不動の人気メニュー、甘辛いタレが特徴の「バラタレ」
店内に入り、スタミナバラタレ定食1100円をさっそく注文。ザラメを使ったコクのある甘辛いタレを豚バラ肉と絡めた、ランチの中でも不動の人気メニューだ。
スタミナバラタレ定食はオーナー兼厨房を担っている尾崎知枝子(おざきちえこ)さんが、和歌山に行った際に食べた豚バラ料理に感銘を受け、そこからザラメや一味などを独自に配分し、生み出したメニュー。
生姜焼きとはまた違うコクのある甘辛さが口に広がり、ご飯だけでなく、添えられたキャベツやパスタとも相性が抜群だ。
タレだけでご飯が何杯でも食べられそうな味付けは、味が重たくなりすぎず絶妙な塩梅。タレを豚バラと絡めるというシンプルな料理をここまでおいしくできるのは、簡単なことではないだろう。試行錯誤の道のりを感じさせる一品である。
同じくランチメニューの1つである、牛スジの赤ワイン煮込み定食1100円も注文。5時間かけて丁寧に煮込まれた牛スジは、濃厚な赤ワインの風味が染み込み、ホロホロで噛むたびにジューシーな味わいが口の中に広がる。バゲットとの相性抜群もだ。
自分が好きな世界のおいしいものを
注目すべきなのは、料理だけではない。お店で提供している世界各国のお酒の豊富さに思わず目を見張る。
店長の岡野知尋(おかのちひろ)さんが、前職で世界を飛び回っていた際に「おいしい」と思ったものを集めたというドリンクメニュー。ドイツビールやベルギービールのほか、イタリア、スペイン、フランス、アルゼンチンなど、さまざまな国のワインを取り揃えている。
「特にイタリアが好きで、仕事の関係ではありますが6年くらい住んでいたこともあります。お店にはどうしても自分の好みがでますね」と岡野さんは話す。
また、お店を開くにあたり、20年以上食べ続けていた千葉県の『マイスター東金屋』のソーセージを提供したいと考えていた岡野さん。
最初は「保存料を使っていないから足がはやいし、小さなお店での提供はやめた方がいい」と何度も取引を断られたというが、工場まで出向き熱意を伝えに行ったという。
その思いと熱意のおかげで、見事、店での提供が可能に。本場フランクフルトの品評会で日本人初の金賞を受賞した『マイスター東金屋』のソーセージを、10種類以上のドイツ・ベルギービールをはじめとした世界のワインと一緒に頂くことができるのだ。
店長とオーナーのタッグ
元々、建設業界に勤めており、30歳の時に自身の建設事務所を立ち上げた岡野さん。当時、デベロッパーの方に「お店を作ってあげるからやってみない?」と誘いを受けたことがきっかけで、2008年からお店の経営にも乗り出したそうだ。
建設事務所から飲食店という異業種の経営についてお聞きすると、「飲食店の経験はなかったけど、ビジネスをやるという意味では、建築事務所も飲食店も一緒だと思っています。リスキーではあるけど、他店では1000円で売っていたヒューガルデンホワイトを、開店当初は500円で提供したこともありまして。まずは、おいしさを知ってもらうマーケティングの一環だと考えていました」と、経営者目線の貴重なお話も伺えた。
現在は岡野さん自身は店長としてお店の経営に携わり、「半年で辞めてもいいから、オーナーやってみない?」という岡野さんの誘いを受けオーナー兼シェフとなった尾崎さんの2人で運営。このタッグは、既に15年以上続いている。
店内における2人は、会話は多くなくとも、深い信頼関係でつながっている、そんな様子がうかがえた。
「場所の提供というのが飲食店の一つのテーマだと思っています。もし個性があるとしたら、僕がお客さんとベラベラ話してサロン化しているところですかね!」と岡野さん。
おいしい料理とお酒、そして世界を旅してきた岡野さんの話をつまみに、『SWING 水道橋店』で楽しいひとときを過ごしてみてはいかがだろうか。
取材・文・撮影=SUI