なぜか口コミサイトに情報がない

私にとってその筆頭は、スナックです。どこの街にもあるにもかかわらず、どこへ出かけてもほとんど言及されていません。ネットで発信する人達との相性がよくないんでしょうか。料理内容や価格のような箇条書きで挙げられる楽しさポイントが見えにくくて、ママの人柄やママの世界観で作った店の雰囲気、つまり可視化しにくい点が楽しさの肝だからですかね(突撃してやっと見えてきます)。でもこれはまだ、理解できます。

もうひとつあるんです。そっちはなぜネット上で素通りされてしまうのか、よくわからない――。「街の寿司屋」さんです。料理内容は寿司ですから、とってもわかりやすいのに。繁華街や大きな街の情報は口コミサイトなどでもスナックよりは見つかりますが、ふつうの住宅地に行っちゃうと、ほとんど出てこないです……。

半分家みたいで、やっぱり旨い

言うまでもないですが、どこのお店の寿司も旨い。店主はちゃんと修業をした職人さんで、地元で長年のれんを掲げているわけですから、常連さんたちに愛されています。小上がりで赤ちゃん連れの家族が食事していたり、カウンターで親父さんたちが一杯やっていたり。そう、酒がゆっくりのめるのもいいですね。突き出しがいいんですよね。酢の物なんかでも魚介が上手に使ってあります。バカ舌を自認していますがそれでも「やっぱ違うな」と思いますよ。

その日の魚で、少しおつまみ(刺し身)を出してもらって、軽く飲んだら好きなものを握ってもらう。海苔巻きなんかはつまみになるように、短く切ってくれたりと大将のやさしさもうれしいものです。最後はあつ~い、アガリ(街の寿司屋さんはお茶がまた旨い)でしめる。最高です。

昭和の終わりごろ、郷里にあった街の寿司屋さんによく行きました。というか、迎えに行ったのです。父が夕方から飲んでいるところへ母と。飲み終わるまで「好きなものを食べろ」と父に言われ、パリっと巻き立てのうに軍艦を食べたこと、忘れられません。ちょっと今では中々許されないですが小上がりに猫もいたなぁ……。半分家みたいなのが街の寿司屋さん。

その店ももうありません。もう一つ父の行きつけの店がありましたがそこも廃業されています。

回転寿司のように安くはないけれど……

家族はみんな今、回転寿司に行きます。私もむろん大好き。タッチパネルでレモンサワーとサラダ軍艦をポチっとオーダーし、一言も発せず死んだ魚の目でスマホをいじりながら過ごすプライベート寿司空間。この気安さ、そして腹いっぱい食べた後の安さ。正直これはもう、かけがえがないものになっています。

街の寿司屋さんは、そう安くはありません。それでも内容と仕事を考えると高くありません。どうでしょう、どこかの遊園地に行ったと思ってみては。フリーパスより安いですよ。そして負けないくらい楽しい瞬間が味わえると思います。のれんがゆらゆらかかっているうち、自分の街の寿司屋さんへときどき行ってみませんか。

昭和の頃みたいに、猫が刺し身の周りをうろつくことはたぶんないです。そして当時はなかったネットがいまはあります。大将がいいと言ったなら、ネットに口コミ書いてもいいんじゃないでしょうか。令和なりの街の元気の仕方、我々の手元にはまだ、あるように思います。

文・写真=フリート横田