赤坂見附駅で待ち合わせて一緒に歩く。
日枝神社は高台にある。見上げる感じだ。
まずは黒い鳥居がある参道にたどり着く。
「なんでこの鳥居黒いんだろうね。」
「確かに。」
「あっ!お花咲いてるよ!」
……この他愛のなさが、オレのシアワセだ。
もう少し歩くと今度は白い鳥居がある。
「日枝神社」といえばここを思い浮かべる人も多いと思うが実はここは裏参道らしい。ちなみに、黒い鳥居も白い鳥居も共通して形が独特というか、見慣れていない形なのは「山王鳥居」という特殊なものなんだとか。
日枝神社は創建約800年の由緒正しい神社で縁結びや仕事運、商売繁盛などのご利益があるとたくさんの人が訪れている。
さあ、オレたちも行ってみよう!!
「えっ!!!」
「どうしたの?」
「神社にエスカレーター!!!」
「確かに衝撃だよね(笑)」
「雨の時とか大丈夫なのかな?」
なんだかエルボーがびっくりしてる間に、エレベーターに乗ったオレたちは南神門に着いた。
中に入ると真横にドドーンとプルデンシャルタワー。もとはホテルニュージャパン。その跡地に立つ。
もちろん赤坂界隈の用途地域は商業地域で、容積率もたっぷり認められているから、まぁりっぱな繁華街となっているわけで、そのなかに、秘めやかに(でもないか笑)由緒正しい神社仏閣もある。
ちなみに用途地域だが、ちょっと復習だ。用途地域って、全部で何種類ありましたっけ?
住居系が8つ、商業系が2つ、工業系が3つでしたね。
(住居系)
第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域
田園住居地域
(商業系)
近隣商業地域
商業地域
(工業系)
準工業地域
工業地域
工業専用地域
用途地域というくらいだから、それぞれの地域で建てていい建築物の種類(用途)が決まっていて、たとえば「第一種低層住居専用地域」だったら、読んで字の通り、大規模なディスカウントストアとかは建築できないし、「工業専用地域」だったらこんどは住宅は建築禁止とか。
あと建築物の規模も規制している。都市計画として建蔽率と容積率を定めて、たとえば商業地域だったら建蔽率も容積率も大きい数値になっているので、ドドーンと立派な建物をたてることができるようになっている。
そんでね。
ワンポイント宅建。
神社などの建物は、どの用途地域で建築できるのでしょうか。
逆に言うと、建築できない用途地域はどうでしょう。
あるとしたたら、どこだと思いますか?
宅建試験でも出題されたりするんだよね。
そこで例題。令和4年度の宅建試験。
【問18】次の記述のうち、建築基準法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。
選択肢のひとつはこうだった。
第一種低層住居専用地域内においては、神社、寺院、教会を建築することはできない。
さぁみなさん、○でしょうか、×でしょうか。
ここで役に立つのが、いままでの「散歩」ですよね。
散歩してきた街並みや街角を思い出してみると……。
閑静な住宅街にも神社ってあるよね。教会もあったな確か。
そういえばお墓は住宅街にあった。
そんなシーンが思い浮かんだあなた。そうです、なのでこの選択肢は「○」。
ちなににですね、神社、寺院、教会は、どの用途地域にも建築できます。
ま、そりゃそうですよね。
日枝神社にいるのは狛犬ではないのだ
日枝神社は商業地域にあるけど、やはり台地の上にあるせいか、街の喧騒は聞こえてこない。そんな敷地にエルボーといっしょにいるオレ。
くつろぐな〜。このままなにもなければ、シアワセだな〜。
あ、とエルボーは指をさす。
あれって、猿?
そう、日枝神社には狛犬ではなくて狛猿がいる。神猿という猿が神使とされていて、日枝神社には夫婦(めおとと読んだほうがそれらしいかな)の狛猿がいる。
子猿を抱いた母猿には家内安全・子授け・安産を、父猿には商売繁盛・社運隆昌などを願う人たちが、訪れている。
ね。私たちも願ってみようよ。
キター、キタキタキタキターー!!!!
子授けが。
そっか、エルボーは遠回しに。
オッケーだよ。
今宵ね。
ドキドキだ。
エルボーの手を握ろうとしたら、あれ?エルボーは父猿のほうにいるではないか!!!
エルボーは父猿に願う。恋愛よりも仕事らしい。
台地にあるということは……
赤坂の繁華街から日枝神社に登るルートとして、南門のエスカレーターがあるけど、その裏手といったらいいかな、けっこうすごい階段がある。山王男坂というらしい。
台地上にあるということは、その縁辺部はものすごい崖となっていることが多く、となると千代田区のこの界隈、お察しのとおり「土砂災害警戒区域」が指定されている。
土砂災害警戒区域なんて聞くと、都会ではない山麓部のほうをイメージしちゃう人もいるかもしれないが、じつは都内に何箇所も指定されている。
ちなみに千代田区の土砂災害警戒区域は41ヶ所(2019年時点)。
えええーーそんなにあんの〜!!!
……という感じでしょうか。
土砂災害警戒区域に指定されていると、その取引の際、我ら宅地建物取引士は事前の重要事項説明として「ここは土砂災害警戒区域ですよ」と告げなければならず、となると買おうかなとか借りようかなとしているほうは、まさに「警戒」する。
なので資産価値的にみてもやっぱり下がる。まぁでも危ない区域には住みたくないもんね。
でもね。
意外とそのあたりを無頓着な人も多くて、「安いから」と飛びつくと、痛い目に合うかも。
いま住んでいるところの安全性はいかがですか?
あと、そうだな、こっちのほうがだいじかな。
いま自分が住んでいるところの安全性だね。
もちろん100%ベストな不動産なんてないから、なにかどっかしらなんかがあるんだけど、特に災害に対してのリスクはどれくらいなのか。なければいいんだけど万一のときがあるかもしれないから、こういうときにこうなる危険があるというくらいは知っておいたほうががいいかなと。
まぁそんなこんなで、みなさんも、いま自分が住んでいる界隈の災害に対する安全性について、試しにちょっと確認してみるのもいいかも。
正常性バイアスっていうんだっけ。
そんなふうにはならないよと思い込みたいんだけど、でも忍び寄るハザードに対しての感度はちょい上げといてみっか。地元自治体のハザードマップというのがあるから、まずそれを見てみよう。
土砂災害警戒区域のハザードマップのほか、水害のハザードマップもあるから、もしよかったぜひ。
愛のハザードマップ!
そうこうしているうちに、トワイライトタイム。
いまのオレは、おかげさまでこうしてエルボーと落ち着いた日々を過ごしている。
ほんとにシアワセだ。自分でいうのもなんだが、オレたちの愛は盤石かもしれない。落ち着いたら一緒にどこに住もうかな〜。
日が落ちてきたら、肌寒くなった。そろそろ本格的な冬だ。
エルボーとあったかい鍋とか食べたいな。
寄り添おう。
オレたちのハニーでラブラブな新居で。
こないだの渋谷区の松濤あたりはちょっと無理っぽいけどな。
なのでエルボーに聞いた。
ね、オレたち、どこに住もうか。
……。
エルボーの反応がない。
ね、オレたち、どこに住もうか。
……。
……。
……。
……。
は、は、は、はざーーーどぉーーーーーー!!!!!!!!!
文・撮影=宅建ダイナマイト執筆人