能町みね子 著『デッドエンドで宝探し あんたは青森のいいとこばっかり見ている』(hayaoki books)
私もいつか、とっておきの宝を探す散歩がしたい
散歩の“達人”を称して30年の小誌(『散歩の達人』)は、これまで街歩きに関するさまざまな達人に出会ってきた。ある人は暗渠を、緑を、給水塔を、看板をひたすら観察する。ある人は目的のなさこそ至高だと言う。その視点は十人十色、散歩ってどこまでも自由で果てしない。私はなにを散歩しよう。
そしてくらった。デッドエンド?で宝探し? 本書は、本誌でもおなじみの“達人”能町みね子さんが、青森のデッドエンド——この先どこにも行けない「行き止まり」の街を冒険する。岩の中にある祠(ほこら)、海辺に並ぶたくさんの小屋、青森なのに「東京」と名の付くバス停など、青森県民ですら知らないのでは? と思うような場所がずらり。写真を見るだけでもひかれるのだが、読めば思いもよらぬ展開に笑ってしまう。そして行ってみたくなったところで、後日談を見て泣いた。
小誌連載「ほじくりストリートビュー」でも、能町さんはすさまじい洞察力で街を見ている。ストリートビューで気になるところに自ら足を運ぶこの探求心が、本書にもたくさんちりばめられて、興味が尽きない。
能町さんとともに歩く登場人物も面白い。2メートル氏に工藤5号氏、風呂道具師。その名前の由来はぜひとも本書をご覧いただきたいのだが、道なき道を進む一行を見ていると、小説を読んでいるかのような楽しさを覚える。ひとつひとつの宝探しは、とっておきの物語を秘めているのだ。
本書には、かつて小誌で特集した能町さんの記事も掲載される。連載と合わせて読んでほしい。(中島)
皆川典久 編著『東日本スリバチ地形まち歩き1 宮城・茨城・栃木・群馬・埼玉・東京 山の手編』(学芸出版社)
東京スリバチ学会による、地形歩きの東日本拡大版。湧水がつくりだしたとされるスリバチ状の窪地をひも解けば、古代の人間の営みが見えてきて、散歩がより深まる。個人的には氷川神社を中心とする大宮編が、なじみ深い街だけに新視点だった。静岡や名古屋も収録の第2巻も同時刊行されているので、気になる方から読んでみよう。(高橋)
伊野尾宏之 著『本屋の人生』(本の雑誌社)
2026年3月31日に閉店する中井の『伊野尾書店』。1957年に父が“とりあえず”開いた店で、2代目の著者は99年から働いている。住み込みの従業員と夜遅くまで店を開けていた高度経済成長期から書店が減っていく時代まで、「町の本屋さん」が見つめてきた時間が詰まった一冊に、自分もいかにその存在に支えられてきたかを思い返した。(渡邉)
今尾惠介 著『地図バカ直伝 地形図の楽しい読み方 改訂新版』(山と渓谷社)
地図研究家である著者が、地形図にミチミチに詰め込まれた工夫の産物である記号や文字情報などを“楽しく”紹介。地形図なんて社会科の授業以来ごぶさたしていたが、その実を知れば知るほど日々スマホで眺めているマップ以上にいろいろなものが見えてくる。「ヤシ科樹林」の地図記号があるなんて知らなかった。かわいい。(守利)
『散歩の達人』2026年3月号より









