哀しき思ひで

都会っ子

100メートル走がストレートじゃないほど校庭が狭かった。狭すぎてトラック1周100メートルとかでした。50メートルとるのにも斜めにとらなくてはならなくて、裏門の外の路地の坂の下がスタート地点。いきなり上り坂から始まるという過酷なものになっていました。(港区出身)

東京は土地が狭いゆえ校庭も狭いのが普通。筆者の通った小学校も、50メートル走のゴールは玄関ホール内。50メートルちょうどでピタッと止まらないと下駄箱に激突するデンジャラス走でした。23区内で直線100メートル取れる学校なんて数えるほどではないだろうか。

都会っ子

遊び場となる公園が少ない。あっても小さい。仕方がないのでそれでも盛り上がる遊びを発明すると次々にその遊びが禁止になる。(港区出身)

子供達が駆け回って遊ぶような公園は確かに少ないし、あっても狭い。デフォルトのルールからして、ボール遊び禁止に始まり思いつく限りの子供の遊びが禁止されていて、なんのためにあるんだよ!と突っ込まずにはいられない公園だらけ。

また、中高生になると「放課後、お金をかけずに遊べる場所が少ない」という嘆きも。

筆者も高校の放課後、湯水のごとくお小遣いを溶かしていました。

都会っ子

高層階の部屋から富士山も東京タワーも一望の「ウォーターフロント」育ちだが、とどのつまり、運河沿いの団地なので、常に運河特有の匂いが漂っていた。特に大雨が降ると、下水が運河に流れ込むので悪臭がひどい。はじめて外房に行った時、潮の香りというものを知った。(江東区出身)

東京の下水道は、ほとんどが合流式ゆえ(大雨が降ると雨水と下水のミックス水が東京湾に流れるシステム)運河沿いは臭います。オリンピック会場テストをお台場海浜公園で行った際、外国人選手から「トイレの臭いがする」と評されてましたね。ほんとその通り!

恐ろしや東京

都会っ子

代官山に住んでいた頃、休日昼頃に起きてパジャマのままコンビニへ行くと、おしゃれを決め込んだ街行く人たち(非代官山住民)の視線が痛かった。(渋谷区出身)

当人にとっては地元でも、なんとなく街にドレスコードがあるのが、お洒落タウンの宿命というもの。

都会っ子

かつて暮らしていた実家は表参道沿いなので、クリスマスシーズンになるとイルミネーションが4階の自室を煌々と照らし、子供の頃はカーテンを閉めても眩しくて眠れなかった。(渋谷区出身)

ちなみに、彼のお母さんは、イルミネーション=人が集まる=ごみ散乱=毎朝掃除が苦痛と嘆いておりました。

都会っ子

都内一軒家でそこそこの広さがある実家の相続税が今から怖い。(文京区出身)

筆者の同級生の実家は、青山でエレベーター付きの豪邸だが、彼は大丈夫だろうか。他人事ながら心配してしまう。

都会っ子

都内が数センチの積雪で交通麻痺を起こすと、雪国出身者が、急に上から目線でバカにしてくるのが苦痛。(品川区出身)

交通麻痺が起きるとわかっていても、大して雪対策をしないのが東京という街。

ちなみに筆者の出た小学校は、雪が降ると1時間目の授業が全てキャンセルされて、校庭で雪遊びの時間になりました。それを言うと、また雪国出身者に白い目で見られる……苦痛!

地方は難しい

都会っ子

「◯◯城址なら一駅先だよ」と言われ、隣駅なら余裕で行けんじゃんと思ったら、ひと山超える羽目になった。駅間長すぎない……?(練馬区出身)

都内の私鉄は駅間が短いから、一駅くらいなら歩くことも多いけど、その感覚で地方に行くと痛い目にあいますね。地方に行って電車とバスの本数が恐ろしく少ないのも都会人はビビります。

都会っ子

地方のバスの乗り方もローカル線の乗り方もわかっていない。入社一年目の地方出張で、押しボタンで開けるタイプのローカル線や整理券式のバスにビビり倒す。もはや逆上京。(江戸川区出身)

雪国で電車に乗り、近くのおばちゃんに「ドアを閉めろ」と怒られた時は、言っている意味がわからなかった。電車のドアが手動だなんて! そんなの東京には無い!

都会っ子

地方局で流れる地域密着企業の明らかに低予算なCMクオリティーに愕然とする。(新宿区出身)

地方のテレビCMは、やたら「社長が登場して商品名を連呼する」というイメージが。そして枠が余っているのか、同じCMの繰り返しに洗脳される……。

都会っ子

地方へ旅行に行くと、テレビのチャンネル数の少なさに驚く。宮崎県に至っては、民放が2局しかないだなんて信じられない!(中央区出身)

番組によって放送時間や曜日も東京と違い、旅先で見たい番組が見られないなんてことも。夏目漱石の坊ちゃんも宮崎県についてこう言及していましたね。

「延岡と言えば山の中も山の中も大変な山の中だ」「名前を聞いてさえ、開けた所とは思えない。猿と人とが半々に住んでいるような気がする」と。

実は田舎に憧れも

都会っ子

都会で生まれ育つと、自然というものが縁遠いので、自然に囲まれて育った人が羨ましい。(品川区出身)

大人になった今は、海や山に行ったりキャンプをしたりするが、それは子供の頃に触れられなかった「自然」に対する憧憬の現れだと思っている。「裏山」で遊んでいたという話を聞くと羨ましいぞ!

都会っ子

年末年始やGWに「帰省するのでバイトのシフト入れません」が使えない。(中野区出身)

これは数多く寄せられた都会っ子あるある。繁忙期の東京を支えるのは都会っ子なのだ!

都会っ子

上京組の生活能力の高さに引け目を感じる。(江戸川区出身)

この感覚、ほとんどの都会っ子が持っているのではないでしょうか。上京組が持って来たであろう都会への羨望や不安を抱かずに生き続けているから、今ひとつバイタリティーが足りないのが都会っ子の特徴。

都会っ子の相聞歌

都会っ子

“港区女子との飲み会”に誘われ、意気揚々と参加したが、結局女性は全員地方出身者だった。(新宿区出身)

港区女子って、生まれも育ちも港区の女子という意味ではないですね。その理論でいくと、うちの母ちゃんも港区女子にカテゴライズされてしまいます。

都会っ子

標準語環境で育つと、博多弁とか京都弁の女性に滅法弱い。(目黒区出身)

シティーボーイは大体やられますね。筆者は上記に加えて神戸弁にもやられます。男を落とす時、確信的に方言を使うツワモノもいるから、シティーボーイは油断するな!

都会っ子

幼い頃から「帰省ラッシュ」の混雑映像を見続けてきた結果、地方出身者と結婚したら、自分も帰省ラッシュに巻き込まれながら相手の実家に行かなくてはならないのか。という恐怖が植え付けられているので、基本的に交際相手は関東近県出身者希望。(品川区出身)

方言女性に弱い一方、実家に15分で帰れる身としては、帰省ラッシュは避けて生きたい。盆暮れに激混み列車に乗るなんて、吉岡里帆に京都弁で求愛されて結婚するくらいのインセンティブが必要です。

ビバ!トーキョー!

都会っ子

新発売のものがすぐに買えたり、新作映画も即見られるのが当たり前。イベントやライブ、美術展なども行けて当たり前。東京にいるとそのありがたさに、なかなか気づけない。なんでもないようなことが幸せだったと思う。(江戸川区出身)

確かに、映画館はたくさんあるし、毎日そこら中でイベントもある。ライブツアーで名古屋飛ばしはあっても、東京で演らないツアーはないよな。今日は渋公、明日はON AIR EASTみたいな高校時代、あれ幸せだったんだな。

都会っ子

食事に関して幼少時代に割といい経験をしている。祖父母と同居していたせいか、神田「万惣」や浅草「アンヂェラス」、「銀座天國」など、今考えるとレジェンド級の店に連れて行ってもらえたのは良い記憶。(江戸川区出身)

地方にも名店はあれど、その数や種類は東京の方が圧倒的に多い。親が贔屓にしていた名店は自然と子にも受け継がれ、話題の新店よりも老舗の方がしっくりくるのが都会人。

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「東京育ちの人は恵まれていていいよね」と思い続けてきた上京組の皆さん。確かにいい面もあるけれど、それだけじゃないこと、おわかりいただけましたか。

都会っ子も、ブルージーな気持ちを抱きつつ、バイタリティー溢れる皆さんと、世間に揉まれているわけです。これからはもう少し優しくしてくださいね(あっ、最後の最後に、結局もやしっ子の発想に……)。

文・構成=小野広幸 イラスト=中村こより

澄ました顔で携帯をいじっているそこのあなた。失礼ですが、ご出身は?おや、なかなか田舎ですね。東京に出てきて何年目ですか? もう慣れたもんだって?まーた、気取っちゃって。あ、悪く思わないでください。あなたをバカにしたいわけではないんです。かくいう私も、人より牛の数の方が多いド田舎出身。故郷は違えど、仲間です。私が言いたいのは、すっかり都会人ぶってるあなたにも東京ビギナーだった時代があって、驚いたり恥をかいたりした思い出があるでしょ、ということ。誰にだってあるはずなんです。疑ったことなんてなかった「常識」が覆される瞬間が。十数年慣れ親しんできた「あたりまえ」が、温暖化に瀕した氷山の如く目の前で崩れ落ちたことが。今日は、そんな田舎者たちの思い出を集めてきました。故郷を想うもよし、東京を愛でるもよし。もし、あなたが生粋の都会っ子なら、鼻で笑いながら読んだって構いやしません。ただ、田舎者たちの哀しくも可笑しいブルースに、いっとき耳を傾けていただきたいのです。
地方出身のみなさん、このお正月は帰省できそうですか? こんな状況だから我慢する……という方、かなり多いんじゃないでしょうか。家族や親戚で集うことも、幼馴染や旧友たちと飲み明かすことも、愛しのローカルグルメにありつくこともできない年末年始。郷愁の思いは尽きませんが、ここはひとつ、上京した頃のことを思い出してみましょう。というわけで、「田舎者の上京ブルース」第2弾! 今回も、田舎者たちの滑稽で哀しいエピソードの数々をご紹介します!