昭和が香るコンセプト温泉施設
埼玉県のほぼ中央に位置するときがわ町は、清流・都幾川(ときがわ)が織りなす豊かな自然とのどかな里山風景が魅力的な町だ。『昭和レトロな温泉銭湯 玉川温泉』は、そんな静かで、穏やかな時間が流れる山間に立つ。
広々とした駐車場は休日ともなれば車でいっぱいになり、人気の温泉施設であることをうかがわせる。
建物に向かって歩き始めると、真っ先に目に飛び込むのは、昭和時代には実際に使われていた看板や乗り物など。緑あふれる環境と相まって、ここだけ昭和時代で時が止まったかのようだ。この先、館内にはどんな出合いが待ち受けるているのだろう……。ワクワク感が止まらない。
つるすべ美肌の湯で、身も心もしっとり……
受付を済ませ、浴室へ向かう。館内も昭和時代の小物で飾られにぎやかだ。受付の近くにある売店や大広間も気になるところだが、まずは温泉に入りに行こう。
浴室は男女入れ替え制で、「昭(あきら)の湯」「和(なごみ)の湯」の2カ所。湯舟に注がれる温泉は、ph値10.1の強アルカリ性の源泉を加水なしで利用しており、肌の保湿効果が高いと評判だ。
浴室には「モンモリロナイト」の泥パックが用意され、パックをすれば温泉との相乗効果でより肌がしっとりになる最強アイテム。美活に励む女性にはうれしいサービスだ。
「和の湯」に入ってみよう。赤富士のタイル絵が出迎える内風呂、ウッドテラスで涼める露天風呂がついている。
洗い場の数も多く、ゆったり使えるのもうれしい。リンス入りのシャンプーやボディソープも備わるので、手ぶらで利用しても問題ない。
浴槽に注がれる温泉は、39~41度で、源泉を15分に一度投入しているという。その時はやや温めになるものの、長湯派にはいい感じだ。露天風呂なら休憩をとりつつ、ついつい長居してしまう。
一方の「昭の湯」は、大きな石組みの岩風呂が自慢で、雄大な里山を感じることができ、野趣満点。内風呂は大きなガラス窓から周囲の緑を見ることができ、自然との一体感を満喫できる。
浴室は、日曜を境に男女入れ替えとなるので、何度でも足を運び、趣の異なる温泉浴を楽しみたい。
銭湯風!?なリラクゼーション
湯上がりは、火照った体に冷たいのもを……ということで、お休み処「銭湯喫茶 玉川テラス」で過ごそう。2021年4月29日にオープンした設備で、閉業した近隣銭湯のタイル絵を譲り受け、再利用している。
名物・金魚鉢メロンフロート580円や給食おやつ500円、玉川プリン380円といった軽食メニューをラインナップ。ひんやりアイスクリームと、シュワシュワとしたメロンソーダの喉ごしで、汗が少しずつ引いていく感覚が心地よい。
「銭湯喫茶 玉川テラス」に隣接するのは「木の図書室」。リクライニングチェアを備え、雑誌や書籍を手に取って、自由に休憩できるスペースだ。
一画には無料で利用できるマッサージ機もあるので、少し横になってみよう。すべてが解きほぐされて、あまりの気持ち良さにウトウトしてしまう。
食事もおみやげも昭和なイッピン
館内には食事処や売店も備わっている。
食事処では、地元のお母さんたちが作る、地域の食材を活かした料理と家庭料理がメニューに並ぶ。
中でも“懐かしい昭和の味”をテーマにしたメニューが人気で、洋食プレート1380円や昭和のハンバーグ定食1080円、ハムカツ200円や鯨カツ480円など、食事も昭和レトロを徹底している。
売店では、地元の名産品をはじめ、銭湯ファンに喜ばれそうなケロリングッズなどの懐かしい商品を販売する。
全国各地から取り寄せた約70種類ものご当地サイダーは、湯上がりに味わうのもよし、おみやげにするのもよしだ。
1日を通して、昭和時代をたっぷり体感できる温泉施設は、美肌になれるだけでなく、懐かしさで心も安らぐ、不思議な癒やしの時間を提供してくれる。
取材・文=千葉香苗 写真=昭和レトロな温泉銭湯 玉川温泉