今日くらいガマンしなくていいじゃない。背徳の至福グルメ・秋葉原発の肉汁麺

PC周辺機器の販売店が立ち並ぶことで有名な秋葉原・ジャンク通り。近年では、この辺りをラーメンの激戦区と呼ぶ。なかでも注目を集めるのは、『肉汁麺ススム 秋葉原本店』の肉汁麺だ。

蔵前橋通りからジャンク通りに入ったらすぐわかる。ド派手な看板が目印。
蔵前橋通りからジャンク通りに入ったらすぐわかる。ド派手な看板が目印。

店主の窪田さんに話を聞いた。「秋葉原はアニメやゲームなどの店がたくさんあって、自分の欲求に素直な人が多いという印象でした。お肉を山盛り、ご飯もラーメンもと、欲張りに食べたい人の心をつかみたいと思い、そこで浮かんだのはご飯がすすむラーメン“肉汁麺”というアイデアでした」。

店内はカウンターとテーブル席。平日はサラリーマン、週末は地方からもお客さんがやってくる。
店内はカウンターとテーブル席。平日はサラリーマン、週末は地方からもお客さんがやってくる。

世間はどんどんヘルシー志向になっている。脂肪や糖、塩分は“敵”だと、味気のない茹でた鶏をむさぼり、休日はジムで汗を流す……。そんな人が増えているのをみて「ちょっとムリしすぎているんじゃないの?」と店主はいう。

「それでなくても、ここ数年の環境の変化で、みんなストレスが溜まっているはずなんです。だから、『肉汁麺ススム』に来た時ぐらいは欲求を解放して、あえてやっちゃいけないことをやって欲しい。背徳の至福を満喫して“食べ過ぎ”や“糖質制限”なんか忘れちゃってください(笑)」。と、店主は筆者に肉汁麺をすすめてくれた。

濃い味つけの肉と中太麺を白いご飯に乗せて、無心にかき込むかき込む! それが肉汁麺のロマン!

肉汁麺は肉の量により値段が変わる。レベル1は130gで880円、レベル2は200gで980円、レベル3は270gで1080円、レベルMAXは800gで2080円だ。

MAXだとこんなに山盛り。とても食べ切れる自信はないが、「肉は男のロマン」のキャッチコピーに胸がざわつく。肉はロマン、ロマン……。
MAXだとこんなに山盛り。とても食べ切れる自信はないが、「肉は男のロマン」のキャッチコピーに胸がざわつく。肉はロマン、ロマン……。

悩んだ結果、肉汁麺レベル2にごはん並100円をオーダーした。店主に食券を手渡すと「ご飯は並でいいんですか? 大盛、特盛でも100円なんですよ?」という。

「あ、はい。今日のところはこのくらいで大丈夫です……」。こういうお店に来ると、たくさん食べられないことが恥ずかしいと感じてしまう筆者の悪いクセ。“今日のところは”と虚勢を張るのが精一杯で、とにかくビビっていた。

店頭に貼り出されていた肉汁麺MAXを見上げてゴクリと生唾を飲んだ。これは今年1番の大勝負になるかもしれん……。

オーダーが通り、厨房はさっそく調理にかかる。作り方を見せていただいた。

片栗粉をまぶした豚バラ肉をカラッと揚げる。
片栗粉をまぶした豚バラ肉をカラッと揚げる。
中華鍋で炒めながら揚げたバラ肉に甘辛い特製だれをからめる。
中華鍋で炒めながら揚げたバラ肉に甘辛い特製だれをからめる。
ラーメンの上に乗せ、最後はバーナーで表面をあぶり仕上げていく。
ラーメンの上に乗せ、最後はバーナーで表面をあぶり仕上げていく。

ほどなくして着丼。うわ〜、キター! さっきまでの不安はどこへやら、食欲が湧く肉と脂の香り。自分で生卵を割り卵黄を乗せて完成だ。いざゆくぞ、肉は男のロマンー!

ネギにもやし、卵はデフォルトで付いてくる。おいしそう! どんぶりは肉に覆い尽くされ麺が見えない。
ネギにもやし、卵はデフォルトで付いてくる。おいしそう! どんぶりは肉に覆い尽くされ麺が見えない。

全体をよく混ぜて食べてみた。甘辛く味つけた豚バラ肉は炙ってあるため香ばしく、もっちもちでコシがある全粒粉入りの中太麺とよく合う。あれ、思ったより重くない。

鶏と豚、カツオでとった醤油味のスープはマイルドで、肉のたれが混ざり合って甘みが強く、片栗粉がスープに溶け出してとろみもある。肉とネギ&もやしと一緒に麺を食べるといいバランスだ。味は濃いがなんだかやさしい味。

新参者にはうれしい卓上の食べ方指南。今回はどんぶり形式で食べたが、卵を小鉢に溶いて肉をつけながら食べるすき焼き風でも楽しめる。
新参者にはうれしい卓上の食べ方指南。今回はどんぶり形式で食べたが、卵を小鉢に溶いて肉をつけながら食べるすき焼き風でも楽しめる。

「どうですか、ジャンク通りのジャンク麺は! 肉だれには、柚子やショウガを入れているから、意外とあっさりでしょう? 肉や麺をご飯と一緒に食べてみてくださいね」と、店主。あ、そうだ忘れてた! 濃い味の肉とご飯のコラボがこれまたいい。卓上の漬物をパリポリと間に挟みつつ、具がなくなったらスープにご飯を入れて汗をかきながら最後まで食べ進める。

肉汁麺をご飯と一緒に食べるのが真骨頂。
肉汁麺をご飯と一緒に食べるのが真骨頂。

このときは健康とかダイエットのことなんて一瞬も頭をよぎらなかった。ただひたすらかき込む手が止まらなくなる、それが肉汁麺のロマンだったのだ。

肉汁麺はファンと一緒に育てていくメニュー

秋葉原発祥の特異な食べ物として広く認知された結果、『肉汁麺』は登録商標を取得。ファンも多く、95%は男性客という。

肉汁麺を筆頭に、肉汁つけ麺、肉汁丼、写真にはないがパーコー麺もある。
肉汁麺を筆頭に、肉汁つけ麺、肉汁丼、写真にはないがパーコー麺もある。

「『肉汁麺ススム』の味は、ご来店のお客様の直接のお声やTwitterのコメントや常連ファンのご要望などを反映させながらお客様と一緒に作っていくスタイルなんです」。売り上げや客層、地域周辺の分析などさまざまなデータをもとに、週1回のペースでミーティングを重ねているという。その結果2〜3カ月に一度、味を変えているのだそうだ。

具と麺をよく混ぜて食べよう。
具と麺をよく混ぜて食べよう。

常連はその変化が「いつものこと」だと思うかもしれないが、地方や海外に住む人にとっては久しぶりに食べた味が変わっていてショックなこともあるらしい。

「データを分析した結果から、一時期肉に片栗粉をまぶすのをやめていたときがあったんですね。ところが、ある日海外から来たお客様から、帰りぎわにスマホの翻訳画面を見せられたんですよ。そこには“あの肉を返せ!”と書いてあったんです。驚きました! それですぐに片栗粉をつけるレシピに戻しました」。

申し訳ないなと思った店主は、Twitterに手書きの謝罪文を掲載したという。

すべての人の好みに合わせるのは難しいが、店と客が一丸となって進化させていく味。だから秋葉原に来ると確認したくなる一杯。それって永遠に続くロマンじゃないか!? 秋葉原の名物ラーメンは愛とロマンにあふれていた。

 

肉汁麺をオーダーすると次回使える100gの肉増量券がついてくる!
肉汁麺をオーダーすると次回使える100gの肉増量券がついてくる!

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢