茅ケ崎駅からJR相模線で2駅の香川駅にある小さな工場。『合同会社フィールドワン』と記され、2台の工作機械を備えるこちらで手がけられるのが、「プラモブロック」。プラスチック製で骨組みみたいなランナーに、よく見ると小さなブロックがズラズラッと付いている。これをプラモデルのように自分で切り離して組み立てるというからユニークだ。
「他社のものは先端が円形だけど、うちは四角なのが特徴です」と代表の仲智三郎さんが言えば、「どの向きでもはまらないから、しばりがきついブロックと言われます(笑)。ただその分、面がそろってきれいに仕上がりますよ」と妻の知美さんもアピール。このご夫婦が二人三脚で作り続けている。

廃業からのスタート目標があったから続けられた

プラモブロックの誕生は約10年前。家族で営む町工場で自動車部品などの金型を製造していた智三郎さんは当時流行った極小ブロックに心引かれ、独自に開発。ところが、売り出し直前、リーマンショックを機に工場は廃業。忍びないと思った知美さんは大量のプラモブロックを藤沢の自宅で引き取り、手探りで会社を立ち上げ、見様見真似(みようみまね)でネットショップを開いた。「とにかく必死。主人は会社勤めになりましたが、いつか湘南地域で二人の作りたいものを作ろう! を目標に、在庫でやりくりしながら細々と売り続けました」(知美さん)。そして2020年、智三郎さんの定年を機に、念願の自社工場を構えることができたのだという。

ランナーにブロックパーツがつながったシート。1枚270円~で販売。

さて、そんなブロックの詳細はというと、サイズはなんと米粒より小さい 2.5×2.5㎜の正立方体を最小に、全11種類。指でつまんで組めるギリギリの小ささを追求した。カラーは原料であるペレットの既存の14色から始まり、特注のオリジナルカラーも増え、現在は25色と実にカラフル。それをパーツシート1枚から販売するので、好きな物を組み立てたりと自由な使い方ができる。「自作品を見せてくれるお客さんもいて、キットの商品化に至ったこともあります。プラモブロックを通じてさまざまな方と交流できることが楽しいです」(知美さん) 。

ラインナップは約70! お蔵入りも数知れず…?

組み立て図付きのキットのほうは、ネコやトラなどの動物に家や教会などの建物、自転車や福助、地球にメリーゴーラウンドと多彩なラインナップで約70種類! 商品化の経緯もさまざまで、立ち上げ当初からある江ノ電駅舎シリーズは、「たまたまお祝いに駅舎を作ってプレゼントしたら気に入られて商品に採用された」とか、「Twitterで江の島が話題になった時、 『江の島っぽい物を作った』と遊びで作った生しらすと釜揚げしらすの画像をあげたらバズってノリで商品に」というものも。だが、時にはお蔵入りもあるそうで、「ムンクの『叫び』を作ってみたんです。絵では見えない下半身も後ろ側も適当に想像して(笑)。でも美術品って版権が怖くて踏み出せないでいます」(知美さん) 。

では、これから実現したい目標は?

「変わったパーツを増やしたいですね。今までに実験で10個ほど作ったので商品化できたら」と智三郎さん。知美さんは、「工場を定期的に開放して、地域の人やお客さんに製造現場を見てもらいたい。あと、藤沢で育ったブロックなので今後も藤沢を拠点に、いずれはプラモブロックでお客さんと遊べるようなお店を開きたいです」。新たな夢に向かいプラモブロックの第二章は始まったばかり。

~プラモブロックができるまで~

(1)金型を作る

パソコンで金型の3Dモデルを設計し、そのデータをマシニングセンターという工作機械にインプット。直径0.6㎜のボールエンドミルなど、複数の刃物を機械内で自動的に交換しながら、厚い鉄板の表面を切削する(写真)。金型は2枚1組必要。

(2)ペレットを準備

プラモブロックの原料はABS樹脂(3種類の成分を組み合わせたプラスチック)のペレット。米粒ほどの小さな楕円柱形で、穴のないビーズのよう。専門メーカーから既存の色や特注した色を仕入れて使う。その下のデコボコした鉄板が金型だ。

(3)成型

金型を電動式射出成形機にセット(写真右側)。一方でペレットも機械に投入し、230~250℃に熱してドロドロに溶かす。液体になったプラスチックに圧力をかけ、2枚合わせた金型の中に一気に射出(インジェクション)。冷却されたら取り出す。

(4)組み立ててみる

キットの組み立て時間の目安は各商品で異なるが、鎌倉駅、江ノ島駅、極楽寺駅の江ノ電駅舎シリーズ各660円は約1時間(江ノ電グッズショップ限定品)。江の島シーキャンドル2160円は約3時間、アマビエちゃん500円は約1時間、メリーゴーラウンド1575円は約2時間。
住所:神奈川県高座郡寒川町大曲3-14-14 大曲遠藤工場1-104

取材・文=下里康子 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2021年8月号より