受賞経験もある真鯛ラーメン
オフィスビルでひしめきあい、サラリーマンで溢れかえる錦糸町。錦糸町のラーメン屋さんを検索すれば、たちまちたくさんのお店が表示される。
今回取材したのは、過去に食べログラーメン百名店に数度受賞経験もある『真鯛らーめん 麺魚 本店』。錦糸町駅南口から徒歩6分、歩いていると見えてきたビルの一角にモダンなデザインの看板が目印の目的地を発見。
店内に入ると、入り口には数々の賞が飾られている。
入り口左手に食券機があり、今回は店主おすすめの真鯛らーめん 雑炊セット1150円を頼むことにした。食券機では、電子マネーが使えるのも普段現金を持ち歩かない筆者には嬉しいポイント。
席について食券を渡すと店主の松本さんが早速ラーメンを作り始めてくれた。店内は60~70年代の海外ロックバンドのBGMが軽快に流れていて、自然とラーメンを待つ心も弾む。
店主がラーメンを作っていると、店内は鯛をバーナーで炙った香ばしいにおいに包まれる。空腹も限界に達しそうなところでらーめんと雑炊が登場した。
鯛が香るラーメンに感動
「雑炊はらーめんと同時に召し上がっても、最後に召し上がっても、お好みのタイミングでスープをかけて食べてください」と笑って優しく説明してくれた松本さん。
雑炊は最後に食べることに決めて、まずはスープからいただいてみる。あぶった鯛の香ばしさが一口でどっと押し寄せる。「このラーメンすごい!」が筆者の最初の感想だ。
その次に麺を一口。ちょうどいい細さと歯ごたえでスープとの絡まりもよい。レアチャーシューもスープとの相性抜群。上に乗ったゆずがアクセントになっており、きりっとした味わいながら、脂っぽさの主張がないからスルスルと麺が進む。
麺を完食し、まだ熱いままのスープをご飯にかけて雑炊をいただく。初めて食べたのに、そうそうこの味とうなずいてしまうような、鯛が上品に香るやさしい味わいの雑炊だ。
こだわりぬいたオンリーワンの一杯
このお店の最大の売りとなっている、うまみがギュッと詰まった真鯛スープ。聞けば、なんとこのスープは鯛と水しか使っていないそう。
「鯛の骨を100%使用しています。毎日その日に卸した鮮魚の骨のみを使用しているところは、ほかの店には真似できないと思います」と松本さんは話す。
魚介ベースのラーメンでも、鶏ガラや野菜など他のものが混ざっている場合も多く、100%鯛を使用している店は珍しい。
鯛の骨100kgから作るスープはわずか200杯分とのこと。骨を100kg取るだけでも大変なのに、さらに新鮮な魚を使用して一からスープを作りだしているなんて、スープがおいしい理由が納得できる。
脂も、鯛のスープを作る段階で出てくる上澄みの脂を使用しており、透き通った見た目でサラサラしている。豚などの動物系の脂ではなく鯛を使用しているため、コラーゲンなども豊富に含んでいるのだとか。
“おいしい”を作るための隠された手間
食べているなかで気がついたのは、このラーメンの香りが強いところだ。スープの中には、先ほど店内に香りが広がっていた炙られた鯛のほぐれ身が入っている。低温調理されたレアチャーシューは桜で燻しているそうで、燻製の香りがただよう。
聞くところによると一杯のラーメンを作る際に、各工程で香りをつけているそう。「全粒粉の麺の香り、鯛のほぐれ身は軽くあぶって香りを出し、レアチャーシューにはスモークの香りを移し、ゆずの香りを最後に乗せて爽やかにする。この香りの4重奏を織り交ぜて一杯のラーメンが出来上がる」と松本さん。
錦糸町を歩けばたくさんのラーメン店に出会えるが、健康に気を付けている人や魚介ラーメンが好きな方にはぜひ100%、鯛で作ったこの一杯を味わっていただきたい。
取材・文・撮影=内田陽