古きよき鉄道風情を見学ツアーで体感

東海道本線・新幹線と接続する掛川駅。天浜線はここを起点に内陸を進み、その後は浜名湖に寄り添いながら新所原駅までを結ぶ67.7kmの非電化路線だ。戦時色が濃い昭和初期、東海道本線の迂回路として建設された国鉄二俣線が前身で、1987年に第三セクターとして引き継がれた。多くの駅舎が国の有形文化財に登録されるなど、貴重な鉄道遺産を有することでも知られる。なかでも天竜浜名湖鉄道の本社が置かれた天竜二俣駅は〝現役文化財〞の宝庫。「転車台&鉄道歴史館見学ツアー」は、全国的にも希少な鉄道遺産を目の当たりにできる絶好の機会として人気を博している。

集合場所の駅舎も登録有形文化財の一つ。ガイドの案内を耳に、蒸気機関車運行当時の面影を伝える高架貯水槽や洗濯場・浴場跡を過ぎた先に見えてくるのが、ひときわ目を引く転車台だ。ほどなくして扇形車庫から出てきた車両が転車台の上でくるり。カメラを持つ手にも思わず力が入る。

転車台は蒸気機関車を進行方向に向けるための設備。可動するものは全国的にも貴重。
転車台は蒸気機関車を進行方向に向けるための設備。可動するものは全国的にも貴重。

扇形車庫の一角にあり、国鉄二俣線で使われていた道具などを集めた鉄道歴史館は展示内容を見直し、より親しみやすい施設として今年10月1日にリニューアルされるとか。ますます天浜線から目が離せない。

天竜浜名湖鉄道 鉄道歴史館

国鉄時代の天竜二俣駅を表したジオラマ。
国鉄時代の天竜二俣駅を表したジオラマ。

鉄道歴史館には国鉄二俣線で使われた日付印字機や通票閉塞器、硬券用はさみなどのほか、往時をしのぶジオラマを展示。歴史に思いをはせ、タイムスリップした気分になること請け合いだ。

硬券用のはさみ。
硬券用のはさみ。
日付印字機。
日付印字機。
戦時中の標示。
戦時中の標示。
通票閉塞器。
通票閉塞器。

天竜浜名湖鉄道天竜二俣駅 転車台&鉄道歴史館見学ツアー

■13時50分~(土・日・祝は10時50分~も。1回約40分)
■毎日開催。
■600円、予約不要(駅待合室集合)
■浜松市天竜区二俣町阿蔵114-2
■☎053-925-2276(天竜浜名湖鉄道株式会社 営業課)
■ツアー詳細はこちら

立ち寄るべし! 周辺 & 沿線よりみちポイント

のどかな里山をすり抜け、気づけば浜名湖畔をガタンゴトン。
気の向くまま、ふらりと途中下車するのも列車旅の魅力だ。
天竜二俣駅ではレンタサイクルで気軽に周辺探訪を楽しめる。

天浜社長直筆「鉄印」(天竜二俣駅)

鉄道ファンならずとも 思わず欲しくなる

鉄道版「御朱印」の「鉄印」。第三セクター鉄道等協議会などが中心となった企画で、乗車券を提示し記帳料(300円~)を支払
えば、指定の鉄印帳「2200~円」に「鉄印」をもらえる趣向だ。

受け付けは天竜二俣駅売店(9 ~ 16時)で、都合が合えば松井宜正社長自ら鉄印帳に「鉄印」を書き入れてくれる(500円)。

吉野屋精肉店(天竜二俣駅)

職人の技と信頼に培われた「天竜ハム」

丁寧な仕事ぶりが光る町のお肉屋さん。昔ながらの手作り・自家製にこだわった「天竜ハム」は定番のプレスハム、ロースハム
が根強い人気を誇る。豚バラ肉のベーコンはやや強めの塩加減ながら、とろけるような舌触りで、生食でもペロリ。

DATA_9 ~ 18時、日休。
浜松市天竜区二俣町二俣1147 ☎053-925-2003

天竜 山の市(天竜二俣駅)

JA 遠州中央直営の 新鮮農産物直売所

写真提供=JA遠州中央 天竜営農センター
写真提供=JA遠州中央 天竜営農センター

二俣川に面して立つ農産物直売所で、弧を描いた屋根が目印。JA遠州中央が運営するだけあり、近隣の旬の農産物や山で採れたばかりの食材が所狭しと並ぶ。秋口は肉厚で食べごたえ十分の生しいたけも外せない。香りの高さで評判の天竜茶も多く揃う。

DATA_9 ~ 17時、月休(祝の場合は不定休)。
浜松市天竜区二俣町二俣199-1  ☎︎053-925-8010

浜名梱包輸送 シルクロード・ ミュージアム(上野部駅)

築約230 年の古民家を活用した私設美術館

地元出身の館長が一代で集めたシルクロード関連の膨大なコレクションを中心に展示。紀元前数千年作の土器から仏教美術・像に至るまで、悠久の歴史に身を委ね、時には展示物に触れながら、心ゆくまで鑑賞できる。

DATA_入館料900円。9時30分~ 17時、月休(祝の場合は翌火休)。
磐田市上野部888 ☎0539-63-5050

ユリカモメが舞う駅(浜名湖佐久米駅)

冬の使者が列車の前後を飛び交う

写真提供=天竜浜名湖鉄道
写真提供=天竜浜名湖鉄道

浜名湖の北端に面した浜名湖佐さくめ久米駅。単式ホームの無人駅で、ふだんはひっそりとしているが、冬ならではのお楽しみがユリカモメとの遭遇だ。カムチャッカ半島などから渡ってきたとされ、飛行距離は3000km以上とか。例年11月上旬から3月下旬まで越冬のため姿を見せる。

DATA_浜松市北区三ヶ日町佐久米725-9

長坂養蜂場三ヶ日本店(奥浜名湖駅)

はちみつに潜む魅力を浜名湖のほとりで発信

愛用者20万人を超える人気No.1のオリジナルブレンド「二代目の蜂蜜」や「はちみつソフトクリーム」など、こだわり抜いた商品がズラリ。マスコットキャラクターをあしらった「ぶんぶん号」も運行中だ。

DATA_9時30分~ 17時30分、水・第2火休(祝の場合は営業)。
浜松市北区三ヶ日町下尾奈97-1 ☎053-524-1183

ぶんぶん号。
ぶんぶん号。

取材・文・撮影=横井広海