大需要地・東京だからこその可能性
「この工場で1日最大2000株のレタスができます。今はフル稼働ではないので1100~1200株ですね」と、驚きの状況を教えてくれたのは、運営するLEAF FACTORY TOKYOの代表・大塚章弘さん。
工場といってもガラス張りの研究室のよう。赤、青、白のLEDが栽培ラックでわさわさと茂る葉を照らしている。生産品種は8品種。レタス系のフリルレタス、レッドファイヤー、ロメインレタスに、サラダホウレンソウ、バジル、ルッコラ、シソ、そして根菜のラディッシュまで!
しかしなぜ、この地で植物工場? 実は大塚さん、羽田で創業87年(2026年時点)の鉄工会社・大塚鉄工の3代目。トラックや建設機械の部品を製造しながらも、自動車産業の変革期に備え新規事業を模索した。
「絶対になくならない仕事は一次産業だと思ったんです。もともと農業に興味はあり、農業人口の減少も心配でした。その頃ちょうど仕事でIoTの技術にも取り組んでいた。それらが噛(か)み合って、若者が都市生活しながら就農する都市型農業のビジョンが浮かびました」
本社の一室から手探りで始まった試みは、このビルで本格的に量産化。完全人工光型植物工場というそうだが、メリットは?
「まず生育の速さ。日照時間が自由にコントロールできるので、露地栽培の1.5~2倍の早さで収穫できます」
ちなみに主力のフリルレタスなら種まきから約36日で出荷だそう。
また、水は植物が吸う分しか使わないので露地栽培の量よりはるかに少ない。虫がいない室内なので農薬は不使用。土も不要で生菌はほぼつかず、洗わずに食べられる。天候にも左右されず生産量も価格も安定。それゆえ、製造業のように完全受注生産がかなうのだ。
現在の卸先は、羽田空港施設のレストランや近隣にセントラルキッチンがあるチェーン店など、9割5分が飲食店。保冷車を持つのでとれたてを直接客へ配送できる
「東京都は日本で一番の需要地。そのど真ん中で野菜を作れば輸送コストや時間をかけずに新鮮なまま届けられる。地産地消ですよね」
町工場の街に灯(とも)ったものづくりの新しい光。これが東京の地産地消の追い風になる日も来るかもしれない。室内育ちの無機質な印象を覆す青々しい匂いと力強い歯触りのレタスのおいしさをかみしめながら、そう思った。
取材・文=下里康子 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2026年2月号より







