五街道の原点、日本橋

日本の道路の起点。オレたちの起点にもなるかも。
日本の道路の起点。オレたちの起点にもなるかも。

そういえば日本橋は、江戸時代に五街道の原点として定められ、ここから日本の道の起点としての役割が始まったようだ。

そうなのだ。
偶然にも今回は日本橋。偶然という名の必然、運命を感じる。オレとエルボー、2人の道もここから、これから、始まるのだっ!!! オレたちの運命を知っていたかのような「東京散歩地図」、最高だぜ。

どんな「道」が始まるのか。さあまずはオレたちの始まり、ではなくて道路の始まり、日本国道路元標を見にいこう!!

これは日本橋の北西詰の広場に設置されているレプリカ。
これは日本橋の北西詰の広場に設置されているレプリカ。

本物はどこにあるかというと、目の前の大きな道路のセンターライン上。

これです。
これです。
撮影はかなり危険なのでおすすめしない。この写真もめっちゃ望遠にしたのを切り取ったヤツだからね。
撮影はかなり危険なのでおすすめしない。この写真もめっちゃ望遠にしたのを切り取ったヤツだからね。

日本橋といえば「道路」。

宅建ワンポイント的に言っても「道路」は重要なのだ。

「都市建設」とはなんでしょう。

ここ日本橋について、東京散歩地図にも「日本橋は、江戸時代において五街道の起点となったところで、江戸の商業・物流の拠点として栄えた」とある。ちなみに五街道とは、東海道・中山道・日光街道・奥州街道・甲州街道で、いまも重要な幹線道路だ。

そうなんですよ。道路がちゃんと整備されていないと人流や物流が滞るわけで、そうなると経済の発展もへったくれもない。

ふだんのオレたちは、そんな道路の重要性をあまり意識してないけど、災害が発生したときに「道路が寸断されて物流が……」というニュースがかけめぐったりすると、かなり心配になったりする。そんなわけで、いつの時代も、世の中の動きの根本を支えているのが道路。そんな道路など、都市の骨格となる公共施設を「都市施設」と言い、都市施設は、都市計画法などにより整備・建設されていく。

また、建築物の敷地と道路の関係にも、ちょこっと触れておく。建築基準法で「建築物の敷地は、道路に2メートル以上接しなければならない」という規定がある。つまり「道路に接していない袋地などには建築できませんよ」ということで、まぁこういったことからも、道路の重要性は増すばかりだ。

たとえば、戸建ての中古住宅を買うときにも注意が必要だ。

相場より安かったりするとなにかある。たとえば、その中古は道路から奥まったところに建っていて、敷地が道路に接していなかったり。もちろん建て替えなんてできない。そういう物件の販売広告には景品表示法により「再建築不可」と書かなきゃいけないというルールもあるんだけど、そもそも「再建築不可」なんていうモノがあるなんてことを知らない人も多いんじゃないかな。

まぁそんなわけで、こういうことをちゃんと確認しないで土地や建物を買うと大変なことになるのだよ。

普段何気なく使ってる道路も人がつくっていて、そのおかげで便利に生活できているんだよなあ。

 

そんなことを思いつつ、オレはかなりシアワセな気分だ。

エルボーと歩く道。オレはつぶやいた。

「この道を行けばどうなるものか」

すると、エルボーが続けた。

「危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし」

 

えー、知ってんの?

「うん。前の彼氏が、アントニオ猪木好きだったから」

 

あ、あぁ、あっそう…………。

 

動揺するオレ。焦っちゃダメ。

 

オレはちょっと呼吸を整えた。そして心のなかでつぶやいた。
「迷わず行けよ、行けばわかるさ」

「防火地域」、覚えてる?

さあ、東京散歩地図のルートをショートカットして人形町方面にいこう。エルボーは和のものが好きだから人形町でゆっくりする方がいいんじゃないか。

人形町って名前、気になってはいたが「明暦の大火後、浄瑠璃や人形芝居の小屋が建てられ、人形師が多く住んだことに由来する」らしい。なるほど、そうだったのか。

そうそう明暦の大火と、それにちなんだ宅建ワンポイントは「宅建デート丸の内編」で紹介している。都市計画法による「防火地域」「準防火地域」という制度、覚えているかな? オレの告白シーンも振り返ることができるぞ。

今回は告白にもぴったりなオシャレスポット丸の内。「東京散歩地図」やるなあ。もう、ほんと、オレのデートのために作ってくれたんじゃないかってくらい最高なルートの順だ。よし。今宵決戦のとき。今日はエルボーとの4回目のデートだ。なんだかんだ言ってもう4回目。エルボーもまんざらでも無い感じか。東京駅のトリビアだったり用途地域だったりなんか話しつつ最後はイルミネーションみながら告白だ!

人形町って言えばオレの中では甘酒横丁のイメージ。なんだかあの独特の雰囲気が落ち着く。

「甘酒好きなんだよね〜。お正月とかじゃなくても飲んじゃう。ここでは買ったことなくて一回来てみたかったの」

おっ。いいじゃないか。エルボーにヒットしたぞ。さあ、天気もいいしちょっと外でお花見しよう。まずはさんたつで見つけておいたうまそうな人形焼を買う。人形焼本舗『板倉屋』だ。

歴史を感じる店だ。いい雰囲気。
歴史を感じる店だ。いい雰囲気。
とっても親切な店員さん。エルボーが5個入りの人形焼を買ってくれた。
とっても親切な店員さん。エルボーが5個入りの人形焼を買ってくれた。

少し歩くと日本茶の店『おちゃらか』がある。

フランス人店主のステファンさんが丁寧に説明してくれる。日本茶への愛がハンパ無い。

エルボーは熱心に説明を聞いている。オレはエルボーへの愛がハンパ無い。

日本人よりも、いや、誰よりも日本茶に詳しいステファンさん。
日本人よりも、いや、誰よりも日本茶に詳しいステファンさん。
茶柱が立った。立った。立った。立っちゃった。
茶柱が立った。立った。立った。立っちゃった。

人形町が「人形町」でありつづけるために

人形町界隈は、ご覧のとおり歩いていてとても楽しい街並み。おそらくたぶん、ほどよい感じの商店街と、その商店街の裏のほうにある住宅街との調和がそうしているのかも。

まぁなんでもそうなんが、この「ほどよい調和」というのが大切だったりする。とくに人形町界隈は、そうした「ほどよい調和」というのが心地よく、できればこの状態をキープしていきたい。

そこでね。都市計画的には、そんな「ほどよい調和」を守っていこうという趣旨で、たとえば「地区計画」という制度がある。

そう、この界隈で建築行為を行う場合には、人形町での「地区計画」に適合する必要がある。もちろんこのへんは商業地域なので、どんな店舗でも、居住用マンションやちょっとした工場でも建築できるのだが、やはり人形町らしい情緒とにぎわいをキープしたいがゆえ、こんな制限がある。

① 店舗型性風俗特殊営業の用に供する建築物の建築は禁止
② 商店街沿いの1階は住宅としてはならない(商業用途のみ)

そんな地区計画があるからこそ、今日も人形町は「人形町」であり続けるのだ。

花見スポットへ。

春散歩をしているうちに、目的地の浜町公園に着いた。ここはオレのお気に入りスポット。今年も桜が綺麗に咲いている。

「桜、綺麗だね」

「なんか桜って幸せな気分にしてくれるよね」

オレは前に進む、そう決めた。きょうここまでエルボーといっしょに歩いてきた道。その道が、未来に続く道が、いまこうしてオレを支えてくれる。また告ってみよう。躊躇もある。でもね、危ぶむなかれ。

さわやかな春風が吹いている。春風色にエルボーが染まる。きれいだ。

「最近一緒に散歩してたら今まで1人で歩いてたときと街の見え方が変わってきたかも。やっぱり、散歩っていいね。おなじ道を歩けるし」

エルボーも幸せそうだ。

大黒様も気持ちが良さそう。
大黒様も気持ちが良さそう。

オレはエルボーに向き合った。危ぶむなかれ。

え、え、えるぼ……

「気分リフレッシュできて、いいアイディアがわいたわ。」

あ、えーと、え、え、え、えるぼ……

「カフェでやる次の企画思いついちゃった!!」エルボーはくるっと振り向いて「じゃあね!」

呆然とするオレに、桜吹雪が舞い散る。猪木さーん、ほんとに、この道、迷わず行けば、わかるんですかぁー!!!!

大澤茂雄
1964年生まれ。東京・新宿生まれ。生業は宅建講師。宅建ダイナマイト合格スクールを主宰。平成元年に某大手専門学校でデビューして以来、かれこれ30年以上もこんなことをやっている。持論は「不動産なんて街があっての話だ」。街を歩くのが受験勉強だと強弁し、街角の風景を取り入れたエンタメ系講義を得意とする。相棒は「さんたつ好き」の檜木萌。待ってましたとばかり、今回の企画の原案・モデル・ロケハン・撮影などをやっている。

取材・文・撮影=大澤茂雄