さあ下町のオアシスへ。オレも癒やされたい。

「あ、大きい鳥がいる!!」

「清澄庭園は色々な野鳥がいるみたいよ。」

「池もなんかいい雰囲気ね。」

静かで癒やされる空間だ。
静かで癒やされる空間だ。
こんな大きな石どうやって持ってきたんだ。
こんな大きな石どうやって持ってきたんだ。

清澄庭園は明治時代に完成した回遊式日本庭園で、都会とは思えないくらい自然がいっぱいだ。

ちなみに回遊式日本庭園とは、園内をぐるっと回遊して鑑賞できる庭園のことだ。

この清澄庭園、全国各地の名石が50個以上あり、それぞれに産地と石の種類の立て札が立っている。

「そういえば、今日は晴れているけど雨の日もいいって“散歩の達人”のおじさんが言ってた。」
「へ〜!!」
「雨に濡れた石たちも風情があって石好きにはたまらないみたいよ。」
「面白そうね。」

鯉や亀もいる。
鯉や亀もいる。
関東大震災や、東京大空襲で避難場所ともなった場所らしい。
関東大震災や、東京大空襲で避難場所ともなった場所らしい。

清澄庭園を出て散歩する。

癒やしの空間でゆったり過ごしていたらすっかり夕方になっていた。

 

「ねえ、なんかあれ、気にならない?」

エルボーもずいぶんこういうのが気になるようになってしまったな。

2戸以上の住宅が一体となった「連棟式建物」

戸建て住宅が立ち並んでいるように見えるが……。
戸建て住宅が立ち並んでいるように見えるが……。

「あ、壁がくっついているね」

エルボーが“発見”した建物は、いわゆる『タウンハウス』とか『テラスハウス』といわれているもので、日本語でいうと『連棟式建物』だ。

さて問題です。

この場合、どこまでをどういうふうに“独立した建物”として扱うのか。

つまり所有権などの権利の対象となるのは、どの“部分”か、ですね。

どこまでを独立した建物(所有権の対象)として扱うのか。
どこまでを独立した建物(所有権の対象)として扱うのか。

……はい、そのとおり。

ここで登場するのが「区分所有」という考え方ですね。

壁でくっついてはいるものの、それぞれを個別の建物(区分所有)として扱う。

 

「土地の権利はどうなっているのかしら」、とエルボー。

 

おー、うれしくなりますね。

そんな質問をされるとね。

 

もちろんそれは登記をみないとなんともいえないけど、ざっくりご説明させていただきますと(笑)。

敷地をみんなで共有しているパターンだと『タウンハウス』。
敷地の境界が明確になっていると『テラスハウス』。

法的な定義じゃないんだけど、そんなふうに言ってます。

 

「タウンハウスだと、いまの分譲マンションみたいな感じね」

さすがエルボー、おっしゃるとおり。

その敷地を共有するということは“持分”というのが出てくるわけで、持分は区分所有している建物の面積に応じて定められる。

その持分に応じて土地の固定資産税などを分担するわけだけど、このあたりの感覚は、たしかに分譲マンションとおなじだ。分譲マンションだと専有部分(区分所有権の対象となる建物)が上下に並ぶけど、『タウンハウス』は戸建てが連なっている感じ。

ひらべったい分譲マンションというノリです。

 

一方、『テラスハウス』はどうなっているかというと、建っている建物に応じて土地は分筆されている。
つまりそれぞれが持つ。

「ところでさ、自分の建物部分の再築ってどうするのかしら?」

エ、エ、エ、エルボー!!

そ、そ、そ、それは聞いてくれるな(汗)。

 

事実上、不可能。

タウンハウスにしろテラスハウスにしろ、自分の建物は隣の建物とくっついちゃっているんだもんね。

再築しようとして自分の建物部分(区分所有部分)を壊すと、あら、隣の壁も壊れちゃう。

いまの最新の建築技術をもってすれば、そんな“再築”もできなくはないんだろうけど、でもなー、なんかとってもたいへんな気がする。

 

なので、それぞれでの“再築”はあきらめて、いったんご破算がいいんじゃないだろうか。

つまり、関係者全員で合意して(←これもたいへんそうだけど)、どっかの誰かにまとめて売却して、解散。代金の分配。

その後、全体の所有者(単有)になったどっかの誰かが、解体&再開発。

再開発したどっかの誰かが居住用マンションを建てたということだったら、そこに戻りたい人が、あらためてそこを買う。

商業ビルになったら、人生いろいろ。

倉庫の街からオシャレな街へ

清澄白河と言えば『ブルーボトルコーヒー』だ。

オレも行ったことがないしせっかくだから行ってみよう。

 

平日の夕方のこの時間でもだいぶにぎわっている。

『ブルーボトルコーヒー』は2002年にアメリカで創立され、日本では清澄白河が初出店。

なんだか不思議な感じだが、オークランドという本社がある場所に似た環境だったというのが理由なようだ。

『ブルーボトルコーヒー清澄白河ロースタリー&カフェ』。
『ブルーボトルコーヒー清澄白河ロースタリー&カフェ』。

いい雰囲気のお店で天井が高い。広い倉庫をお店に作り直したんだろうね。

じつは清澄白河は倉庫が多い街。

それもそのはず、清澄白河は、江戸時代、水運つまり物流の拠点だったのだ。

でも最近は、街自体をリノベーション。

 

かようなことと次第で、いままではビジネス街だったり倉庫の街だったところを、つまり街自体をリノベーションしちゃって、ショッピングや食事も楽しめるにぎやかな街にしようとする試みは各地で行われていて、有名どころとしては丸の内界隈でしょう。

港区の芝浦なんかもそうでしたね。

そうでしたね、というか、“先駆者”でしたね。

あとは中央区の兜町あたりでも、そんな動きあり、です。

いうなれば気分転換、「特殊建築物への用途変更」

あ、いま話の流れで街自体をリノベーションといいましたが、具体的には街に立ち並ぶ建物の用途を変更するということになりまして、ここ清澄白河では、「倉庫」を「物品販売業を営む店舗」にするとか「飲食店」にするとか。

まぁいうなれば気分転換。用途変更して、いい感じ。

あ、そうそう。

これって、建築基準法でいうところの『特殊建築物への用途変更』というのになります。

特殊建築物とはなにかというと、人やモノが多く集まる建物です。

となると、建物内の衛生面とか避難経路とか、住宅などの一般建築物よりもその手の配慮が必要となります。

そのため『特殊建築物への用途変更』をするとなると、建築基準法上の建築確認が必要となります。

 

ちなみに、特殊建築物になるのは以下のような建物。

①劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場など
②病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設など
③学校、体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場など
④百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェ、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗など
⑤倉庫など
⑥自動車車庫、自動車修理工場、自動車車庫、自動車修理工場、映画スタジオ、テレビスタジオなど

『倉庫』自体も特殊建築物だけど、その倉庫を『飲食店』や『物品販売業を営む店舗』にするとしても、建築確認が必要なんだよね。

 

で、ついでだが。

「特殊建築物間での類似の用途変更」というパターンもあって、この場合は“類似”だから、わざわざの建築確認は不要となっています。

どんなパターンが類似の用途変更になるかというと、『ホテル』から『旅館』、『劇場』から『映画館』など。

illust_5.svg

さて。

エルボーと夕方の街を歩く。

この時期だけど、そんなに寒くない。

風もさわやかだ。

 

ねぇ、髪型、似合う?

 

エルボーは微笑む。

 

もちろんだとも。
ともともとも。

 

ほんとは「ちがう人みたい」と、松田聖子さんの歌詞みたいなことも思ったが、それは言わない。

とにかく、共感だ。

共感さえしていればいいらしい(←違うかも笑)

 

うれしい、というエルボーは、あらためて、という感じでオレを見た。

そして言った。

 

やっぱり気分転換って大事よね。
あなたも気分転換したら?

 

そうだとも。
ともともとも。

 

あれ……?
衝撃の用途変更かっ!!!!

取材・文・撮影=宅建ダイナマイト執筆人