グッモー! 井上順です。

前回、小学生の頃に訪れた東急文化会館の「天文博物館五島プラネタリウム」のことに少しふれた。

懐かしく思い出しているうちに、「そうだ、渋谷には新しいプラネタリウム施設があるではないか」と思い立ち、さっそく『コスモプラネタリウム渋谷』を訪ねてみた。

渋谷駅から徒歩5分、気軽に立ち寄れるプラネタリウム

『コスモプラネタリウム渋谷』は、渋谷区文化総合センター大和田という渋谷区の施設の中にある。渋谷駅から行くなら西口歩道橋を桜丘方面へ。屋上に大きなドームのある建物が見えてくる。その銀色に輝くドームがプラネタリウムの目印だ。

渋谷区文化総合センター大和田の屋上にある大きなドームの中がプラネタリウム。
渋谷区文化総合センター大和田の屋上にある大きなドームの中がプラネタリウム。

渋谷駅から歩いて5分ほど。渋谷区文化総合センター大和田に着いたら、エレベーターで最上階の12階へ。ロビーの券売機で観覧券を購入する。大人600円(小中学生300円)とお手頃な料金だ。

観覧券は、ロビーの券売機のほか、『コスモプラネタリウム渋谷』の公式Webサイト(https://shibu-cul.jp/planetarium)でも約1週間前から購入することができる。

ドーム内に入れるのは投影開始時刻の5分前からなので、それまでロビーで待つ。

ロビーの壁面には12星座のチョークアートが描かれているので、自分の星座を見つけて記念撮影するのもおすすめだ。宇宙やプラネタリウムに関する資料やアート作品などの展示コーナーもある。

座席は120席。すべて自由席なので、好みの席を確保したいときは早めに並んだほうがよさそうだ。

「ハイブリッド式プラネタリウムシステム」による大迫力のプラネタリウムを鑑賞

今回、僕が鑑賞したのは『プラネタリウム版 宇宙の話をしよう ~Tales of the Cosmic Voyage~』という40分間のプログラム。

前半は15分間の星空解説。

その日の夜に渋谷から見える星空がドーム内に映し出され、星や星座の見つけ方などを解説員が生で解説してくれる。実際の渋谷の夜空は、街が明るすぎて星はあまり見えないけれど、街の灯りを全部消すとこんなにたくさんの星が見えるんだね。

座席はリクライニングシートなので、寝転んで夜空を見上げているようなリラックスした感じで楽しめる。これがデートだったら、間違いなくロマンチックな雰囲気になりそうだ(笑)。

そして後半は25分間の映像番組。

児童書『宇宙の話をしよう』のプラネタリウム版で、好奇心旺盛な女の子ミーちゃんとお父さん(NASA の技術者)の会話を通して、ロケット開発の歴史などがわかりやすく描かれている。子どもから大人まで楽しめそうな内容だ。

ロビーの展示スペース。この日は『宇宙の話をしよう』の原画などが展示されていた(2023年6月下旬頃まで展示予定)。
ロビーの展示スペース。この日は『宇宙の話をしよう』の原画などが展示されていた(2023年6月下旬頃まで展示予定)。

この臨場感たっぷりのプラネタリウム空間をつくり出しているのは、星を映し出す「光学式プラネタリウム投影機」と、星座絵や宇宙の天体、自然現象までをも再現する「デジタルプラネタリウム」、この両方を兼ね備えた「ハイブリッド式プラネタリウムシステム」だ。

プログラム前半の星空解説では、「光学式」の投影機から出る光をドーム内に当てて自然の中の満天の星を再現。直径17mのドームに、26万5000個もの星を映し出すことができるそうだ。

これが星の色や明るさ、瞬きまで本物みたいにリアルで美しい。

後半の映像番組は、複数のプロジェクターで映像をドーム内に投映する「デジタル式」。2022年にリニューアルされたばかりという最新の設備で、ドームのスクリーン全天周(360度)に映し出される映像は迫力満点だ。

まるで宇宙を猛スピードで飛びまわっているようなスリルと臨場感を味わうことができた。

8人の解説員による個性豊かな星空解説

また、すべてのプログラムを星空解説員による生の解説で楽しめるのも『コスモプラネタリウム渋谷』の特徴だ。録音されたものではなく、その日の星空に合わせ、ときにはアドリブも盛り込まれた一期一会の解説を聞くことができる。

僕が鑑賞したプログラムを解説してくれたのは、田畑勇一さん。なんと、吉本興業に所属するお笑い芸人でもあるという。

プラネタリウム投影機の前で、星空解説員の田畑勇一さんと。
プラネタリウム投影機の前で、星空解説員の田畑勇一さんと。

「以前やっていた『田畑藤本』というコンビが解散したときに、解説員を募集していると知って応募したら採用されました。小さい頃から宇宙や天文に興味があって、プラネタリウムも大好きだったんです」と田畑さん。

この日の解説は真面目な雰囲気だったけれど、お笑い要素をふんだんに盛り込んだ独自のプログラムも企画しているそうだ。

「小さなお子さんから天文に関する質問をされたりすると、すごく嬉しいです。星や宇宙をもっと好きになってもらえるよう、最新の天文学の情報なども交えて楽しく伝えていきたい」とのこと。

プラネタリウムを見て宇宙に興味をもった子供たちの中から、将来、宇宙飛行士が誕生するかもしれないね。

『コスモプラネタリウム渋谷』に在籍している解説員は全部で8人(2023年3月現在)。同じプログラムでも解説員によって紹介の仕方や雰囲気がかなり違うという。

ほかの方の解説も聞いてみたくなるなあ。

当日、時間帯ごとに誰が解説を担当するかは、『コスモプラネタリウム渋谷』の公式Twitter で確認することができる。

『コスモプラネタリウム渋谷』の開館時間は夜8時まで(最終投影開始は夜7時から)。夜まで生解説つきプラネタリウムが見られる施設は都内でも珍しいそうだ。

会社帰りにプラネタリウムに立ち寄って、満天の星に癒されるのもいいかもしれないね。

66年ぶりに「五島プラネタリウム」時代の投影機と再会!

プラネタリウム鑑賞後は、同センターの2階にもぜひ立ち寄ってみてほしい。

かつて東急文化会館の「天文博物館五島プラネタリウム」で活躍していた投影機(西ドイツカール・ツァイス社製のプラネタリウム投影機IV型1号機)が展示されているのだ。

2001年(平成13)に五島プラネタリウムが閉館したあと、投影機は渋谷区に寄贈され、ここに展示保存されることになったとのこと。

五島プラネタリウム時代からのファンの方々がボランティアで定期的に掃除をしてくれているそうで、今でも使えるのではないかと思うほどとてもきれいな状態だ。引退後も大事にされているんだね。

再会した投影機に、思わず「66年前、見に来たんだよ! 長生きしてるねえ……」と話しかけた。
再会した投影機に、思わず「66年前、見に来たんだよ! 長生きしてるねえ……」と話しかけた。

1957年(昭和32)4月に開館した五島プラネタリウム。

有楽町にあった「毎日天文館(東日天文館)」が戦時中の空襲で焼失して以来、東京にはプラネタリウムがなかったから、当時は「珍しいものが渋谷にできた!」とかなり話題を集めていた。

僕が見に行ったのは、開館してすぐの頃だったと記憶している。小学5年生のときの学校行事で、クラス全員で見学に訪れたのだ。

僕はこの大きな投影機を見ただけでビックリ!

しかも、プラネタリウムが始まったら星がたくさん出て来たので、「何これ? どうなってるの?」と不思議で仕方なかった。あのインパクトは忘れられない。

当時は小学生で体も小さかったから投影機が余計に大きく見えたのかもしれない、と思っていたけれど、今見ても大きい。これに比べると、最新の投影機はすごくコンパクト。それだけ技術が進化したってことだね。

旧大和田小学校校歴展示室

同センター2階には、もう一か所立ち寄ってみたかった場所がある。

「旧大和田小学校校歴展示室」だ。今回訪れた渋谷区文化総合センター大和田は、かつてあった「渋谷区立大和田小学校」の跡地に建っている。実は、その小学校は僕の母校。

大和田小学校は1997年(平成9)に統廃合でなくなってしまったのだが、ここに「旧大和田小学校校歴展示室」が設けられており、写真や卒業文集、校旗、校章など、貴重な資料がたくさん展示してある。1907年(明治40)の創立から廃校まで、104年間の歴史をふりかえることができる。

「旧大和田小学校校歴展示室」で貴重な資料を見学。
「旧大和田小学校校歴展示室」で貴重な資料を見学。

小学校は僕が卒業してすぐに鉄筋校舎に建て替えられた記憶がある。木造校舎の頃の写真が懐かしい。

クラス担任は千葉先生。ものすごく厳しい女の先生で、僕もよく怒られた。今でも同級生仲間と集まると、いつも「先生、怖かったよね」という話で盛り上がる。

そういえば、プラネタリウムで星座を見ていて思い出したのだが、千葉先生のお仕置きは、「そこに立ってなさい!」ではなく、「そこに星座してなさい!」。いや、「そこに正座してなさい!」だった(笑)。

そんな少年時代を懐かしく思い出した、66年ぶりのプラネタリウム体験。

いくつになっても、心は星のようにきらめいていたいね。

住所:東京都渋谷区桜丘町23-21/営業時間:12:00~20:00(土・日・祝は10:00~20:00)/定休日:月(祝の場合は翌平日)/アクセス:JR・私鉄・地下鉄渋谷駅から徒歩5分

撮影=丹治 環 構成=丹治亮子