材への活用」(西川和孝、川本実穂、田中章江)
一般社団法人 徳島県薬剤師会「尿路結石症と薬について」
取材・文・撮影=東京おでんだね