衝撃の二段構え。未体験の濃厚スープ

『麺屋 つけ麺 太輔』店内。
『麺屋 つけ麺 太輔』店内。

『麺屋 つけ麺 太輔』の一階はカウンター席のみ。二階はテーブル席になっている。

『麺屋 つけ麺 太輔』2階席。
『麺屋 つけ麺 太輔』2階席。

今回の注文は特製つけ麺1320円。麺は小150g、並200g、中250g、以降100gごとに100円かかり、最大1050gまで選べる。

今回は150gにした。

特製つけ麺1320円。
特製つけ麺1320円。

角煮がゴロゴロと入り、中心にはライム。つやつやの味玉とメンマがのる。

スープ。
スープ。

スープは見るからに濃厚でとろみがありそうだ。スープの中にも角煮が沈んでいる。

麺は『浅草開化楼』のものだ。
麺は『浅草開化楼』のものだ。

まずは自慢の麺をそのままでいただいてみる。

小麦のみ、小麦100%の力強い香りが鼻を抜ける。コシが強く、噛みしめるほどに小麦の風味が口いっぱい広がっていく。スープと合わせた味を早く体験したいが、はやる気持ちを抑えて今度はスープをひと口。とんでもない濃さに衝撃を受ける。塩気や調味料の濃さではなく、出汁の風味が濃厚で味の密度がありえないほどに高い。

いよいよ麺をスープに浸して食してみると、さらなる衝撃を受ける。あれほど濃厚だったスープが、麺と合わさったとたん、先ほどのガツンと来るパワフルさが消え、まろやかな味わいになるのだ。スープ単体のときと、麺と合わせたときの味が別物のように変わる。ガチガチの密度だった味も、麺と共に食すことで一気に花開く。それでもその濃厚さは健在だ。そしてその濃厚さに負けない力強い風味の麺。スープと麺の相性が素晴らしい。

角煮も柔らかくボリューム満点。味もしっかりと染み込んでいる。量が多く、スープにも入っているので、麺を食べるときに毎回食べないと追いつかないほどだ。

そして、宮内さん曰く『麺屋 つけ麺 太輔』のつけ麺は「一杯の麺で一杯にあらず」とのこと。

テーブルに置かれたニンニク酢、辛味粉、魚粉、そして麺に添えられたライムで4度味を替えられる。自分好みの味を作ることも可能だ。

つけ麺のスープの濃厚さに驚いていると、「濃厚つけ麺1100円は普通のつけ麺よりさらに数倍濃厚」と宮内さん。ぜひ体験した方がいいとのことで、味玉濃厚つけ麺1250円をいただいた。

味玉濃厚つけ麺1250円。
味玉濃厚つけ麺1250円。

スープが確かに濃くなっている。スープのみで試してみると、通常のつけ麺でもありえないと思えた濃さを、本当にさらに超えてきた。スープ単体では味の判別ができないほどの濃さなので、麺と共に食してみる。すると、やっぱりあれほどの濃厚さだったスープが、麺とともに食べるだけで突然まろやかになってしまうのだ。

濃厚つけ麺の方はそれでもまだ力強さが残っている。しかし麺がそれにすら対抗できるほどのパワーを持っているので、ハーモニーは崩れない。

妥協を許さないことで出合った麺とスープ

『麺屋 つけ麺 太輔』のつけ麺は、スープも麺も、お互いにこれでないと成り立たないと思わせてくれる。普通のスープでは麺が勝ちすぎて味気なくなる。普通の麺ではスープの味が濃く、硬すぎて箸が進まないだろう。

『麺屋 つけ麺 太輔』の麺は製麺の老舗、『浅草開化楼』のものを使っている。『麺屋 つけ麺 太輔』専用の特注麺で、完成するまで『浅草開化楼』と50回から60回ほどの打ち合わせを重ねたという。

「『浅草開化楼』さんの麺はおいしくて衝撃を受けました。それでうちの麺はここに頼もうと思って、納得のいく麺を作るために何度も打ち合わせを重ねました。

試作品もたくさん作りましたね。全粒粉の分量を細かく調整したり、タピオカブームもあってタピオカを練り込んだこともありました。キャッサバ芋ですね。他にも柚子を練り込んだりとにかくいろいろ試しました」

最終的に小麦100%の麺にたどり着いたが、固さ、香り、太さ、長さを重視してここでも微調整を重ねることになる。

「香り、味を重視して、国産に限らず外国産も半分混ぜることで理想に近づきましたね。太さも型番があるんですが、いろいろ試しました。切り方は丸切で、長さも長いほうがいいと思ってるので長めですね」

スープの濃厚さは、尋常ではない量の出汁素材を煮込むことで作られている。

「濃厚を売りにしてるつけ麺屋の多くは、スープに小麦を使ってとろみを出したりしていますが、うちでは純粋に動物を煮込んだ出汁を使っています。豚、鶏、魚介ですね。ただ、その量は普通のつけ麺スープのほうですら通常ではありえないレベルで、平均的なラーメン屋の原価率が30%くらいだとしても、うちはそれよりもはるかに高いですね。その大量の素材を煮込んで、分離しない限界まで乳化させています」

と宮内さんは語る。

魚介は京都から仕入れている。処理がしっかりとされていて臭みがなく、煮干しも一匹一匹はらわたを取るという丁寧さということだ。

チャーシューは、以前に『麺屋武蔵』にいたこともあり、角煮を出している。肉は国産の三元豚をほぼメインで使用している。

麺、スープ、素材、具に至るまで一切の妥協を許さない『麺屋 つけ麺 太輔』だが、それは自分の提供したい味に対するゆるぎない信念によるものだ。

「実際原価率も高いですし、賃金や原価も上がってきていますから厳しいですね。ただ、この味は変えたくないですし、そうなると当然材料も手間も変えられません。それにラーメンには 『1000円の壁』がありますから。原価率が高いからといっておいそれと値上げすることもできないんですが、よい味で提供していればお客様がつくはずです。もっと皆様に食べていただいて、知ってもらいたいですね。実際一度食べていただければ分かりますから」

宮内さんは前向きに語る。

「目標はつけ麺を日本のソウルフードにすることです。場所柄外国人のお客様もよく来てくれるんですが、もっともっと世界に広まってほしいですね。今は海外の人に日本の料理は何かと聞いたら、スシ、テンプラ、ラーメンですけど、そこにつけ麺が加わるようになってほしいです」

『麺屋 つけ麺 太輔』でしか味わえない完成した麺とスープのハーモニー

『麺屋 つけ麺 太輔』外観。
『麺屋 つけ麺 太輔』外観。

妥協せず理想の味を追求した超濃厚なスープと、そのスープに合わせるために研鑽(けんさん)を重ね完成した究極の麺。

ここでしか味わえないこの二つの奇跡的なハーモニーをぜひ体験していただきたい。

その際はまず麺とスープをそれぞれ単独で味わうのがおすすめだ。

「今日のラーメンは絶対に失敗したくない」

そんなときは『麺屋 つけ麺 太輔』に足を運ぼう。

住所:東京都台東区雷門1丁目15-10/営業時間:11:00~翌2:30LO/定休日:無/アクセス:地下鉄銀座線・浅草線・東武鉄道伊勢崎線浅草駅から徒歩5分
つくばエクスプレス浅草駅から徒歩3分

取材・文・撮影=かつの こゆき