全国的にもめずらしい特殊神事

JR山手線に高輪ゲートウェイ駅が誕生し、街の開発が急ピッチで進む東京都港区三田界隈。ビル群が立ち並ぶ第一京浜沿いにひっそりとたたずむのが御田八幡神社だ。和銅2年(709)創建の、1300年以上の歴史を誇る古社で、三田、高輪、芝浦、港南の氏神様として崇敬されている。

そんな御田八幡神社で毎年1月15日と5月15日に開催される神事が「釜鳴り神事」だ。簡単に説明すると、湯を沸かした釜の鳴り響く音によって吉凶を占うというもの。その起源については定かではないが、岡山県岡山市の吉備津神社の「鳴釜神事」に由来するといわれる。「同様の神事が古代にはさまざまな神社仏閣で行われていたのではないかと考えられていますが、今では全国的にめずらしい神事です」と教えてくれたのは御田八幡神社の権禰宜(ごんねぎ)・宮地貞成さん。

釜の音は“大神様の思し召し”

当日は斎場に水が入った釜をスタンバイ。参列者が席に着き始めると、宮司がかまどの中に炭をくべる。釜の上に米などが入った蒸籠(せいろ)を設置すると神事がスタートする。神事の間は宮司や祭員が大祓詞(おおはらえ)を奏上し、しばらくすると釜からボワォーンという独特な音が響く。音が聞こえると奏上を止めて、釜に向かって次々と拝礼をする。その後、鳴動の音色や大小、長短、強弱などをもとに宮司が所感を述べる。釜鳴りの音は参列者に対しての大神様の思し召しという意味合いがある。

「まさに『ボワォーン』という牛の鳴き声のような独特の音を発します。大祓詞を読み上げてから釜が鳴り始めるまでの長さや音色などをもとに宮司が所感を述べますが、その時間が長いからいいというものでもないのです。皆さんがどう思われるか実際に聞いていただき、その方のお気持ち次第ではないかと思います」と宮地さん。釜が鳴り始めてから釜に対してお参りをするとき、大神様が近くにいらっしゃるような神秘的な気持ちになるという。

神事の後、お供え物と一緒に釜も神前に捧げられる。
神事の後、お供え物と一緒に釜も神前に捧げられる。

また神事が無事に終了すると、釜の中に残っているお湯を参列者全員でいただく。この湯を飲めば長寿の願いが叶えられるといわれている。大神様を近くに感じられるちょっと不思議な神事をぜひ体験してみよう。

開催概要

「釜鳴り神事」

開催日:2025年1月15日(水)
開催時間:11:00~12:00頃
会場:御田八幡神社(東京都港区三田3-7-16)
アクセス:京浜急行電鉄本線・地下鉄浅草線泉岳寺駅から徒歩5分

【問い合わせ先】
御田八幡神社☎03ー3451ー4687
公式HP:https://mitahachiman.net/

 

取材・文=香取麻衣子 ※画像は主催者提供