アンティークに囲まれた店内と風が吹き抜けるテラス席
渋谷駅C2出口から徒歩6分。坂を登って桜丘エリアに入ると、静かで落ち着いた雰囲気に。この辺りは駅前とは違ってまだ開発が進んでいないのだろう、昔ながらの細く入りくんだ路地には年季の入ったアパートや民家が残り、それらの庭木から季節の移り変わりを感じた。そんな短い散歩を楽しみながら『桜丘カフェ』にたどり着く。ここは宇田川町にある『宇田川カフェ』の姉妹店で2009年にオープン。広報の佐々木祐穂さんに話を聞いた。
「このエリアはビジネス街で再開発からも逃れているし、意外と働いている人が多いのに飲食店が少ないというのがオーナーの中にあったようです。地元の人たちが利用しやすいカフェを作ろうということでオープンしました」と語る。
店内のイスや照明家具はアンティークで揃えていて、インテリアの経年変化がそこはかとなく居心地の良さを醸し出している。「実家みたいな、ずっとそこにあるみたいな形をそのまま表現したいんですよね。だから必要に応じてあえてエイジングを施したりもしています」という佐々木さんの話を聞いて居心地の良さはそこにあったのか、と理解した。
次はテラス席を案内してもらった。「ここは風が吹き抜けて最高なんです。目の前に桜の木があるのでお花見もできますよ」という佐々木さんと一緒に、しばらくまどろんでしまいそうになる。
あとでこの並びに宇宙桜があるのを知った。2008年、若田光一さんとともに宇宙を航行した桜の種を植樹したそうで、立派に花を咲かせていた。隣にある大和田文化センターにはプラネタリウムや大きな図書館があったりして面白いエリアなのかも。
「このテラスで長くヤギを飼ってたんですよ。ヤギの平均寿命は12歳くらいなんですけど2022年に15歳になって。高齢なのでそろそろ引退を…と思っていたら、里親さんが見つかったんです。すごくみなさんにかわいがってもらってたんですけど、今は浜松で元気で暮らしています」とのこと。残念、ヤギちゃんに会いたかったな〜!
揚げたてアツアツのチキンに自家製ソースがたっぷりかかったチキン南蛮
では、ランチをいただきましょう。料理全般はカジュアルなイタリアンがベースになっていて、ポークジンジャー、キーマカレーなど宇田川カフェ系列の伝統的なメニューも食べられる。佐々木さんによれば「週末は平日よりもちょっとリッチな感じで、昼飲みにも対応しています」という。
チキン南蛮タルタルソース1200円(平日のみ)は系列店にはないここだけのメニューというので食べてみたくなった。
まずは揚げたてのチキン南蛮からガブリ。甘酸っぱくてコクのある黒酢ソースと、みじん切りのタマネギ、ピクルス、ゆで卵がたっぷり入った甘めのタルタルソースがジューシーな鶏肉に合っている。ひと口では食べきれない大きさもイイ!
ふっくらと粒だちのいいご飯がどんどんすすむ。よっ、飯ドロボウ! と隣でシンプルなコンソメスープがはやし立てる。自家製ドレッシングがかかったシャキシャキのサラダに、クリーミーなマッシュポテトも十分満足。最後は外の風を感じながらトロリとした口当たりのいいコーヒー・宇田川ブレンドを満喫した。ごちそうさまでした。
仕事場としても、リラックススペースとしても使える多機能なカフェ
ビジネス街でありながら、住宅街でもあるこのエリア。このカフェはそんな街の特性にぴったりハマっているなと思った。「普通のカフェのようにご飯やお茶を楽しむだけじゃなくて、コワーキングスペースとして利用したり、商談などビジネスの場としても使われているのを見かけます」と、佐々木さん。
「住宅街でもあるので、仕事を終えて帰ってきた時に、ウチのように遅くまで開いてるお店っていうのが重宝されていると思いますね。または食事を終えた方が、ちょっと1杯飲みながら読書していたりとか。たくさんの使い方をそれぞれお客様がしてくださっています」という。佐々木さん自身も個人的にこのカフェを頻繁に利用しているそう。
『宇田川カフェ』で人気の宇田川ブレンドや宇田川チーズケーキがここでも味わえる。「デザートは店内で仕込んでいるんですよ」というので、今度はカフェタイムに仕事しに来ようかな。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢