街に置かれたこびとたちはディズニーの影響をうけているのだろうか
しかし、街に置かれるこびとのほとんどは、ディズニー映画「白雪姫」に登場する「七人のこびと」であるように見える。となると、設置している人は童話の世界観を目指しているわけではなく、ディズニー好きであるという可能性もある。こうした街のこびと達を眺めて、設置者の意図を探っていきたい。
まず、ディズニーの他キャラクターとともに設置されていたり、7体設置されている場合は、「白雪姫」の影響が強いと見てよいだろう。
調布では、細長い花壇にこびとが7人横並びに設置されており、さらにはドナルドダックや「ふしぎの国のアリス」の3月うさぎなども散りばめられて、森の雰囲気というよりディズニーランドの雰囲気であった。
この複数のこびと達を見ているうち、気が付いたことがある。ディズニーの「七人のこびと」は、メガネをかけた「先生」や、ヒゲのない「おとぼけ」など、それぞれに顔立ちや体形の特徴が異なる。ところがこちらの置物は、帽子の色こそ違えど、どれも同じ顔をしているのである。しいて言えばディズニーのこびとのうち、いつも笑顔の「ごきげん」に似ている気もするが、ディズニーキャラと同一ではない。
となると、こびと設置者は特にディズニーを気にしていないのかも知れない。こうした「ディズニーの影響下にないと思われるこびと」についても見ていこう。
高田馬場の花壇にいた3人の小さなこびと達は「WELCOME」というメッセージを掲げ、「となりのトトロ」に登場する「小トトロ」や「まっくろくろすけ」とともに設置されていた。
また町屋にいたこびとは、犬やサル、うんちなどのキャラクターと一緒に、他人への思いやりを説いているのである。メッセージを伝えるこびとが、なぜ複数のキャラクターとともに設置されているのか、その関連性については不明だが、みんなの声を伝えているということなのだろうか。
労働に勤しむこびとたちもいる
メッセージを伝えるだけではなく、肉体労働に従事するこびと達もいる。たとえば植木鉢として重い草花を背負わされたり、ランタンを掲げて照明係となっていたりする。
思わず「よっ、ご苦労さん」と声をかけたくなるこびと達だ。
色を失ってしまったこびとたち
街のこびとの中には、年月が過ぎて色あせてしまったもの達もいる。こうした「色あせこびと」を見ていると、何だか魔法にかけられて、石にされてしまっているように見えてしまう。
「早く魔法が解けますように……」と願って通り過ぎる私の心には、童話の世界が広がっている。街のこびとは、我々を非日常にいざなってくれる存在なのかも知れない。
絵・写真・文=オギリマサホ