木村荘八《新宿駅》1935年、個人蔵
明治5年(1872)、新橋-横浜間で開業した日本の鉄道。奇しくも「美術」という言葉がこの国で初めて登場したのも、実は同時期のことなのだ。鉄道と美術は、日本の近代化の流れに寄り添ったり、翻弄されたりしながらも、共に今日まで150年の時を歩み続けてきた。
そんな鉄道開業150周年を記念した企画展「鉄道と美術150年」が、東京ステーションギャラリーにて、来年1月9日まで開催中。本展では、鉄道と美術150年の様相を、鉄道史や美術史はもちろんのこと、政治、社会、戦争、風俗など、さまざまな視点から読み解き、両者の関係を明らかにしていく。日本全国約40カ所から集めた「鉄道美術」の名作、話題作、問題作約150件が一堂に揃う、大迫力の展覧会だ。
平田実《「路上歩行展」と通勤者たち(中村宏・立石紘一作): 東京駅~京橋かいわい》1964年(プリント2016年)、東京ステーションギャラリー
鉄道開業前後には、多くの画家たちがこぞって汽車や駅の姿を描いた。美術家たちの創作意欲を掻き立て、また移動手段として行動範囲をも広げた鉄道。やがて現代にかけて、彼らはさらに自由な発想で鉄道を描き、アートの舞台としてパフォーマンスを行うこともしばしば。「鉄道は美術を触発し、美術は鉄道を挑発する」。そんなスリリングな関係性こそが、本展の大きな見どころとなる。
河鍋暁斎『地獄極楽めぐり図』より「極楽行きの汽車」1872年、静嘉堂文庫美術館 画像提供:静嘉堂文庫美術館/DNPartcom *展示期間:~11/6
展示される150作品には、アメリカから安政元年(1854)に贈られた蒸気機関車の模型を表した画巻、日比野克彦が2021年にデザインした電車のヘッドマーク、近年発見され話題となった鉄道構造物「高輪築堤」を描いた小林清親の《高輪牛町朧月景》などなど、近現代の傑作が勢揃い。美術を介して鉄道史を振り返るとき、どのような「歴史」が見えてくるのか? ぜひ展覧会に足を運んで、その答えを解き明かしてみてほしい。
《ディスカバー・ジャパン no.4 》 1971年、鉄道博物館
東京ステーションギャラリー 「鉄道と美術の150年」
2023年1月9日まで。会期中一部展示替えあり。JR東京駅丸の内北口下車すぐ。10~18時(金は~20時。入館は閉館の30分前まで)、月休(会期中は12月29日~1月1日は休、1月2日は開館)。一般1400円。千代田区丸の内1-9-1 ☎03・3212・2485
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1/営業時間:10:00〜17:30(金は〜19:30)/定休日:月(祝の場合は翌)/アクセス:JR東京駅直結