花々に囲まれたメルヘンな空間がお出迎え
再開発が進み、いっそう賑わいを見せる下北沢駅の周辺エリア。『狛犬珈琲』はそこから5分ほど歩き、少しゆったりとした空気が流れる商店街にある。店頭でお客を迎え入れるように立つ狛犬が目印だ。
店に一歩入ると、ドライフラワーや植物が散りばめられたメルヘンチックな世界へと誘われ、一気にワクワクがこみ上げてくる。ナチュラルな雰囲気のカフェが好みの人なら、間違いなく心奪われる空間だろう。
この店のオーナーでありシェフも務める宮田剛さんは、飲食業界に10年以上携わってきた。タイ料理や居酒屋など幅広いジャンルの飲食店で経験を積んできたが、カフェをオープンしたのは今回が初めてだ。
店をオープンしたきっかけを尋ねてみると「実はカフェをやるつもりは全くなくて。この店、最初は居酒屋だったんです」と意外な一言。
2020年に「狛犬サワー」という居酒屋としてオープンし、空いている時間を活用して『狛犬珈琲』を営業していたが、コロナの影響により現在はカフェのみの営業に切り替えたという。それにあたり店内も居酒屋からガラリと雰囲気を変え、森の中にいるような癒やしの空間を作りあげたことで、唯一無二の存在感を放つカフェとなった。
時勢に翻弄されながらも、現在では人気カフェの仲間入りを果たした『狛犬珈琲』。そのきっかけはSNSだった。
「これまでインスタはあまり使ったことがなかったんですが、カフェとしての魅力を伝えるために頑張っていたら、それをきっかけに注目していただけるようになりました」
カフェのメニューは味だけではなく、見た目の印象も大事にしているという宮田さん。そんな宮田さんが考え抜いて作りあげた華やかなメニューはSNSと好相性だったようで、女性客を中心にたちまち話題となった。
ちなみに、店名の“狛犬”というキャッチーなワードは「神社に祀られている狛犬は土地に根を張って神社を守っているイメージなので、この店も地元に愛される店になれば」とのことだ。
デザート感覚で楽しめるドリンク&食後にぴったりサイズのスイーツ
この店では本格派のカレーが人気だが、同様に女性から絶大な支持を得ているのが見た目から楽しめるドリンクやスイーツだ。グラフィックデザイナーとしての経験も持つ宮田さんがデザイナーの感性から作りあげたドリンクやスイーツは、どれも写真を撮る手が止まらない美しさ。
今回は、豊富なメニューの中からアイスカフェモカ680円と、なめらか かぼちゃプリン490円をオーダーしてみた。
店のロゴ入りグラスにたっぷりと注がれたアイスカフェモカは、ドリンクというより、もはやデザートの域。ボリュームたっぷりの生クリームはやさしい甘みがあり、奥深いコクのあるコーヒーと混ざってまろやかな味わいに。甘さと苦味のバランスがほど良くて、見た目以上にスイスイと飲めてしまうことに驚いた。ちょっとしたご褒美感覚で味わえる一杯だ。
コロンとかわいらしいフォルムのかぼちゃプリンは、隠れた人気メニュー。アイスカフェモカと同様、たっぷりの生クリームがうれしい。
味わってみると、かぼちゃプリンは意外にも甘さ控えめ。かぼちゃ本来の素朴な甘さが引き立っていて、ファンが多いことに納得した。たっぷりの生クリームと甘みのあるカラメル、なめらかなプリンが合われば至福の味わいに。小さめのサイズなので、食後にぴったりだ。
「プリンをはじめ、スイーツメニューはカレーを食べたあとでも美味しく食べられるサイズにしています。お腹いっぱいになりすぎずデザートまで楽しめると思いますよ」
見た目以上に、味わいも本格派なドリンクとスイーツ。一度食べればきっとお気に入りが見つかるはずだ。
休日には雰囲気抜群の2階席も開放
土日や連休期間には、こだわりが詰まった2階席も開放している。絵本の1ページに迷い込んだような空間は、ひととき日常を忘れさせてくれるだろう。
2階ではレンタルスペースとして、さまざまなイベントも開催している。宮田さんは「まだ未定ですが、いつか2階のスペースを使ってお酒のイベントも開催したいんです」と笑う。いつか「狛犬サワー」の復活もあるのか、楽しみにしていたい。
2023年6月からは、モーニングメニューもスタートした。今後、ますますパワーアップする『狛犬珈琲』に注目してみよう。
取材・文・撮影=稲垣恵美