今日はオレたちの新居探し。まずは渋谷駅で待ち合わせだ。

まさに喧騒。人が多すぎる。そんな喧騒のなか、駅方面からエルボーがやってきた。

「お待たせー!!」

いい。

とってもいい。

彼女を見ているだけでオレは悶絶だ。

世界に名だたる渋谷のスクランブル交差点。
世界に名だたる渋谷のスクランブル交差点。

今日もいい感じだぞ。

「さっき交差点で信号待ちしてたら医療脱毛のモニターになりませんかって声かけられたんだけど、そんな毛深そうに見える?(笑)」

そんな話から今日のデートは始まった。渋谷、本当にいろんな人が行き交うな〜。人を見ているだけで楽しくなる街だ。

いちばん見ていて楽しくなる人は、オレの彼女、エルボーだけどね。

さあ今回のデートを始めよう!!

渋谷はいまもまだ、再開発の真っ最中。

「なんか新しい建物、ここも建ててるね!!」

「常に進化中の街」というだけあって、その進化のなかには、流行だったりサブカル的な文化だったりと、いろんな意味が含まれると思うけど、いまはまさに、物理的に進化中。

ド派手な再開発が進行中で、いろんなとこで工事中。

「たまに渋谷にいくと迷っちゃう」と言う人多し。
「たまに渋谷にいくと迷っちゃう」と言う人多し。

これはオレの個人的な感想だが、いちばんの「物理的な進化」としては東京メトロの銀座線かなー。ご存知のとおり、銀座線は昭和2年(1927)に浅草〜上野間で営業を開始した日本で最初の“本格的”な地下鉄で、今の浅草〜渋谷の全線開業となったのが昭和15年(1940)。

古いな〜www

なので、銀座線の渋谷駅は、おそらくたぶん、当時の雰囲気もあったのかな、ボロいなあーと思っていたのだが、まさにいま作り直しの最中で、昨今はこんなコジャレた感じの改札ができたりして「物理的な進化」を遂げている。

でね。今回の宅建デートのメインは、もうひとつの渋谷の魅力。「喧騒と静寂が混じり合う」の静寂のほう。

そうなのだ。オレはエルボーと、落ち着いた静寂のなか、これからずっと愛し合うのだ。

もういちど言っておこう。悶絶。

渋谷区の都市計画を見てみよう

ところで、渋谷区の「静寂」はどこにある?

駅前から道玄坂方面へ。 もちろんこのへんはまだ人が多い。
駅前から道玄坂方面へ。 もちろんこのへんはまだ人が多い。
恋文横丁。戦争当時、女性たちは日本配属の米兵宛のラブレターを代筆屋に頼んだ。
恋文横丁。戦争当時、女性たちは日本配属の米兵宛のラブレターを代筆屋に頼んだ。

ところがね、にぎやかな道玄坂や恋文横丁界隈から少し歩くだけで、なんといきなり、雰囲気がガラッとかわる。

ようこそ。もう一つの渋谷へ。

さあお待ちかね。ここからがオレのお気に入りスポット。エルボーも気に入ってくれるはずだ。

渋谷区の都市計画図でいうと、このへんだ。

赤が「商業地域」で緑が「第一種低層住居専用地域」だ。 隣接しているでしょ、ここ。
赤が「商業地域」で緑が「第一種低層住居専用地域」だ。 隣接しているでしょ、ここ。

「商業地域」は、読んで字のとおり、商業優先のエリアで、フーゾク関連も、大規模な建築物の建築もOK。まさに都会のターミナル駅周辺の繁華街だ。

一方、「第一種低層住居専用地域」は、第一種とか低層専用とか、そんな言葉のイメージどおり、閑静な戸建て住宅街とするための都市計画だ。ここでみなさんもお気づきか思うが、そうなんですよ。商業地域と第一種低層住居専用地域は、まるで真逆な都市計画なのだ。

ふつうはどう都市計画するかというと、まずは商業地域のまわりに近隣商業地域(地元の商店街っぽい街)を配置。それからだんだんと、専用という言葉がついていない住居地域、マンションOKの中高層住居専用地域、そして、それからおまたせしましたというような感じで、まさに奥の院として「第一種低層住居専用地域」というふうになる。

現に、国土交通省が発行している「都市計画運用指針」というのがあって、そこにはこう書いてある。

P.85「用途地域の選定」(抜粋引用)「第一種低層住居専用地域などの住居専用地域と、商業地域、工業地域又は工業専用地域とは、相互に接して定めないことが望ましい。

あれ?あれあれ?もう一度、渋谷の都市計画図を見てほしい。

何度見ても隣接している。
何度見ても隣接している。

そうなんです。渋谷は、運用指針をガン無視(笑)

なんでガン無視なのかなって渋谷区に確認してみたんだけど「土地の余裕がないなかで仕方なく」というようなことだったらしい。まあ、そーだよなー。

この交差点の向こうが「第一種低層住居専用地域」だ。
この交差点の向こうが「第一種低層住居専用地域」だ。

「え?まだ交差点から10歩くらいしか歩いてないけど全然人いなくない?」「渋谷?ここ。」「なんか空気全然違うんだけど!!」

いいぞいいぞ。衝撃でエルボーがなんだかたくさん喋っている。

行ってみてください。すごいです。衝撃の静けさ(笑)
行ってみてください。すごいです。衝撃の静けさ(笑)

「ここから先どうなってるんだろ!行ってみたい!」

エルボーの瞳がキラッと光った。

東京の高級住宅街について

高級住宅街っていうと、どのへん?

……そんな問いかけをしますと、まぁだいたいこんな街が出てきます。

田園調布(大田区)
成城(世田谷区)
それから、ここ渋谷区の松濤かな。

ちなみに渋谷区は、松濤のほかもうひとつ、広尾というのもある。

東京の第一種低層住居専用地域を代表する「ザ・高級住宅街」。
東京の第一種低層住居専用地域を代表する「ザ・高級住宅街」。

いずれも第一種低層住居専用地域です。

ではいま出てきた街(第一種低層住居専用地域)の1平方メートルあたりの地価なんだけど、令和4年の公示価格で高い順に並べてみたら、はたしてどうなるでしょ!!

こうなります。

標準地番号【渋谷-5】186万円
東京都渋谷区松濤1-13-7(渋谷駅から960m)

標準地番号【渋谷-3】137万円
東京都渋谷区広尾2-12-13(広尾駅から600m)

標準地番号【大田-4】108万円
東京都大田区田園調布3−23−15(田園調布駅から280m)

標準地番号【世田谷-16】86万9,000円
東京都世田谷区成城6-32-18(成城学園前駅から550m)

たとえば、これらの街で100平方メートルの土地を手に入れようとすると……

松濤だったら1億8,600万円。
広尾だったら1億3,700万円。
田園調布だったら1億800万円。
成城だったら8,600万円。

わ、成城って安くていいかも。

……と思ってしまったあなた。金銭感覚が狂ってませんか〜笑

渋谷の家とオレの貯金額

せっかくだから、渋谷の「静寂」をたっぷり楽しんでみよう。界隈を散策する。

もう一度、申し上げます。ぜひ行ってみてください。そして味わいたまえ。

え、マジここ渋谷かよ〜\(^o^)/ってなる。すごいです。衝撃の静けさ(笑)

「なんか見たことない大きな石!!どこからどうやって持ってきたのかな。」「え、ここら辺に住んでないと入っちゃいけないとかないよね?」「私、狭い家が好き(笑)」

キラキラッと瞳を輝かせるエルボーに、「オレも狭い家が好き」とテキトーに話をあわせる。

神社があるということは古い街なのだ。
神社があるということは古い街なのだ。
建蔽率や容積率が小さい値でも、そもそも敷地が広いので建物はデカイ。
建蔽率や容積率が小さい値でも、そもそも敷地が広いので建物はデカイ。

あ、そんでね。

せっかくですから、いま出てきた渋谷区・大田区・世田谷区の令和4年の地価公示(住宅地)のデータをみてみますと。

渋谷区の住宅地(1平方メートルあたり)
平均価格:133万4,900円
最高価格:289万円(恵比寿・第二種中高層住居専用地域)
最低価格:70万9,000円

大田区の住宅地(1平方メートルあたり)
平均価格:53万2,500円
最高価格:140万円(大森・商業地域だけど住宅地として扱われている)
最低価格:39万8,000円

世田谷区の住宅地(1平方メートルあたり)
平均価格:64万600円
最高価格:118万円(三軒茶屋・第一種住居地域)
最低価格:27万4,000円

うーん。なんだか、いろんなものに圧倒されたので公園で一休みだ。

大きな池もあった。 
大きな池もあった。 
ここはここで異空間。こういう公園が「静寂」に一役買っている。
ここはここで異空間。こういう公園が「静寂」に一役買っている。

ふー。エルボーと深呼吸。空気が美味しいね。

エルボーの横顔を見る。静寂の美しさだ。

「ねぇ……」

……なに?

その美しさをたたえながら、エルボーはつぶやいた。

ここで家を買って、結婚しよう。

……あ、あ、あ???

「2億円くらい貯金あるでしょ?」

……あ、あ、あ???

オレは静かに悶絶した。

カミツキガメに注意だ!
カミツキガメに注意だ!

取材・文・撮影=宅建ダイナマイト執筆人